インダストリー4.0における“世界の軸”へ、日独連携の潜在力:インダストリー4.0/IoT協力(2)(3/3 ページ)
CPS/IoT展「CEATEC JAPAN 2016」で開催された「日独シンポジウム―インダストリー4.0/IoT協力」。同セミナーの様子を紹介する本連載だが、2回目は2016年4月に発表された日独連携のその後の進捗状況について紹介する。
IoTの事例を地図で公開
「ユースケース創出と利用AG」では、新たに「オンラインマッピング」を公開。IoTは実証を進めない限りは新たな価値創出は行えない。そのため事例が重視されているが、日本においてはそれほど多くの事例が公開されているわけではなかった。一方でドイツでは、フランスと協力し、両国で合わせて400社の事例がオンライン地図上で表示され、実際に見ることができるようになっているという。同様の取り組みを国内でも開始。ベータ版を2016年10月5日に公開し、約30社の事例を紹介しているという。糟谷氏は「取り組みの成果を見える化し、ベストプラクティスを共有できる環境を作る」と述べている。
国際社会を巻き込み新たな秩序形成へ
一方、ドイツの経済エネルギー省 産業政策局長 ウォルフガング・シェレメート氏はドイツが推進する、このインダストリー4.0の取り組みをより広く国際社会に浸透させる意義について強調する。
シェレメート氏は「日本とドイツの2カ国にとっても標準化はとても重要だ。ドイツでは既にインダストリー4.0においてリファレンスアーキテクチャとなる『Reference Architecture Model Industrie 4.0(RAMI4.0)』を公開※)しており、このアーキテクチャを活用することで、関連する企業が新たな枠組み作りを進めるのに、負担を軽減できる。RAMI4.0をベースに標準化を進めていくことを提案していく」と述べている。
※)関連記事:インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開
さらに、シェレメート氏は一部先進国以外にも同様の枠組みを広げていく重要性について語る。「既にドイツではインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)とも標準化で連携を進めていく覚書を締結している。中国とも同様の議論を進めていく。標準化など根幹になる取り組みについては早期に国際的に共有していくことが何よりも重要だ。G20の枠組みも生かしてインダストリー4.0についての国際協力を実現していきたい」と述べている。
実は、2017年のG20の開催国はドイツであり、ドイツとしてはこのG20を生かして一気に国際的な枠組み作りを押し進めたい狙いがある。既にドイツでは、日本の他にもIICとの連携や中国との協力など、主要国や団体との協力関係構築を積極的に推し進めており、G7の枠組みについてはほぼ協力関係が生まれてきた状況だといえる。こうした中で新興国も含めた国際的なIoT活用の枠組み作りを進め、その中心を確保したい考えである。
一方で、日本としても2016年4月の共同声明以降、ドイツとの協力関係強化が進んでいる。さらに2016年10月3日には、IICとIoT推進コンソーシアムの連携なども発表※)している。2017年3月のCeBITでの首脳会談を含め、ドイツとの関係を軸に、国際社会での主導権を維持できるポジションを確保したい考えである。日独を軸としたIoTにおける世界の動向は、2017年にかけてもまだまだ目が離せない状況が続くといえる。
※)関連記事:日本を第4次産業革命の中心地へ、設立1年となるIoT推進コンソーシアムの現在地
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