方法改善の手順:目標の設定と詳細分析実践! IE:方法改善の技術(2)(2/3 ページ)

» 2009年12月04日 00時00分 公開

2. 目標の設定

 「目的」は、調査・分析などを行った後に、その結果から決定するのではなく、「目的」は、あらかじめ決定しているからこそ、その状況を調査・分析するための最適な手法を選択することができるわけです。

  従って、方法改善を行おうとする場合、まず目的を明確にし、目的に対する目標(値)を設定しなければなりません。また、改善の目標は改善着手前に、過去の 生産実績から明らかになっている問題や新たなニーズに基づき、概略の現場診断や分析によって、できれば経営方針に沿って決めるべきだと思います。さらに、当然なことではありますが、それを書類にして上司や関連職場の関係者の事前承認を得ておくことも大切なことです。

 一般的な問題発見の進め方としては、品質(Q:quality)、原価(C:Cost)、納期(D:Delivery)、生産性(P:Productivity)、安全 (S:Safety)、士気(M:Moral)について、各管理指標を設定して、日ごろから常にその動向を観察し、問題を把握しておきます。しかしながら、 Q、C、D、P、S、Mに現れた表面的な問題が明らかになっただけでは、具体的な対策を立案することはできません。その問題を結果として誘発した、いくつかの原因を考察して、それらのおのおのの原因の重要度を評価して最も効果的で経済的なものから対策を講じていくことが大切です。1つの原因は、分析・検討をしていくことによって、さらに、いくつかの低次の原因に分解(枝分かれ)され、問題はより一層、具体的な真因に接近していくことになります。

2.1目標の明確化

  方法改善には、一般的に「表2 方法改善の目的」に示すように、いくつかの目的があります。このように、方法改善を進めていくいかなる場合にも、まず改善の目的を明確にしておかなければなりません。目的が不明確だったために、せっかく提案された方法改善の案も目的に合わなかったことから無駄になってしまうケースも多く見受けられます。要は、目的の明確化によって改善の方向を誤らないようにすることです。

No. 項目 内容
1 フレキシビリティの向上 (flexibility:柔軟性、融通性)
・変種変量生産への対応を可能にする
・生産変動への対応を可能にする
・小ロット生産(段取り改善)
2 生産性の向上 ・ライン・バランス(ライン編成効率)の向上
・ボトルネック工程の改善
・人員削減、工数低減、ST低減
・設備稼働率の向上(無人運転の拡大)
3 品質の維持および向上 不良の低減、再生作業の排除
熟練を必要とする要素作業の排除(作業の簡素化、ポカヨケなど)
よりよい作業条件の維持と向上
4 リードタイムの短縮(余力の最少化) ・平準化生産
・加工時間の短縮
・物流、運搬の改善
・仕掛かり量の削減、停滞時間の短縮
・有効作業率の向上
5 安全の維持・確保 ・危険作業の排除(事故発生の防止)
・疲労の軽減、作業環境の改善
表2 方法改善の目的

2.2 目標設定

 目標評価の指標値は、従来の数値を把握し、それに対しての改善目標値を比率(%)などの具体的な数値で明確に表現しなければなりません。また、改善の目標を設定する場合は、その作業の範囲を考えて、解決策や成果の程度を考慮に入れて設定しなければなりません。このステップは、次の「表3 目標の設定手順」 の4つの段階に分けられます。

No. 項目 手順
1 目標値を決める 1:達成しようとしている要素(項目)を決める(作業時間、人員、効率、材料など)
2:従来の実績値を把握する
3:目標値を数値や比率(%)で具体的に示す
2 どの程度の変更を行うのか、大ざっぱに決める 1:考えられる変更範囲をすべて挙げてみる
2:得られる利益と改善に掛けられる費用を考え、経済性を検討する
3 制約条件を考慮する 改善を行う際の制約条件に、どのようなものがあるかを調べ、その排除の可否について検討をする
4 承認を得る No.1〜No.3までの承認を得る
表3 目標の設定手順

2.3推進メンバーの決定と全体スケジュールの作成

 推進メンバーには、改善推進担当者のほかに、実際に改善案を実施(使用)する部門の実務担当者を必ず入れて、お互いに協力しながら進めていくことが大切です。また、目標達成(実施)の期限までの期間を「詳細分析」「分析結果のまとめ(改善の検討)」「改善案(新方法)の立案」「試行」「実施」などに分けた、テーマ全体の推進スケジュールを作成してから進めることが肝要です。

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