なぜIVIは新たなスマート工場モデルを打ち出すのか:スマートファクトリー(1/2 ページ)
「緩やかな標準」を掲げ、日本版スマート工場の実現を目指すIVI。2016年12月には新たにスマート工場の基本モデル「IVRA」を打ち出した。その狙いは何なのだろうか。IVI理事長の 西岡靖之氏に話を聞いた。
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は2016年12月に独自のスマート工場の基本モデル「Industrial Value Chain Reference Architecture (IVRA)」を公開※)。既にスマート工場モデルを公開しているドイツのプラットフォーム インダストリー4.0や米国企業などが参加するインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)などに対し、日本独自のスマート工場の特徴をぶつけていく方針である。
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「緩やかな標準」を打ち出していたIVIがなぜこのタイミングで、IVRAを打ち出したのか。IVI理事長で法政大学デザイン工学部 教授の西岡靖之氏に話を聞いた。
国際標準の場で日本の価値を訴える
MONOist なぜこのタイミングでIVRAを打ち出したのですか。
西岡氏 もともと2015年6月に設立した時点で現場発の問題解決の例を標準としていく「緩やかな標準」を基軸として考えていた。標準化についての考えもデファクト(事実上の標準)は視野に入れていたが、デジュール(公的な標準)についてはあまり考えていなかった。しかし、スマートファクトリーの実現を考えた場合、個々の現場の問題解決を進めるだけでは不十分であることが見えてきた。そこで、2016年度の取り組みとしては、こららの“点”の活動を“面”とするために「プラットフォーム化」を打ち出してきた※)。
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一方で、2016年4月にドイツで開催されたハノーバーメッセでは、IVIは設立後初めての海外での活動紹介を行い高く評価を受けた。日本独自の立場を発信する価値が見えたことで、その後積極的な海外での広報活動も進めてきた。あらためて日本の立場を発信することの重要性を考えていた。
西岡氏 スマートファクトリーの実現については現在、IECでは「SG8 Industry 4.0 - Smart Manufacturing」、ISOでは「SAG Industry 4.0 - Smart Manufacturing」という戦略グループにおいて、標準化に向けた主要な方向性と、現存する規格のマッピングなどの取り組みを行っている。
これらの場では既に先行して公開されているドイツのプラットフォーム4.0の「Reference Architecture Model Industrie 4.0(RAMI4.0)」※)がベースとなっている。さらに米国の大手企業が中心となって設立し現在はグローバル30カ国以上から企業が参加しているIICの「IIC Reference Architecture(IIRA)」なども、RAMI4.0との規格すり合わせが行われていることで、参照されている。
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今回、IECとISOのこれらの戦略グループが協調する動きが出てきたことから、日本政府の仲介で、あらためて日本発のリファレンスアーキテクチャ打ち出す話が生まれ、IVIとしても、プラットフォームの全体像をまとめるという意味で作成に取り組んだ。ポイントとしては、日本のモノづくりの強さである現場力まで落とし込んで表現したことにある。2016年12月に英語で公開したが、海外からの反応は非常に強い。
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