製造現場では狭すぎる、勝負の鍵は「ソリューション領域」:IVI公開シンポジウム2017春(3)(1/2 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、取り組みの進捗状況を紹介するIVI公開シンポジウムを開催。同シンポジウムの内容を紹介する本連載の第3回では、経済産業省製造産業局局長の糟谷敏秀氏の基調講演の内容を紹介する。
2015年に6月に活動を本格化させた「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、さまざまな取り組みを進めてきている。2017年3月9〜10日に開催した「IVI公開シンポジウム2017春」では、これまでの活動内容とこれからの活動方針について紹介した。今回は経済産業省製造産業局局長の糟谷敏秀氏の基調講演の内容を紹介する。
利益の源泉はソリューションへ
第4次産業革命や「Society 5.0」など、ICT(情報通信技術)を活用した社会や産業の変化が加速しており、製造業の中でも取り組みは進んでいる。
しかし、経済産業省 製造産業局 局長の糟谷敏秀氏は「ドイツの『インダストリー4.0』などの動きについて日本の製造業に話を聞くと『ドイツのやっていることは既にできている』という話をされたことがあった。しかし、ドイツの取り組みの全体像は工場の中だけの話ではなく付加価値の範囲が異なる。日本の製造業は工場の中だけで考えてしまう傾向が強いが、生産現場だけの発想にとどまっていてはいけない」と警鐘を鳴らしている。
第4次産業革命による変化の1つに製造業における付加価値の変化がある。製造業の変化について糟谷氏は「モノづくり“だけ”から、ソリューションやサービスに付加価値の源泉が変化してきており、これらをどう組み合わせていくかというのが重要な要素になってきている」と述べる。
産業において価値をもたらすソリューションを実現するためには、IT基盤やソフトウェアなど従来の「IT(情報技術)」の領域の技術が必須である一方で、問題解決への具体的なアプローチを生み出す製造現場のノウハウやハードウェアなど「OT(制御技術)」の領域の技術やノウハウが必要になる。このソリューション領域を押さえるために、米国シリコンバレー系の企業などが、上空から攻めてきているというのが現状である。
こうした動きに対し「ソリューションが利益の源泉で将来の草刈り場になると見られている中、製造現場側からソリューション領域を取り込む動きが必要である。自らソリューションを提供するように、現場から上位の領域に踏み込まないといけない」と糟谷氏は強調する。
「ものづくり+」の価値
製造業におけるソリューション領域の取り組みや工場外への取り組みの姿勢についてはここ数年で大きく変化してきたが「サプライチェーンはかなり進んできたと思うが、エンジニアリングチェーンの統合についてはまだまだだと考えている。状況の変化に俊敏に対応し改善していくことが日本の製造業の強みだと考えている。こうした強みはIoTやデータ活用を進めていくことで、生産だけでなく市場との関係性を変えることにつながる。もっと強みを発揮できる世界が変えられる」(糟谷氏)とさらなる取り組みの加速を促している。
こうした中で経済産業省が訴えているのが「ものづくり+(プラス)」企業への進化である。モノづくりに加えて新たな要素を加えたビジネスモデルを構築していくことが新たな製造業の生きる道につながるという考えである。ただ、糟谷氏は「ビジネスモデル変革に向けての投資についての意識は国内外で大きな差がある。意識の違いがあるということを認識することが重要だ」と述べている。
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