「新車全てEV」「エンジンに投資しない」という欧米勢、熱効率50%に尽力できる日本勢:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
週末です! 1週間、おつかれさまでした。今週もさまざまな自動車関連のニュースがありましたね。モノづくりに関するニュースではありませんが、BMWの日本法人に関する報道がちょっと気になりました。
あまりにも対照的な、日本と欧米の方針
さて、今週MONOistで公開した自動車関連の記事についても紹介したいと思います。バッテリー関連で個人的にいいニュースだなと思ったのは「欧州でもEVバイクの交換式バッテリーを標準化へ、ホンダとヤマ発など4社が協業」です。既に、日本国内では二輪車メーカー各社がEVバイクの交換式バッテリーで協調路線ですが、それが海外にも広がります。
この件は、バイクの電動化が進むだけでなく、身近な蓄電池の普及にもつながる取り組みです。例えば、ホンダにとってEVバイクの交換式バッテリーは、持ち運べる蓄電池という位置付けでもあります。単なる非常用の電源ではなく普段はバイクのバッテリーとしてフル活用できるのも、効率の面で面白いのではないかと個人的に期待しています。
最近、近所を走る郵便配達のバイクが「BENLY e:」であることが増えてきました。決まったエリアの物流に使う車両を電動化する上で役に立つ知見が郵便局に蓄積されていっているのではないでしょうか。
内燃機関不要論とも言いたくなる動きが増えてきました。例えば、旧グループPSAと旧FCAが合併したステランティスは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンにこれ以上投資するつもりはなく、当面のエンジン車には既存技術を使う方針であると日本経済新聞が報じました。また、Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)やボルボは、ラインアップをゼロエミッション車のみとします。そういった環境下でも日産自動車がエンジン技術によるCO2排出削減に取り組むのは実に対照的です(関連記事:日産はe-POWERの燃費を25%改善へ、発電用エンジンの熱効率50%で実現)。
欧米の動向と同じ路線でない日系企業の取り組みについて、ネガティブに捉える人は少なくありません。「もうエンジンに投資しない」とまで他の自動車メーカーで言われているのに、テスラがEVを大幅値下げできるほど前進を続けているのに、他の伝統的な自動車メーカーがこれだけEVに注力しているのに、日本の自動車メーカーは何をしているんだ、というトーンになりがちです。機械屋のロマンと意地でエンジンにこだわり続けているのか、と指摘するような人もいるでしょう。
2015年に、マツダの人見光夫氏が「消費者が元を取れない高価な環境技術ではいけない。エンジンの実用燃費を追求することで、環境にも財布にも優しいクルマを提供する」という趣旨の発言をしていました。もう何年もたって、環境規制をめぐる状況が全く違うのは承知の上ですが、何が消費者のためなのかを追求する姿勢は自動車メーカー各社にどうか忘れずにいてほしいですね。誰もが自宅に充電環境を用意できるわけではない以上、自動車メーカーがEVしか売らなくなるのは困ります。「EVがだめなら中古車しかない」という日がくるのでしょうか。選択肢がなるべく多様であってほしいと一人の自動車ユーザーとしては思いますが、それで自動車業界が立ち行かなくなるなら、自動車ユーザーが変わらなければなりませんね。
今週はこんな記事を公開しました
- ブレーキの歴史と未来
- 自動運転技術
- ハイブリッド車
- 電気自動車
- 人工知能ニュース
- 製造業IoT
- 製造マネジメントニュース
- CAEニュース
- 編集後記
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- これからEV開発責任者となる人へ、5つの提言
風雲急を告げる、というのであろうか。毎日のようにEV(電気自動車)に関する規制やニュースが流れている。このように各国で一気に電動車への転換が叫ばれており、それに伴い、エンジン車やEVの担当から、EVの開発責任者になる人も多いのではないかと思われる。しかし、EV開発は従来とかなり異なった面を持っている。どのようなことを考えておけば良いのか、筆者の経験から5つの提言としてまとめてみた。先達の意見として参考に願いたい。 - 電気自動車とはいったい何なのか、今もつながるテスラとエジソンの因縁
Stay at Home! まるでこの言葉が世界中の合言葉のようになってきている。そのため、まとまった時間が出来たことを活用して、長年考えていたことを取り纏めてみた。それは、「電気自動車(EV)とはいったい何なのか!」という問いである。 - 「新車全て電動車」はどうなった? 年末に発表されたグリーン成長戦略をおさらい
2021年は、グリーン成長戦略の実行に向けて多くの企業が動き出す1年となるでしょう。グリーン成長戦略でどのような目標が掲げられたか、自動車を中心におさらいします。 - 燃費と出力を両立する可変圧縮エンジン、日産が開発秘話語る
「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、話題の新型車開発の舞台裏を語る「新車開発講演」が行われた。この中で取り上げられたのが、量産エンジンとしては「世界初」(日産自動車)となる日産自動車の可変圧縮比(VCR、Variable Compression Ratio)エンジンだ。日産自動車 パワートレイン・EV開発本部 アライアンス パワートレイン エンジニアリング ダイレクターの木賀新一氏が、VCRエンジンと、これを搭載する「アルティマ」の最新モデルに関する開発秘話を語った。 - 熱効率50%をより実用的に、SIPから生まれた「モデルベース燃焼制御システム」
科学技術振興機構(JST)は2019年1月28日、東京都内で戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の取り組みの1つである「革新的燃焼技術」の成果を報告する公開シンポジウムを実施した。 - 「SKYACTIV-G」初のダウンサイジングターボ、排気量2.5lで新型「CX-9」に搭載
マツダは、「ロサンゼルスオートショー2015」において3列シート7人乗りのSUV「CX-9」の新モデルを公開した。新開発の排気量2.5l直噴ターボガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5T」を搭載し、EPAモードで従来比約20%の燃費改善を実現した。2016年春に北米市場から販売を始める。