「言われたことをする」が基本の中国人の仕事のやり方:リモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(2)(1/2 ページ)
中国ビジネスにおける筆者の実体験を交えながら、中国企業や中国人とやりとりする際に知っておきたいトラブル回避策を紹介する連載。第2回では、前回の「『あうんの呼吸』に頼る日本人の仕事のやり方」に対して、中国人がどのような国民性を持っているのかを、2つのエピソードを交えて解説する。
前回、「あうんの呼吸」に頼った日本人特有の仕事の仕方は、中国人には通用しにくく、トラブルや不良品を発生させる原因になりやすいとお伝えした。さらに、同じ日本国内の仕事仲間でも、年齢差があったり、国籍が違ったりすれば、得ている情報や考え方も異なるので、情報伝達が難しくなってきていることにも触れた。
今回は、こうした日本人に対して、中国人がどのような国民性を持っているのかを、2つのエピソードを通じて解説する。
言われたことだけをしてほしかった中国人
筆者は前職を退職した後、日本の技術的に優れた商品を中国に販売する仕事をしようと考えていた。まずは貿易の勉強が必要と考え、中国人の友人に日本在住で中国に日本製雑貨を輸出している人を紹介してもらった。その人は黄さん(仮名)といい、既に日本に5年近く住み、数名の中国人仲間と一緒に、ドラッグストアにあるハンドクリームや美容器具などを中国に輸出していた。黄さんと一緒に仕事を始める前に3回食事をし、中国人と日本人の考え方や仕事の仕方の違い、また貿易の手法などに関して語りあった。
3回目に会ったとき、黄さんは筆者にリストを手渡した。そこには、日本製雑貨の商品名、メーカー名、型名、そして黄さんの会社が購入している現在の価格が記載されてあった。筆者への彼からの依頼は、ある特定のドラッグストアでそのリストに記載されている商品を探し出し、その価格の調査をするというものだった。店頭の価格がリストに記載されているものより安ければ黄さんに連絡し、彼の指示に従ってある一定量を購入するのだ。その特定のドラッグストアは問屋の機能も果たしているらしく、お店に依頼すれば数百個単位で購入できるらしい。店頭の価格は日々変動しており、リストより価格の安いときを狙って購入したいのだ。そうすれば、その差額に購入個数を掛けた分だけ、黄さんの会社の利益は増える。
筆者は黄さんの依頼内容の意図を理解し、指示された特定のドラッグストアに行って価格の調査を始めた。しかし、この作業は非常に大変であった。この手の商品の類似品はとても多くあり、たとえリストの商品を見つけ出したとしても、微妙に型名が違っていたりする。色違いやグレード違いであろう。リストの商品と全く同じものを見つけ出すにはかなりの労力と時間が必要であった。また、ドラッグストア内を価格調査のために何時間もうろうろしているのは、怪しい人と思われそうなので筆者はもうやりたくなかった。
筆者は黄さんに連絡して、市場での最安価格をWebで調べることを提案した。しかし、黄さんが言うには、それは既に調査済みであり、リストに掲載されている価格が今のところ一番安く、筆者がWebで調べてもムダであるとのことだった。その特定のドラッグストアは店頭価格が日々変動しており、リストより安い価格が見つかることがあるため、それを調査してほしかったのだ。
だが、筆者は既にドラッグストアに行って価格を調べる気はなくなっていた。そこで、試しにリストの商品の何点かをWebで価格調査してみた。すると、ものの数十分でリストよりもかなり安い商品が、それも5点も見つかったのだ。筆者は大きな成果を挙げたと思い、早速その画像をキャプチャーして、黄さんに「WeChat」で送信した。しかし、黄さんは喜んでくれるどころか、いつになっても全く返信をくれないのだ。
これまで、WeChatで連絡すればすぐに返信をくれ、電話すればすぐに出てくれた。だが、今回は全く連絡がなく、驚いたことにこのときから全く音信不通になってしまったのだ。そして、その理由は今でも分からないままになっている。既に筆者からは十分な情報が得られたので、もう一緒に仕事をするのは終わりしようと思ったのかもしれない。それにしても、突然音信不通にする必要はないと思った。
この出来事からしばらく後に、筆者は中国に出張し、黄さんとの件を中国人の友人に相談した。中国人の目から見た意見を聞きたかったからだ。この黄さんとの出来事を一通り話し、その友人の反応をうかがった。このとき、友人から出てきた言葉がとても印象的であったのだ。
それは、「特定のドラッグストアで調べてほしいと依頼されたのに、それをWebで調べたらダメでしょう」であった。
筆者は、“リストよりも安い商品を見つけることが目的”と理解して、それをWebでより早く見つけ出すことができたので、黄さんは喜ぶだろうと考えていた。しかし、友人である中国人の意見は「言われたことをしなかったのはダメ!」であった。
この出来事以降、黄さんとは会ってないので、音信不通になった真相はもちろん分からないのだが、筆者にとっては、中国人の友人が開口一番にいった言葉がとても印象に残ったのであった。
言われたこと以上をする日本人と、言われたことだけをする中国人
日本には「あうん呼吸」「以心伝心」「一を聞いて十を知る」という言葉がある。ドラマでも上司が部下に向かって「言われたことだけやってるようじゃダメなんだよ!」や「自分で考えて行動しなきゃ!!」という場面はよく見る。しかし、中国人の基本的な考えは「言われたことをする」のが仕事である。
つまり、中国人と一緒に仕事をする場合、言ったこと以上の結果を期待するような曖昧な依頼の仕方をしてはならず、明確で漏れのない依頼の仕方をしなければならないのである。
「その辺はお任せします」や「これ以上言わなくても(書かなくても)、普通は分かるでしょう」といったような依頼の仕方ではダメなのだ。「あまり細かく指示すると、それは相手に失礼にならないか?」と気を使う日本人がいるが、その心配は無用と考える。要望をしっかりと伝えないで、後から「普通〜のハズでしょう」と文句を言う方がよほど失礼に当たるのだ。
中国人は「言われたことをする」のが仕事であると述べたが、現代の中国の発展を担っている中国人や米国帰りの海亀族などは、必ずしもそうではないと筆者は考えている。だが、私たちの中国ビジネスで、日本人から仕事を依頼されたり、指示されたりして仕事をする中国人は、このような仕事の仕方をしている人がほとんどであるということだ。
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