モノづくり“だけ”ではダメ、日本政府が推進する「ものづくり“+”」の意味:IVI公開シンポジウム2016秋(3)(1/2 ページ)
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」が取り組みの進捗状況を紹介するIVI公開シンポジウムを開催。本連載では、同シンポジウムの内容を紹介する。第3回は日本政府における製造業の第4次産業革命への取り組み支援について、経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室長の徳増伸二氏の講演内容をお伝えする。
2015年に6月に活動を本格化させた「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、さまざまな活動を本格化。2016年10月13日に開催した「IVI公開シンポジウム2016秋」では、これまでの活動内容とこれからの活動方針について紹介した。IVIの2016年度の取り組みについて紹介した第1回、インダストリー4.0についての疑問点を説明した第2回に続き、今回は日本政府における製造業の第4次産業革命への取り組み支援について、経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室長の徳増伸二氏の講演内容をお伝えする。
日本政府が考えるモノづくりにおける危機感
経済産業省では、毎年モノづくりに関する動向をまとめる「ものづくり白書」を発行しているが、ここ数年は「第4次産業革命」に関する製造業の取り組みや危機感について積極的に取り上げている。2016年度の「ものづくり白書」については「ものづくり+(プラス)企業」の価値について訴求している。
これらを訴える背景には、日本の製造業の今後の発展に対する危機感があるという。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)により実社会のあらゆる情報がデータ化されネットワークを通じて自由にやりとり可能となってきた他、ビッグデータ分析技術などにより集まった大量のデータを分析し価値を生む形で利用可能となっている。さらにこうした仕組みについても機械が自ら学習し高度な判断を行うことができる他、これらの結果を物理的に反映させることができるロボット技術なども進展してきている。こうした技術的なブレイクスルーにより、実現不可能と思われてきた産業構造や就業構造に対する劇的な変化が起こる可能性が生まれてきている。これが「第4次産業革命」だ。
こうした流れは具体的には、個々のニーズに合わせたカスタマイズ生産やサービスを実現する「マスカスタマイゼーション」の動きや、一般車を利用したタクシー配車サービス「Uber」や民間住宅を利用した宿泊サービス「Airbnb」など眠っている資産をコストゼロでマッチングするサービスの登場、人間の役割や認識、学習機能のサポートや代替など、さまざまな価値を生み出してきている。
徳増氏は「第4次産業革命の技術は全ての産業における革新のための共通の基盤技術となり得る。それぞれの産業や分野における技術革新やビジネスモデルと結び付くことで、全く新たなニーズを満たすような製品やサービスが生まれる可能性がある」と既存産業においても変化を求められている点について警鐘を鳴らしている。
第4次産業革命が製造業に求める変化
第4次産業革命で、製造業の設計、開発、生産工程には、それぞれの工程におけるシステムや情報の統合が必要だとされている。徳増氏は「日本企業は工程内のデジタル化は世界でも進んでいるが、工程間の連携は不十分だといえる」と考えを述べる。
これらの動きに対し、海外企業はグローバル企業を中心にさまざまな取り組みを進めているところである。特に顕著なものが、ドイツのインダストリー4.0や米国のGEの取り組みなど、製造業の動きを中心に「リアルからネットへ」を志向する動きと、米国のGoogleやAmazon.comなどのインターネット企業が志向する「ネットからリアルへ」の動きである。徳増氏は「新たな技術革新によりリアルとネットの境界線が曖昧になってきており、それぞれが進出し合うような状況になってきている」と述べる。
製造業領域に関連するこうした海外プレーヤーの動きについて徳増氏は「製造現場やハードウェアを主軸とした製造業が得意とした領域と、IT企業が得意としたIT基盤やソフトウェアの領域の間にある、ソリューション層に価値が集中する状況が生まれてきている。このソリューション層のポジション確保に向けてせめぎ合いが起きている」と分析している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.