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日本の製造業が「IoTで遅れている」と指摘される理由MONOist インダストリー4.0セミナー レポート(1/3 ページ)

MONOist主催のセミナー「インダストリー4.0の到来は日本をどう変革するか」の基調講演に、経済産業省 の正田聡氏が登壇。日本政府としてIoTによる製造業革新を支援する取り組みをどう進めているかということを紹介した。インダストリアルインターネットコンソーシアムの日本の窓口として活躍する吉野晃生氏の講演なども含め、同セミナーのレポートをお送りする。

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 2016年1月15日、東京都内でMONOist主催のセミナー「インダストリー4.0の到来は日本をどう変革するか〜製造業が生き残る術を学ぶ〜」が開催。インダストリー4.0など製造業革新の最新動向とともに、経済産業省を中心とした日本政府の動きや、米国発のインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)の動向など、最新情報を紹介した。

 本稿では、経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室 室長の正田聡氏の基調講演と、IICのSales Representative, Japanとして、日本での活動を取り仕切っている日本OMG代表理事の吉野晃生氏の特別講演の内容を中心にセミナーの内容を取り上げる。

データ活用が製造業の新たなビジネスモデルのカギへ

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経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室 室長の正田聡氏

 正田氏は「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)により、あらゆる産業において競争領域が変化している。データ収集、解析、処理というサイクルを通じ、データ活用がビジネスの大きな中核になる」と述べる。

 製造業において、これらの動きを象徴しているのがドイツ連邦政府が主導するインダストリー4.0の動きだ。ドイツは強い製造業における製造システムを標準化し、現場の製造装置や製造機械により得られるデータを蓄積・処理することで、工場を自律的に最適制御することを目指している。2011年から具体化をはじめたこのプロジェクトを元にドイツでは、多くの製造業や研究機関、業界団体が参加し、国を挙げて新たなモノづくりの高度化に向けて進んでいる。

 一方で、米国では大きく分けて2つの動きが生まれている。1つはGoogleなどシリコンバレーのICT企業を中心に、コンピューティングの力を現実世界に持ち込もうという動きである。こちらはICTをあくまでもベースとして考えていることが特徴だ。もう1つが、GEを中心に、IBMやインテル、AT&T、シスコの5社が創設メンバーとなったインダストリアルインターネットコンソーシアムの動きだ。こちらは、インダストリー4.0の動きと非常に近いが、工場や製造業に限らず、より広い領域におけるIoTの社会実装を目指していることが特徴となる。

ITの力が弱い日本企業

 こうした産業環境の変化がある中で、日本の製造業の動きをどう見ているのだろうか。正田氏は「日本の経営者は、欧米など世界の経営者に比べ、IoTやビッグデータなどを活用して新たな収益源を生み出そうという意識が低い」と警鐘を鳴らす。

 アクセンチュアの調査資料によると、海外の経営者は産業用IoTを「新たな収益源」と57%が捉えているのに対し、日本の経営者は32%と低い。また、各国のIT技術者数を見た場合、日本のIT技術者数は米国はもちろん、中国やインドよりもはるかに少ない他、IT技術者の分布についても、ITサービス業に大きく偏っており、ユーザー企業のIT利活用力が弱いということが分かる。正田氏は「特にICTを活用した新たな価値創造への意識が少ない」と指摘する。

 ただ、これらの状況を放置していれば、国際標準化の舞台などを含めて米独を中心とした枠組み作りが進み、日本の製造業は劣勢に立たされることになる。特にドイツはインダストリー4.0のプロジェクト発足時から標準化を見据えた取り組みを進めており、IEC(国際電気標準会議)やISO(国際標準化機構)への提案を進めており、現在もインダストリー4.0/スマートマニュファクチャリングとしたワーキンググループでの活動が進んでいるところだ。

 正田氏は「国際標準化の舞台で日本の立場を発信することに加えて、ビジネスモデル変革が進むような制度整備や環境整備を行っている」と日本における取り組みについて述べる。

 具体的には日本の強みや弱みを明らかにし、世界に向けて発信できるような日本国内の話し合いの場を発足。2015年5月に発足したロボット革命イニシアティブ協議会の中でワーキンググループ(WG)「IoTによる製造ビジネス変革WG」を設置し、ここを窓口に日本の中での企業間連携や、ドイツ連邦政府との協力などを推進する。また、2015年10月に経済産業省と総務省の連携で発足した「IoT推進コンソーシアム」とも連携を進め、先進的にIoTに取り組む企業を支援している動きなども説明した。

 さらに、2015年10月から開催されている首相と民間企業の有識者による「未来投資に向けた官民対話」や2016年春に公開される「新産業構造ビジョン」にも、これらのIoTによる製造業の変革を盛り込み、支援を進めていく方針を示す。

 正田氏は「ドイツ連邦政府との幹部レベルとの協力体制なども構築しつつあり、2016年4月のハノーバーメッセやサミットなどでも協力を進めていく。政府としての支援も形になるのはまだまだこれからになるが、積極的に取り組みを進めていく方針だ」と支援を強化する姿勢を示している。

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