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» 2011年03月16日 17時36分 公開

世界市場での製品競争力向上を目指す「Obbligato III」ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(8)(3/3 ページ)

[吉村哲樹,@IT MONOist]
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環境法規制への対応機能もPLMシステムに取り込む

 グローバル対応においてもう1つ重要なポイントになるのが、海外の法規制への対応、特に環境保護関連の規制への対応だ。近年EUを中心に、製品や部品、材料に含まれる化学物質を厳しく管理しようという動きが広がっている。すでにREACH規制やRoHS指令などのルールは各国・地域に波及しており、事実上の国際標準になっている。日本メーカーも自社製品を海外に輸出する際にはこれらの環境規制への対応が不可欠となりつつある。

 これを支援するためのITソリューションも、数多くのベンダから提供されている。その多くは、部品や材料に含まれる化学物質に関する情報を社内外から収集し、データベースで一元管理するというものだ。しかし、こうしたソリューションをうまく活用できている例はまだ少ないと松原氏は指摘する。

 「ほとんどの企業では、製品開発情報を管理するPLMやPDMのシステムと、環境情報の管理システムとが分離してしまっている。そのため、せっかく収集・集計した環境情報が製品開発にうまく反映されずに問題が先送りされていき、製品リリース直前になって初めて規制に引っ掛かることが判明するようなことが実際に起きている」(松原氏)

 Obbligato IIIではその点、PLMデータベースで含有化学物質情報を管理できるようになっている。そのため、設計者や生産技術部門が普段利用するPLMシステム上で、それぞれの業務に必要な含有化学物質情報をタイムリーに参照できる。しかも、先ほどの企画・設計情報と同じく、エンジニアリングチェーンの上流からこれらの情報を参照できる点が大きな強みだという。

 「生産段階になって初めて含有化学物質を管理しようというのでは、遅過ぎる。企画・設計段階から含有科学物質に配慮した『環境配慮設計』を行うことによって、手戻りのない効率的な環境規制対応が可能になる」(松原氏)

 また、化学物質の管理は製品単位だけでなく、工場の単位でも行う必要がある。例えば「PRTR法」という規制では、工場でどれだけの量の規制対象物質を購入し、在庫として保管しているか、あるいはどれだけの量を大気や水域中に排出したかといった情報の集計・公表をメーカーに義務付けている。Obbligato IIIではこうした情報も、製品軸の環境情報と統合して管理できるようになっている。

 「われわれはこれを『統合化学物質管理』と呼んでいるが、他社でこうしたソリューションを提供しているところは極めて少ない。こうした機能は、NEC自身が自社内で化学物質管理に長く取り組んできたノウハウを製品仕様に反映した結果だ」(松原氏)

PLMシステムの全社統合がもたらすIT投資の最適化

 グローバル化とともに製造企業が取り組むべきもう1つの大きな課題に、IT投資の全社レベルでの最適化がある。今日、大手製造企業の多くは、事業部ごとに独自の業務プロセスを運用しているが、事業の統廃合や業務の海外移転などを想定した場合、こうしたやり方には極めて無駄が多い。

 こうした無駄を省くために、経理業務や販売業務の全社統合に取り組む企業も少なくない。しかしその一方で、設計、生産、保守といった製品開発業務の統合は、間接業務や販売業務ほど簡単にはいかない。そこでObbligato IIIでは、こうした業務をスムーズに統合できるためのシステム統合ソリューションを提供している。

 具体的には、まずデータベースとPLMシステムをObbligato IIIで全社的に統一する。そしてその上に、業務アプリケーションの機能を載せる。その際も、全社で共通のシステム機能、例えば採番管理や設計変更管理などは、全社統一のシステムとして構築する。そのうえで、事業セクタごとに固有の機能のみを個別に構築する。

 こうしたアーキテクチャで全社的に統一したPLMシステムを構築することにより、システム運用管理に要するコストを大幅に削減できるとともに、業務プロセスを全社で統一できるため、先述したような業務の統廃合や海外移転といった業務シフトにもフレキシブルに対応できるようになる。

 Obbligato IIIがこうした柔軟なアーキテクチャをとれる理由の1つとして、SOAに対応している点が挙げられる。同製品は「Webサービス」という、SOAに基づくシステム間連携インターフェイスを備えている。同製品のすべての機能がWebサービス経由で外部から利用できるほか、ユーザーがカスタマイズ開発した機能も自動的にWebサービスで外部システムから利用可能になる。こうしたSOAに基づくアーキテクチャのおかげで柔軟なシステム間連携が可能になり、先ほど挙げたような全社的なシステム統合、最近はやりの言葉でいえば「プライベート・クラウド」のようなシステムが実現できる。

複数形態のクラウドサービスでPLMソリューションを提供

 さらにObbligato IIIでは、クラウドによるPLMソリューションの提供も開始する。NECのクラウドサービス「RIACUBE」の基盤上にObbligato IIIのシステムを構築し、インターネット経由で社内の各事業部、あるいは各グループ子会社から利用するというソリューションだ。これには、初期導入コストを抑えてPLMシステムを統合できるというメリットがあるほか、システム負荷が高いときに一時的にCPUやメモリなどのリソースを増強できるなど、クラウドコンピューティング環境特有の柔軟かつ効率的なシステム運用が可能になるという。

 また、クラウド環境上でのPLMシステムの統合は、グローバル対応の面でもメリットが大きいと松原氏は語る。

 「海外拠点から利用されるシステムを運用するには、24時間常にシステムに目を光らせていないといけない。これを自社の要員だけで行うのは大変だが、クラウドならサービス事業者に運用をすべて任せられるので、運用負荷を大幅に低減できる」

 また、クラウド上に構築されるObbligato IIIのシステムはユーザー専用のものになるため、オンプレミスで導入する場合と同等のカスタマイズ開発を施すことができる。NECではこうしたサービス提供形態を「個別対応型クラウド」と呼んでいるが、その一方で1つのObbligato IIIのインスタンスを複数の企業で共用するマルチテナント型SaaSによるサービス提供も予定しているという。それが、「SaaS型クラウド」だ。

 SaaS型クラウドの提供開始は、現時点では2012年3月ごろを予定しているという。個別対応型クラウドのようにきめ細かいカスタマイズ開発を行うことはできないが、その代わり極めて安価にサービスを利用でき、中堅・中小企業でも十分手が届くようになるという。また、同製品にあらかじめ用意されているパラメータの設定範囲内であれば、機能のカスタマイズも可能だ。

 個別対応型とSaaS型、2つの異なる形態のクラウドサービスを提供する意図について、松原氏は次のように説明する。

 「設計開発業務は、各社・各人のノウハウが色濃く反映される領域で、かつ生産や調達などの周辺業務との連携が必要。また、技術情報は重要な知的財産なので、社外へ持ち出すことに懸念を示す企業も多い。従って、すべての業務をSaaS型の共通サービスで賄うのは無理だと考えている。そこで、ユーザー企業の業務領域を細分化したうえで、『この業務はオンプレミスや個別対応型クラウドで』『こちらの業務はSaaS型クラウドで』という使い分けを可能にすることを考えている」(松原氏)

 つまり、自社のビジネスの強みとなる部分、すなわち競合他社との差異化を図る「コア業務」の領域に関しては、オンプレミスや個別対応型クラウドで独自にシステムの機能を作り込む。一方で、例えば化学物質情報の収集など、あらゆる企業に共通の「ノンコア業務」に関しては、低コストのSaaS型クラウドでカバーする。それぞれの企業の規模や事業戦略により、この両者を見極めて使い分けるというわけだ。このように複数の利用形態を提供することで、最終的にはユーザー企業の競争力の強化に大きく貢献できるはずだと松原氏は述べる。

 「ノンコア業務をSaaS化することで浮いたリソースをコア業務に回せば、最終的にはユーザー企業の競争力強化につながる。われわれがObbligato IIIのクラウドサービスを通じて提供したいのは、まさにこうしたことを実現するためのソリューションだ」(松原氏)

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