さらに技術力が進み、1960年前半にほとんどのエンジンでOHC方式が採用されるようになりましたが、ちょうどその時期、ゴム内部に「アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)」や「ガラス繊維」などの心線を埋め込んで伸びや強度を高めた「コグドベルト(歯付きベルト)」を使用したタイミングベルト(写真2)が一気に普及します。
このコグドベルトは1945年に開発されましたが、当時は一部の車にしかOHC方式が普及していなかったので、候補として挙がらなかったようですね。当時は、あまり周知されていなかった新技術といえます。
当時、OHV方式が主流であったことを考えると、真剣にOHCを研究していた開発者たちの数も少なく、採用の利点も見いだされづらかったのでしょう。実際に、OHC方式が主流となったタイミングで、コグドベルトの採用が一気に広まりました。
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このコグドベルトの採用により、ローラーチェーン採用と比べて大幅にエンジン性能が向上しました。
以下に例を挙げます。
ただし以下のようなデメリットも忘れてはいけません。
バルブクラッシュを避けるために、ピストンヘッド部に「バルブリセス(逃げ)」を設けることで対応する場合がありますが、燃焼室内の構造が複雑となって混合気に適切な過流を与えることが難しく、燃焼効率の低下につながってしまいます。
最近、室内の広さや衝突安全性などを考慮したエンジンのコンパクト化が特に重視されています。タイミングベルトのデメリットとして、エンジンの小型化に不利であることがよく挙げられますが、いまから10年ほど前まではそれよりもタイミングベルトの破断が一番のネックとして捉えられていました。
実際にタイミングベルトが破断することによってバルブクラッシュが発生すると、写真3・4のようになります。
バルブがこれだけ曲がると、バルブを保持しているバルブガイドなどにも影響が及ぶため、バルブ周りの部品を全て交換することになります。さらにひどいときは、シリンダヘッドを交換しなければいけない場合もあります。ピストンとの衝突の仕方によっては、当然ピストンの交換も必要となります。
このように、バルブクラッシュは最も恐れなくてはならないトラブルの1つであり、タイミングベルトを使用する際に一番懸念される原因となるのです。
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