薄型テレビ事業の下請けでは生き残れないと判断した岡田氏は「もうタイムリミットはない」と社内で宣言し、新商品の開発に乗り出すことを決めた。ところが、ブラウン管は息の長い製品であった上、形状が変化するとそれに合わせて検査機器も変わって注文が増えるという「美味しいビジネス」であったため、社内は変化を恐れる社員が大半だった。「下請け根性が染みつき、発想の幅が狭く、主体的に仕事をする人材が少なかった」と岡田氏は言う。
「理念なき会社では人もお客さまも集まらない。まして新規事業なんて立ち上がるはずもない」と考え、まず岡田氏は新たな経営理念の策定から取り掛かった。2001年4月に経営理念が完成した。
「われわれは、問題の発見から解決までをお手伝いする。その商品サービスの提供によりお客さまは大満足し、われわれはもっといいものを提供しようと努力する。われわれは、かかわる全ての人々(顧客・取引先・社員・株主・社会)を幸せにする“幸せスパイラル”提供企業である」
同時並行で新商品開発のプロジェクトも進め、わずか半年後の2001年9月に新商品である包装機械の開発に成功した。下請け商品ではなく初の自社ブランドである。
開発に当たり、岡田氏はこれまでの経験を活用して、環境や健康をキーワードに自社開発できそうな分野を探った。そこで容器に巻いたフィルムを熱で縮ませて包むシュリンク包装機械があることを知った。さらに調べていくと、医薬、食品、化粧品と用途が広いことも分かった。この機械であれば、国内生産で対応でき、自社にある電気や熱処理の技術、生産設備も転用できると踏んだ。しかも大手が進出しておらず、やり方次第では競争に勝てるとも判断した。
そこでリスクも取った。
従来の機械は蒸気式でフィルムを縮ませていたが、この方法だと機械が大型化する上、水分に弱い製品には対応できないことが分かった。熱風式もあったが、仕上がりに難があることで敬遠されていた。岡田氏は、安価で小型化できるこの熱風式を改良すればチャンスはあると考えた。
すぐに岡田氏は技術陣に「2001年9月までに今の熱風式を改良するように」指示した。4方向から熱風を送り込んで竜巻状態を起こすことで瞬時に収縮し、しわができない技術が完成した。この技術を「トルネード方式」と名付けて特許も取得。それを自社ブランドとして商品化したのが、現在の日本テクノロジーソリューションの主力製品である。
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