燃費と出力を両立する可変圧縮エンジン、日産が開発秘話語る:人とくるまのテクノロジー展2019(1/3 ページ)
「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、話題の新型車開発の舞台裏を語る「新車開発講演」が行われた。この中で取り上げられたのが、量産エンジンとしては「世界初」(日産自動車)となる日産自動車の可変圧縮比(VCR、Variable Compression Ratio)エンジンだ。日産自動車 パワートレイン・EV開発本部 アライアンス パワートレイン エンジニアリング ダイレクターの木賀新一氏が、VCRエンジンと、これを搭載する「アルティマ」の最新モデルに関する開発秘話を語った。
「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、話題の新型車開発の舞台裏を語る「新車開発講演」が行われた。
この中で取り上げられたのが、量産エンジンとしては「世界初」(日産自動車)となる日産自動車の可変圧縮比(VCR、Variable Compression Ratio)エンジンだ。日産自動車 パワートレイン・EV技術開発本部 アライアンス パワートレイン エンジニアリング ダイレクターの木賀新一氏が、VCRエンジンと、これを搭載する「アルティマ」の最新モデルに関する開発秘話を語った。
現在、日産自動車では2050年にWell-to-Wheel(燃料の採掘、発電や燃料精製から車両走行まで)で新車のCO2排出量を2000年比90%削減する「ニッサン・グリーンプログラム2022」を推進している。木賀氏は「内燃機関を限りなく効率化すると同時に電気自動車(EV)を導入し、再生可能エネルギーを活用すれば限りなく目標に近づく」と解説。加えて「将来のパワーソースとして、EVのモーターを活用して内燃機関を発電機とする『eパワー』が大きなポイントとなる」とした。
eパワーは内燃機関を発電機として利用するシリーズハイブリッドシステムであるため、日産自動車としては環境性能の向上には電動化だけでなく内燃機関のさらなる効率化も不可欠となる。そこで日産自動車が着目したのが、シリンダー内で混合気を圧縮する際の容積の比率である圧縮比だ。
圧縮比を自由に変えられたら
木賀氏は内燃機関において「圧縮比と熱効率は密接な関係にある」という。「基本的には圧縮比を上げれば上げるほど熱効率は向上する。ただ、あまりにも上げるとノッキングが起きるため、あるところで制限しなくてはならない」と説明。その上で「圧縮比をどのように上げるかは長年のジレンマであり、エンジニアは常に考えている」と述べた。
また、蒸気自動車から始まった自動車のパワートレインの歴史を振り返り、内燃機関は「コネクティングロッドの高さが変わらないと圧縮比は固定であり、エンジン付き自動車が登場してからこれまでずっと圧縮比は可変ではなく一定だった」(木賀氏)と指摘した。
さらに、他社の排気量2.0l(リットル)の高効率を特徴とする自然吸気エンジンと、高出力のターボエンジンを例に、圧縮比と出力を相関図に表し、「高効率エンジンは圧縮比が11.7でCO2排出量が1km当たり127g。最高出力は140kWだ。一方、高出力エンジンは、圧縮比が8.6、CO2排出量が1km当たり162gで出力は280kWだ。このように、過給機付きエンジンは、圧縮比は低いがパワーは出る。一方、自然吸気エンジンは圧縮比が高いがトルクは小さい」(木賀氏)と解説。
その上で、「もしこの圧縮比を自由に変えられれば燃費と出力の両得となる」と木賀氏はVCRエンジンの狙いを説明した。量産エンジンの圧縮比は「8から14の間に存在しており、われわれのVCRエンジンもその間で設定した」(同氏)という。
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