製造現場では狭すぎる、勝負の鍵は「ソリューション領域」:IVI公開シンポジウム2017春(3)(2/2 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、取り組みの進捗状況を紹介するIVI公開シンポジウムを開催。同シンポジウムの内容を紹介する本連載の第3回では、経済産業省製造産業局局長の糟谷敏秀氏の基調講演の内容を紹介する。
第4次産業革命に向けた経済産業省の政策支援
こうした製造業における第4次産業革命によるビジネスモデル変革に対し、経済産業省が政策的課題として認識しているのが、以下の8つのポイントであるという。
- ユースケースの創出:スマート工場実証などにより、挑戦を支援
- 規制・制度改革:ユースケース実施を阻害する規制・制度を随時見直し
- サイバーセキュリティ:技術開発、指針策定、人材育成など
- 国際標準化への貢献(IEC、ISO):日本からの国際提案実施など
- 中小企業への導入支援:中小企業への助言・支援(スマートモノづくり応援隊)、中小企業が導入しやすいツールの発掘・普及、中小企業の事例集など
- 人材育成:新しい知識や技術の習得を支援するプログラムなど
- 国際協力:政府やプラットフォーム、研究機関の間で連携構築、協力を具体化
- 技術開発・協調領域の最大化:協調領域における技術開発を支援
ユースケースの創出については、既に2016年度に「スマート工場実証事業」とした支援制度を実施。5億円の予算で14プロジェクトに対して支援を行った※)。糟谷氏は「スマート工場への取り組みについては、まだまだ現実的なものとするためには試行錯誤が必要で、そうした取り組みを支えていく」と述べている。2017年度についても既に3億円分の予算を申請している。中堅中小製造業でも利用可能なスマート工場への取り組みを支援する他、データ伝達の共通フォーマットを作成する取り組みなども進めていく。
※)関連記事:経産省のスマート工場実証事業を日立製作所などが受託
規制緩和については、防爆規制などにより最先端のタブレット端末が製造現場で使えないという問題など「規制が最先端技術の導入の障害になるケースがあるので、その対応を進めていく」(糟谷氏)。
中小製造業のIoT活用については「世界で課題となっており、ドイツでも進んでいないという指摘を受けている状況だ。中小企業においては、個々の技術よりも、経営課題をどう解決するのか、どういう技術を使えるのかという視点が必要。そのため、RRI(ロボット革命イニシアティブ協議会)の中堅中小企業AG(アクショングループ)により、さまざまな取り組みを推進してきた」と糟谷氏は述べる※)。
※)関連記事:第4次産業革命は中小企業が起こす、RRIのアクショングループが始動
具体的には「スマートモノづくり応援隊」として、中小製造業のIT化を支援する人材の派遣などを推進。さらに活動の拠点として、2016年度はさいたま市産業創造財団(さいたま市)、大阪商工会議所(大阪市)、山形大学(山形市)、北九州商工会議所(福岡県北九州市)、ソフトピアジャパン(岐阜県大垣市)の5つの拠点を選定して活動を進めてきたが、2017年度はさらに拡大していく方針だという※)。さらに中小製造業が使いやすいITツールを公募し、「スマートものづくり応援ツール」として認定。Webサイトで公開してきた。2017年度は第2弾の公募を進めるという。
※)関連記事:インダストリー4.0における“世界の軸”へ、日独連携の潜在力
フランスとの協力と「ハノーバー宣言」
国際協力については、新たに2017年1月にフランスとの間で、「Industry of the Future(産業の未来)」に向けて協力していく方針で合意。経済産業省とフランスの経済財務省企業総局との定期会合「日仏産業協力委員会」の中に「Industry of the Future/IoT ワーキンググループ」を設置。共同プロジェクトの推進や中小企業、ベンチャー支援などに取り組んでいく。糟谷氏は「日仏企業間のプロジェクトを推進する場合、両国のファンディング機関であるNEDOとbpi franceで、支援を行っていくことが特徴である」と述べている。
国際協力に関しては、ドイツのIT関連展示会「CeBIT」で、新たに「ハノーバー宣言」なども行っており、積極的に協力の土壌作りを加速させている状況だ※)。糟谷氏は「企業の活動がボーダーレスになってきている中、国が異なるだけで不便になるようなことはないようにしていく。組めるところは組んで、調和した形で進めていくことが重要だ」と国家間連携の考えについて述べている。
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