マイクロソフトの組み込み機器向けOS「Windows Embedded 8 ファミリ」の1つ、「Windows Embedded 8 Standard」にフォーカスし、“強化された機能”を解説する。
本連載では、マイクロソフトの組み込み機器向けOS「Windows Embedded 8 ファミリ」について、OSの概要から開発ツールの利用方法までを幅広く解説していきます。
Windows Embedded 8 ファミリは、2012年に、パシフィコ横浜で開催された「組込み総合技術展 Embedded Technology 2012」で発表され(関連記事1)、2013年3月に正式版がリリースされました(関連記事2)。
Windows Embedded 8 ファミリは、以下のラインアップで構成されています。
「Windows Embedded 8 Pro」は、Windows 7 for Embedded Systemsの後継で、Windows 8の“フル機能”を提供する組み込み機器向けのOSです。「Windows Embedded 8 Standard」は、Windows Embedded Standard 7の後継OSに当たります。これから解説する開発ツールを用いることで、用途に応じて任意にカスタマイズできるWindows 8ベースの組み込み機器向けOSです。「Windows Embedded 8 Industry」は、Windows Embedded POSReady 7の後継OSです。これまではPOSなどの小売業向けの端末をターゲットとしていましたが、製品名に“Industry”とある通り、小売業だけではなく、製造業などへの展開も視野に入れたOSになっています。
本連載では、2番目に紹介したWindows Embedded 8 Standardにフォーカスして解説を進めていきます。早速、Windows Embedded 8 Standardで強化された機能を見ていきましょう。
Windows Embedded 8 Standardでは、GUI(Graphical User Interface)デザインをブランドイメージや製品イメージに合わせてカスタマイズできる機能が強化されています。“Windowsライク”なGUIを抑え、表現したいイメージに合わせて画面上のデザインを差し替えることが可能です。
例えば、Windows Logon Screenなどの画面をカスタマイズできます。また、変わったところでは、一般的に“ブルースクリーン”といわれるCrash Screenも差し替えることが可能です。
特に、コンシューマ向け機器では、デザインも重要な製品要素の1つとなります。この「デバイスブランディング」を利用することで、製品のイメージを統一することができます。
従来バージョンのWindows Embedded Standardのファイルシステム保護機能は、Enhanced Write Filter(EWF)とFile-Based Write Filter(FBWF)の2種類が用意されていました。
関連リンク: | |
---|---|
⇒ | ゼロから始めるEnhanced Write FilterとHORM |
今回、Windows Embedded 8 Standardで新しく追加された「Unified Write Filter(UWF)」は、Enhanced Write FilterとFile-Based Write Filterの双方の利点を組み合わせて、ファイルシステム保護を行う機能です。Unified Write Filterでは、セクターベースの保護とファイルベースの保護を行うことが可能です。また、レジストリの保護は、Windows Embedded Standard 7まではRegistry Filterを用いていましたが、Unified Write Filterにもレジストリ保護機能が統合されました。
ただし、互換性維持のため、Enhanced Write Filter、File-Based Write Filter、Registry Filterは廃止されておらず、Windows Embedded 8 Standardでも利用可能です(表1)。
ファイルシステム保護機能 | セクターベース保護 | ファイルベース保護 | レジストリの保護 |
---|---|---|---|
Unified Write Filter | ○ | ○ | ○ |
Enhanced Write Filter | ○ | − | − |
File-Based Write Filter | − | ○ | − |
Registry Filter | − | − | ○ |
表1 ファイルシステム保護機能 |
Unified Write Filterには、「Unified Write Filter Servicing Mode」という機能が用意されています。Unified Write Filter Servicing Modeに移行させて、Windows UpdateやWindows Server Update Services(WSUS)からOSのアップデートプログラムを適用することが可能です。
Unified Write Filterは、「UWFMgr」というコマンドラインツールを利用して、Unified Write Filterの設定を変更できます。その他、後述の「Embedded Lockdown Manager」で、GUIから設定が可能になっています。Unified Write Filterを利用することで、保守面において管理者の負担を軽減でき、柔軟なファイルシステム保護が可能になります。
Windows Embeddedには組み込み機器向けの機能として、以下のロックダウン機能が提供されています。
Embedded Lockdown Managerは、GUIからこれらのロックダウン機能の設定を行うためのコンソールを提供しています。Embedded Lockdown Managerは、Microsoft Management Console(MMC)アプリケーションのスナップインとして組み込まれています。実行しているOSに組み込まれているロックダウン機能を検出し、同機能の設定UIのみを表示します。
このEmbedded Lockdown Managerコンソールは、Windows Embedded 8 Standard上で表示できます。また、Windows DesktopやWindows Server経由による遠隔地からの設定にも対応しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.