進むドイツのスマート工場、「インダストリー4.0基準」とは?:IVI公開シンポジウム2017春(2)(1/2 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、取り組みの進捗状況を紹介するIVI公開シンポジウムを開催。同シンポジウムの内容を紹介する本連載の第2回では、IVIエバンジェリストであるアクセル・ザーレック氏による、ドイツ「インダストリー4.0」の進捗状況の解説内容をお伝えする。
2015年に6月に活動を本格化させた「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、さまざまな活動を本格化させている。2017年3月9〜10日に開催した「IVI公開シンポジウム2017春」では、これまでの活動内容とこれからの活動方針について紹介した。IVIの2017年度の新たな方針について紹介した前回に続き、今回はIVIエバンジェリストであるアクセル・ザーレック(Dr Axel H Saleck)氏の講演内容を紹介する。
注目集めるOPC-UA、MTConnect、DDS
ザーレック氏はドイツのITシステム大手のSAPでインダストリー4.0(I4.0)に深く関わった人物で、SAPにおけるデモ生産ラインの構築などで主導的に取り組んだという。現在はITコンサルタントとして活動を行っているが、IVIの活動を世界に発信するエバンジェリストとしての役割を担っている。
ザーレック氏はが語ったのがドイツが進める「インダストリー4.0」の進捗状況である。2016年秋のIVI公開シンポジウムでは標準的存在として注目を集めるOPC UAについて紹介した※)が、今回はOPC UAを含む3つの注目通信方式について紹介した。
※)関連記事:インダストリー4.0における4つの疑問点とその解答
ザーレック氏は「ドイツのインダストリー4.0ではOPC UAが注目されているが、世界を見ると他の通信規格にも注目が集まっているものがある。米国ではOPC UAよりもMTConnectやDDSへの関心が高い」とスマート工場向けの通信プロトコルの動向について述べている。
3つの規格の特徴を見てみると、OPC UAはIEC62451に基づくインフォメーションモデルとセキュアな通信をサポートしており、工場などで動的に機械などの設備や設定変更を行う処理が可能である特徴を持つ。また、基本的にはクライアント・サーバ方式でSOA(オブジェクト指向モデリング)をとる。ザーレック氏は「OPC UAは特に欧州で高い人気を誇る」と語る。
MTConnectは米国製造技術協会(AMT)が主導する工作機械向けのオープン通信規格で、多くの工作機械メーカーが採用していることが特徴である。リードオンリー(一方高通信)であり、容易なインテグレーションをサポートする。主に工作機械のために標準化されたデータモデル(名前、スケール、意味などの辞書)を提供している点が他の通信プロトコルにない点である。
DDSはインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)のテストベッドで多く採用されている通信規格である。分散型のPublish/Subscribe型のアーキテクチャを採用しており、遅延が少なく、高いスループットで容易にスケールアップできる点が特徴である。OPC UAがオブジェクト指向であるのに対し、DDSはリレーショナルデータモデリング型をとっている。米国海軍や国防省での採用実績があることから、それ以外の国の防衛および航空産業でも採用が進んでいる規格である。
規格間の相互連携が進行
既にこれらの規格間での相互連携の動きが出ている。OPC UAとDDSは2016年4月に協力を発表した他、MTConnectとOPC UAも連携を推進。MTConnectの標準データモデルで通信プロトコルとしてHTTPの代わりにOPC UAを採用する取り組みなどを進めている。また、OPC UAの機能拡張なども進行。Publish/Subscribe型の仕様定義が進められている他、低遅延で高速な通信を可能とする拡張版イーサネット規格TSN(Time Sensitive Network)のサポート検証なども進められている※)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.