先日(米国時間:2011年3月1日)製品版の提供開始が発表された「Windows Embedded Compact 7」。それを受け、日本マイクロソフトはCompact 7に関するセミナーを都内で開催した
2011年3月1日(米国時間)、正式版の提供が当初アナウンスよりも遅れていたマイクロソフトの組み込みOS「Windows Embedded Compact 7」の提供開始がついに発表された。
すでに、同社「Windows Embedded ダウンロード センター」からRTM(Release To Manufacturing)した評価版(180日間制限)がダウンロード可能だ。
この正式発表を受け、日本マイクロソフトはWindows Embedded Compact 7に関するセミナーを都内(品川)で開催し、Windows Embedded Compact 7の概要(基調講演)やパートナー企業によるテクニカルセッション、展示デモを披露した。
本稿では、「エマージングマーケット向けの製品開発を支援する Windows Embedded Compact 7」と題し、登壇した日本マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンベデッド本部 シニアマーケティング マネージャー 松岡 正人氏による講演の内容をお伝えする。
Windows Embedded Compact 7の前身であるWindows Embedded CE(以下、CE)は、どちらかというと小型・バッテリ駆動型の製品を中心に採用されてきた組み込みOSだが、PC/サーバ向けのWindows OSなどとは異なり、リアルタイム性を保持しているため、少ないフットプリントで精密な制御を行うような産業機器/医療機器などでも活用されている。一般的には、Pocket PCのようなPDAのOSというイメージが強いかもしれないが、マイクロソフトはCEを発展させていく過程で、特にインダストリー分野におけるユーザー要求を取り込んできたことで、「オートメーションのようなリアルタイム制御が求められるシステムで長年利用されている」(松岡氏)という。
また、松岡氏は「単体の製品でビジネスが完結するということはなくなった」とし、組み込み機器とほかのシステム/インフラ/サービスとの連携・情報のやりとりの重要性や、ユーザーインターフェイスの重要性に触れ、「OSのカーネル部分だけでなく、さまざまな周辺技術(アプリケーション/ミドルウェア/ツールなど)を統合して提供できるのがマイクロソフトの強みであり、それが大きな差別化要素だ」と語った。
こうしたCEの発展をさらに革新するバージョン、「マイルストーンになる製品」(松岡氏)として位置付けられているのがWindows Embedded Compact 7だ。
Windows Embedded Compact 7の主な新機能/機能強化のポイントとして、第一に挙げられるのが、ARM、x86、MIPSでのSMP(Symmetric Multiprocessing:対称型マルチプロセッシング)のサポートだ。250コアまでの論理カーネルをサポート(物理的には8コアまで)し、スレッドのロック回避の仕組みや、専用のAPIが追加され、タイマー、スレッド、CPUなど、マルチプロセッサ環境下で必要となるファンクションが提供されている。
また、DLNAのサポート、Adobe Flash 10.1をサポートしたInternet Explorer for Embedded(IE7ベースで、いくつかIE8向けのパフォーマンスアップデートを追加)、マルチタッチのサポート(CE 6.0 R3ではシングルタッチだった)、Silverlight for Windows Embeddedの強化など多くの新機能の追加/機能強化がなされたほか、開発ツールの改善なども図られている。
Windows Embedded Compact 7のSKU(Stock Keeping Unit)は、OSの基本機能のみに特化した「C7E」、PND向けの各種機能が含まれる「C7NR」、コンシューマ機器向けの「C7G」、フル機能の「C7P」の4つに区分されている。また、これまでのCEでは日本語版のパッケージが用意されてきたが、Windows Embedded Compact 7では英語版パッケージのみの提供となる。「日本語パッケージの開発に掛かっていたリソースを、製品に添付される、あるいはMSDNで提供される開発者向けのドキュメントの日本語化に振り分けることにした」(松岡氏)という。
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