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「日本製品の品質が良い」とは何が良いのですか?ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル(4)(3/3 ページ)

連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」では、「オリジナルの製品を作りたい」「斬新なアイデアを形にしたい」と考え、製品化を目指す際に、絶対に押さえておかなければならないポイントを解説する。連載第4回では「日本製品の品質が良い」とは“一体何が良いのか?”について掘り下げて考える。

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自社で考えるべき信頼性の試験内容とそのレベル

 JISに規格が定められている信頼性の試験を実施するか/実施しないかは、メーカーの判断で決めることが可能で、法的な拘束力はない。つまり、「ノートPCのヒンジの耐久性は開閉1万回以上のこと」などとは法律で決まっていないのだ。ここが連載第3回で紹介した、安全性の安全規格と異なる部分だ。

 JISなどに規格のない信頼性の試験内容はメーカー独自で考える必要があり、製品を使用するユーザーの立場で考えなければならない。ユーザーはメーカーの想定した通りに製品を使用するとは限らないため、メーカーはユーザーの使用方法や扱い方、使用環境の範囲やレベルを拡大想定する必要がある。しかし、その想定した全てを満足する設計はコストアップにつながり、逆に製品の競争力を低下させかねないため、メーカーはその範囲とレベルを一定の水準に決めなければならない。そして、その決めた一定の水準こそが、そのメーカー自身の信頼性であり、品質と捉えることができる。

これからのモノづくりで目指すべき信頼性の方向性

 信頼性を高くすれば、設計工数や試験工数が増え、また部品コストは一般的にアップして製品のコストもアップする。そして何より、製品の開発/設計期間が延びる。中国製品は、信頼性は低いが製品のコストは安く、製品の開発/設計期間が短い。ただし昨今は、信頼性の差はなくなってきているといわれている。

  • 日本製品:信頼性は高い/製品は高価/市場に出るのが遅い
  • 中国製品:信頼性は低い/製品は安価/市場に出るのが早い

 上記のどちらを選択するかはメーカーの判断になる。筆者は、日本製品は日本の得意分野を生かすべきであると考えるため、信頼性は高くすべきだと思う。しかしながら、昨今のモノづくりは「モノからコトへ」や「(IoTやネットワークで)つながる」がトレンドとなってきている。「モノからコトへ」とは、例えばモノであるiPhoneにコト(サービス)である「Apple Music」を連携させて販売することである。「つながる」とは、例えばiPhone同士を「AirDrop」でつなげることである。

 「モノからコトへ」や「つながる」は、先に市場を獲得した製品のメーカーが有利になる。AppleのiPhoneを購入したユーザーは、例えば「Amazon Music」ではなく、Apple Musicのコト(サービス)を選択する可能性が高い。また、友人同士の使うiPhoneのAirDropの便利さを知れば、自分もiPhoneを購入してAirDropで友人とつながって便利さを一緒に体験したくなるかもしれないからだ。つまり、これからのモノづくりは、信頼性は低くても製品を市場に早く出す市場獲得型が有利になるかもしれないのだ。日本製品は一般的に信頼獲得型である。どちらに重きを置くかは、メーカーの経営判断といってよい。 (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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