では、実際に世界大会で戦った学生たちは世界との差をどのように感じたのか?
ベスト6の目標には届かなかったものの、1回戦を見事に突破しベスト10入りを果たした国立東京工業高等専門学校のCLFSのメンバーは今大会をどう振り返るのか?
チーム内唯一、2度目の世界大会出場経験を持つリーダーの有賀 雄基氏は、「ほかの国は、作品として1つにまとまっているなという印象を受けた。われわれのソリューションは、センサをeBoxにつないで終わりになっているので、製品のような見た目も大切だと感じた」と話す。
同様にメンターとしてCLFSを2度の世界大会出場に導いた国立東京工業高等専門学校 情報工学科 教授 松林 勝志氏も「試作品というイメージが強かったかもしれない。筐体やUI(User Interface)の見せ方という意味でもっと完成度を上げるべきだったかもしれない」と振り返る。試作品として見られてしまう点については筆者も同感で、せめてアタッシュケースなどを筐体として代用し、1つの箱にまとめて展示するくらいの工夫は必要だったように思う。
さらに、ハードウェア開発を担当した久野 翔平氏は、「自分たちのチームの作品よりも、ファイナルに進出したチームの作品の方が完成度が高い。もう少し開発期間が長かったらと思う」と話していた。今年に入ってからImagine Cupで組み込み開発部門の開催が正式に決まったこともあり、開発期間がかなり限られていたという。そんな厳しい条件の中、前回大会で未対応だった血圧計/カメラモジュールの実装を完了させた久野氏だけに、もう少し時間があれば既存機能のブラッシュアップや新たな機能の実装に時間を割けたのにという悔しさもあったのかもしれない。
また、各国の妊産婦・幼児健康管理の調査や英語のプレゼンテーションなどでチームへ大きく貢献したLydia LING YIENG CHEN氏は、「プレゼンテーションの全体のまとめ方など、まだ足りない部分が多いと実感した」と他国のプレゼンテーションと比較して感じたという。
時間の許す限り開発を行い、プレゼンテーションの練習を積み、世界大会本番へ向けいわば完成形で臨んだCLFS。実際、その成果も実り、前回大会より1つ前に進むことができたわけだが、第2ラウンドで敗退した彼ら自身は“完成度の差”を敗因と考えている。
アイデア・想像力、調査・分析、開発・実装、そして英語でのプレゼンテーションとすべての完成度が求められるImagine Cup。限られた時間の中で好成績を収めるのは困難を極めるが、高い目標だからこそ挑戦する価値があるといえる。簡単に超えられては、学生たちの成長もわれわれの想像の範囲だったに違いない。
今大会であらためてImagine Cupで勝つことの難しさを痛感した若き日本代表。しかし、その一方で世界大会に向け必死に努力し、果敢に挑戦した学生たちの成長は筆者や同行した関係者たちの想像・期待をはるかに超えたものだった。
――そして、次回決戦の地はアメリカ(ニューヨーク)! 閉会式が行われたオペラハウスの巨大スクリーンには、現アメリカ大統領夫人のMichelle Obama氏からのビデオメッセージが映し出され、大きな拍手がわき起こった。
すでに、Imagine Cup公式サイトで次回大会の告知がはじまっている。国立東京工業高等専門学校や筑波大学附属駒場高等学校に続く新たな挑戦者の出現とその活躍を心から期待したい。そして、松林氏の言葉(参考記事:「“本気”で勝つ! Imagine Cupベスト6へ向けた決意」)にもあったが、ぜひ「日本にも技術力のある学生がきちんと育っていること」をIT先進国アメリカの地で、そして願わくば表彰台の上で世界中に知らしめてもらいたい。
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