「図1:生産システムの構成」に、経営資源と事業成果の関係を抽象化しました。経営資源の効果的な運用と他社をしのぐ、モノの作り方によって、初めて競争力のある事業成果が得られます。
事業成果のうち、特に「品質・原価・納期」に関して論じられる場面が多くありますが、「生産性・安全・志気※)」などについても注視していくことが重要です。経営資源についても同様に、「人的資源・物的資源・生産設備」のみならず、全体の経営資源についてバランスよく効率化を図っていくことが大切です。
※)物事をなそうとする意気込み。こころざし。
優れた成果を持続できる企業は、事業成果として出力される全ての要素(例えば、Quality、Cost、Deliveryなど)が高い水準を維持でき、その上に他をしのぐ競争力を築き上げることが可能な能力を備えた企業であるといわれています。言い換えれば、特定の事業成果の要素だけが優れていて、優位を維持している企業の存在はあり得ないということです。
そうであるとすれば、企業経営の入力となる経営資源(例えば、Man、Material、Machineなど)の全ての要素の効率を優位となる水準までに高めなければならないということがいえます。そのために、経営資源を効果的に活用した「優れたモノづくり」の革新に取り組むということですが、大きく変革を成し遂げようとする時には、決断力や踏みこたえる気力も重要になってきます。
モノづくりの革新方法は、一言でいえば、経営資源の効果的な活用に尽きます。そして、その主たる狙いは「原価低減」ということになります。従って、幾つかの改善案が提案された場合、どの案を採用すべきかの判断は「どの案が安く作れるか」という判断が全ての基準となります。また、原価低減の手段は、全ての経営資源の徹底的なムダ排除を行うことで、経営資源全体の効果的な活用が可能となります。
改善は「悪いところをあらためて良くする」ことです。改革は「旧来の組織、制度、習慣、方法などを変えて新しくする」ことです。従来の改善方法は、部分的な作業方法の変更など、極めて狭い範囲を改良していたために根幹的な部分は、そのまま踏襲されてしまうことから、新しい方法への変更には至らないという例が多くありました。
また、その効果も企業活動全体から評価すると「本当に原価低減に寄与しているか否か」明らかにされてはいませんでした。ところが、業務や作業からムダな部分を取り除いていくと、その遂行に連続性が失われ手順や手続きを再編しなければならず、自動的に変革を遂げていくことができるのです。経営資源のムダの徹底排除は、経営革新に効果的であるとするゆえんはここにあります。
改善は目にとまった不具合箇所を良くしていく帰納的アプローチですが、改革は、ありたい姿を設定し、その実現を阻害する要因を排除していく演繹的アプローチを主体にして進めていきます。ありたい姿を示すことは、その到達点を明らかにしていることから組織活動になじみやすく、小集団活動などに代表される全員参加の革新活動としていくことが可能となります。
全員参加の革新活動は、関係者の高いモチベーションを引き出していく効果も生まれます。例えば、終わりのない(活動の目標値や終了期限が設定されていない)経費節減は、徐々に暗い雰囲気となり、ヤル気も失せてきます。革新は厳しいけれども明るい未来のために、皆が前途に希望を持って積極的に楽しく取り組んでいく活動にしなければなりません。そして、ありたい姿を胆力で成し遂げる気迫と熱意も必要です。
また、革新の成功に向けて、皆で共に頑張るのだという全員の同意も必要です。このような取り組みは極めて実践的な人材育成の機会でもあり、皆でチエを絞り共に考え成長しながら、自主的に改善活動が繰り返される企業文化を定着化させていくこともまた重要な目的です。
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