モノづくり“だけ”ではダメ、日本政府が推進する「ものづくり“+”」の意味:IVI公開シンポジウム2016秋(3)(2/2 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」が取り組みの進捗状況を紹介するIVI公開シンポジウムを開催。本連載では、同シンポジウムの内容を紹介する。第3回は日本政府における製造業の第4次産業革命への取り組み支援について、経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室長の徳増伸二氏の講演内容をお伝えする。
「ものづくり+」企業へとビジネスモデルを変革
こうした中で徳増氏が語るのが製造業の「ものづくり+企業」への進化である。「例えば、GEは航空機エンジンなど製造物に取り付けたセンサーから取得したデータを分析、活用し、機器制御の効率化や保守の高度化を目指す動きを進めている。こうしたサービスや新たなビジネスモデルを組み合わせた取り組みが今後大きな価値を生むことになる」と徳増氏は述べている。
しかし、日本企業はこうしたビジネスモデル変革の動きについては「やや遅れている」と徳増氏は語る。経済産業省が2015年12月に行った調査によると、IoTの活用状況については「生産工程の見える化」などは積極的に活用しているものの、ビジネスモデル変革に関連するようなアフターサービス領域での活用はまだまだ進んでいないという状況が明らかとなっている。さらに、各種調査会社の調査資料などを見ても「日本企業はビジネスモデルの変革についてはやや消極的な結果が出ている」(徳増氏)としている。
こうした状況を見ても、単純にモノを作っているだけでは生き残れる余地が非常に小さくなるといえる。「日本企業はモノづくりにおける技術力など強みは引き続き強化しつつ、サービスやソリューションなどの要素を加えたビジネスモデル変革により積極的に取り組んでいくべきだと考える。そういう意味でモノづくりを通じて新たな価値を加えていく『ものづくり+企業』になることが求められているといえる」と徳増氏は述べる。
日本政府の第4次産業革命に対する支援
日本の製造業が「ものづくり+企業」としての進化が求められる中、日本政府および経済産業省としてもさざまな支援を推進。IoTの活用について「どういう成果が得られるのか分からない」とする声が多いが、こうしたことを解決し先進事例を生み出すことで新たな成功の形を生み出すため「スマート工場実証事業」に向けた補助を実施している※)。
※)関連記事:経産省のスマート工場実証事業を日立製作所などが受託
またIoTによるシステム間連携を実現するためには「標準化」の問題が欠かせないが、国際標準化の動きについても、ドイツの「インダストリー4.0」や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアムなどの動きを見据えつつ、IEC(国際電気標準会議)やISO(国際標準化機構)などでの議論を進めているところだという※)。
※)関連記事:インダストリー4.0を巡る国際標準化の動きはどうなっているのか
さらに中小企業への導入支援については、中小製造業がICT(情報通信技術)やIoTを活用できるようにサポートする「スマートモノづくり応援隊」を整備し、2016年度から活動を開始している※)。
※)関連記事:政府主導の第4次産業革命団体、国際連携により発信力強化へ
国際協力についても2016年4月に日本とドイツ間においてIoT、インダストリー4.0における6項目での協力について覚書が締結。さらに、同年10月には、インダストリアルインターネットコンソーシアムと、IoT推進コンソーシアムが協力を進めていくことを決め、日本とドイツ、米国など多国籍間での協力体制が構築されている※)。
※)関連記事:インダストリー4.0における“世界の軸”へ、日独連携の潜在力
さらに、ドイツとの連携では、ドイツが既に進めているユースケース(事例)を地図上で示す「オンラインマッピング」を日本でも導入。日独でこの「オンラインマッピング」を共有しようという動きなども生まれているという。
徳増氏は「さまざまな国際協力の枠組みや、企業間連携の動きなどが出ているが、多くのユースケースの公開や共有が進むことで、日本からデファクト構築などが進んでいくことを期待したい」と述べている。
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