決していいとはいえない景況だからこそ、地に足の付いた戦略づくりが重要。不安にあおられることなく、全体最適を目指す戦略づくりのヒントを紹介します。
皆さんこんにちは。ゴールシステムコンサルティングの村上悟です。
今、日本経済全体はサブプライムショックの直接的な衝撃から少しずつ立ち直りつつあり、受注も戻りはじめているといった状況でしょうか。この連載では、最近ちっともいいことがないと嘆いている皆さんと「ピンチをチャンスに変える方法」を考えていきたいと思います。
今回の連載は不況をビジネスチャンスに変えるためのヒントとして、
を考えていきます。
今回は、現状の行動で企業にどういう問題が引き起こされているかを検討し、やってはいけないことについて見ていきましょう。
今年、多くの企業でトップの年頭訓示は、「『ピンチはチャンス』だから皆で一致団結して頑張れ」だったそうです。しかし、一致団結もやり方を間違えると、ピンチが経営危機に直結することになります。
今回の世界不況の発端は2008年3月13日、ニューヨークの株式市場でサブプライムローンの焦げつきを懸念した投資家が、大量の売りを浴びせ大幅な下げを記録したところから始まりました。そして、それから6か月後の9月14日。アメリカ4大証券の一角であったリーマン・ブラザーズの民事再生法適用申請に端を発した株価の暴落は日本にも波及し、日経平均株価も大幅な下げ幅を記録しました。
北米に大きな市場を持つトヨタ自動車が大幅な損失を発表したのはそれから間もない12月24日。その後もホンダ、ソニーといった日本を代表する企業が軒並み大幅な赤字見通しを発表すると同時に製造拠点の統廃合や人員削減といった大胆なリストラ計画を発表しています。
これまでの不況ならば、何とか売ってこいと営業の尻をたたくところですが、「売上が蒸発する」と形容されたように、津波のような需要減の状況では、単なる精神論で売上を増やせるような状況ではありませんでした。
そこで多くの企業では「身の丈を合わせる経営」と称して、派遣切りや雇い止め、在庫削減が実行されました。この「派遣切り」や「雇い止め」といった話題は連日マスコミを賑わせ、派遣労働者の制度の是非を含め大きな社会問題となっています。
この連載では、その是非を検証するものではありませんが、結果としてこの行動が企業内部に何を引き起こしたかを考えてみましょう。
私が聞く限り、多くの現場で行われた「派遣切り」は直接作業員の5〜15%ほどだったようです。直接工数の5〜15%削減ですから、生産能力も同じくらいダウンしたと考えてよさそうですが、残念ながらそうではないのです。
派遣作業者といえども、即日代替可能な単純作業だけをしているわけではありませんし、工場のそれぞれの工程によっても派遣労働者が多い工程や、パート作業員に頼っている工程など特色があります。
そのような状況で一律10%の工数を削減すれば、工場の所々に深刻なボトルネック工程が発生することになります。
そうなると工場の生産能力は下手をすると半減以下などという状況に陥る場合もあります。また設計や開発部門などでも派遣技術者をリストラした結果同じような状況が発生しています。
確かに2008年12月24日にトヨタ自動車が大幅な減収見通し(トヨタショック)を発表して以降、各社のマインドは急速に落ち込み、2009年1月から2月の生産規模はそのそれまでの半分程度まで落ち込んでいたことも事実ではあります。
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