ソニー、巣ごもり需要好調も米国の中国向け再輸出規制が今後の足かせに:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーは2020年10月28日、2021年3月期(2020年度)第2四半期の業績を発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響から家庭での“巣ごもり需要”によるゲームや音楽、ホームAV製品などが好調だった一方で、米中貿易摩擦で米国政府の中国特定大手企業に対する再輸出規制により、イメージセンサー事業が大きな打撃を受ける結果となっている。
ゲーム事業は絶好調、PS5は初年度760万台以上販売へ
COVID-19の巣ごもり需要で強い追い風を受けているのがG&NS分野である。同分野では、第2四半期におけるゲームソフトウェアでヒット作に恵まれた他、在宅を余儀なくされている状況からゲームへのニーズが高まり、PS4ハードウェアを除く全ての項目で増収を達成したという。十時氏は「巣ごもり需要のピークは2020年4月でそれ以降は落ち着きを見せているが、直近の9月でもゲームの総プレイ時間は前年同月比30%以上で推移しており、これは下期も継続すると見ている。引き続き強いゲームニーズがある」と考えを述べている。
また、新たな家庭用コンソールとしてPS5を2020年11月から発売することを発表したが「PS4初年度実績である760万台を超えるスタートを目指す」と十時氏は意欲を示している。
同様に巣ごもり授業が好影響をもたらし、下期も好調を見込めるのが、音楽分野だ。第2四半期はストリーミング配信売上高の増加やパッケージメディア販売が好調で、増収増益となった。加えて、映画公開最速で100億円の興行収入を突破した「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の制作と配給を行うアニプレックスはソニー・ミュージックエンタテインメントの100%子会社であり、下期はこれらの効果も得られるために好調を持続する見込みだ。
COVID-19の影響で苦しんだ、テレビなど家庭用製品を扱うエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野も第2四半期では巣ごもり需要でテレビなどの販売が増加したことや、デジタルカメラの需要が戻ってきたことなどから、持ち直した。第2四半期は前年同期比で増収増益を実現している。ただ、通期では慎重な姿勢を見せている。
十時氏は「EP&S分野はCOVID-19の影響を2020年2月から受けたが、第2四半期からはサプライチェーンが安定化し、事業は落ち着きを見せている。しかし、COVID-19再拡大の兆しも見え始めており予断を許さない状況が続くと見ている。事業運営としても緊張感を持って運営していく。また、厳しい環境下でも利益が出るような体制への再構築を継続的に進める他、ソニーの強みを生かした『Reality』『Real-time』『Remote』の価値を生かした新たな成長への仕込みにも引き続き取り組んでいく」と語っている。
地政学的リスクで苦戦が見込まれるイメージセンサー事業
一方で、厳しい状況に置かれているのがCMOSイメージセンサーを含むI&SS分野である。第2四半期では、デジタルカメラ向けのイメージセンサーの影響などもあったが、今後に向けて最も大きな影響をもたらしそうなのが、米国政府が2020年8月に発表した中国特定企業向け再輸出規制の影響である。具体的には、中国の華為技術(ファーウェイ)と関連企業に対し、米国の技術やソフトウェアを用いて国外で製造された直接製品について、ファーウェイなどへの再輸出を行う際に、米国商務省産業安全保障局(BIS)の許可が必要とされるようになった。これにソニーのCMOSイメージセンサーが含まれるために、ファーウェイ向けのイメージセンサーが輸出できなくなっている。
十時氏は「2020年8月17日の米国政府の輸出規制に従い、中国の特定大手顧客向けの製品出荷を同年9月15日に停止している。これを踏まえ、下期見通しは該当する顧客向けの出荷は見込んでいない。さらに該当顧客向けの製品在庫や仕掛かり在庫の評価減として175億円の損失を見込んでいる」と語っている。
また、売上高の影響については「上期と下期のイメージセンサー売り上げの差を見てもらえれば、そのインパクトがそのまま影響だといえる。実際には一部を他の顧客向けでカバーしているのでその数字以上の影響がある」と影響度の大きさについて十時氏は語っている。
これらの影響を受けて、事業戦略の見直しも進めているという。ファーウェイ向けでは、カメラの高付加価値化による高画質を追求したカスタム製品が中心となっていたが、その他顧客への拡大を進めるために「2021年度は汎用品の比率を増やし、まずはシェアを戻すことを重視して取り組む。高付加価値品の比率を高め事業収益が本格的に回復するのは2022年度となる見込みだ」と十時氏は見通しを語る。米国当局への輸出許可を求めることについては「コメントは控えたい」(十時氏)としている。
設備投資についても後ろ倒しを検討する。既に発表済みの長崎工場の新棟建設については予定通り進めるが「生産能力の拡大スケジュールについては受注と稼働状況を見てから決める」(十時氏)。生産能力をウエハーベースで月産13万8000枚にする計画についても「生産設備の導入は進めているが、稼働は状況を見ながら行う」(十時氏)としている。ただ、中長期的にはセンシング領域の拡大や車載センサーの拡大による成長を目指し「研究開発は継続的に進める」(十時氏)としている。
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