インダストリー4.0実現に向け土台となる政府のデジタル政策:インダストリー4.0/IoT協力(1)(1/2 ページ)
CPS/IoT展「CEATEC JAPAN 2016」(千葉市、幕張メッセ、会期:2016年10月4〜7日)では、2016年10月5日にインダストリー4.0における日独協力の進捗状況を紹介する「日独シンポジウム―インダストリー4.0/IoT協力」が開催された。本稿では、同セミナーの内容を3回に分けてお送りする。
「CEATEC JAPAN 2016」(千葉市、幕張メッセ、会期:2016年10月4〜7日)は2016年から、従来のデジタル家電などを中心としたB2C要素の強い展示会から、CPS(サイバーフィジカルシステム)とIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を押し出したB2Bの展示会へと生まれ変わった。
CPSやIoTで描く世界を実現するには、国際協力が欠かせないが、その中で特に製造業に関わる領域で、積極的な連携を進めているのが日本政府とドイツ連邦政府である。両国政府では2016年4月に、IoTおよびインダストリー4.0に関し連携を進めていく覚書(MOU)を締結。6項目において協力を進めていく方針を示している※)。
※)関連記事:IoTで日独連携が成立、6項目で覚書締結へ
「CEATEC JAPAN 2016」では、2016年10月5日にこうした動きの進捗状況を紹介する「日独シンポジウム―インダストリー4.0/IoT協力」が開催された。本稿では、同セミナーの内容を3回に分けてお伝えする。第1回では、IoTおよびインダストリー4.0の動きを生み出した日本とドイツの政府によるデジタル政策の考え方について紹介する。
日本におけるデジタル政策の考え方
インダストリー4.0などを含むIoTによるビジネス変革の動きは、製造業に限った話ではなく、あらゆる産業で起きている。多くのセンサーが高性能で低価格化し、データ取得が容易になった。さらに通信環境の進化により、簡単にそれらのデータを集められるようになった。こうしたデータを人工知能(AI)関連技術を使い、ビッグデータ分析を行うことにより、従来得られなかった知見や付加価値を生み出し、それを実世界にフィードバックする。このサイクルが全ての産業で起こり、従来のモノを中心としたビジネスから、データを中心としたビジネスへと、産業構造の革新の流れが巻き起こっている。
変革の動きが広がる中、政府としても産業のIoT活用をどう支援していくのかという点が大きく問われるようになってきている。このような流れに対し、日本政府は2016年4月に「新産業構造ビジョン」の中間とりまとめを行い、第4次産業革命に対するビジョンを示した。2015年10月に設立したIoT推進コンソーシアム(ITAC)や、2015年5月に設立したロボット革命イニシアティブ協議会、産業技術総合研究所などと協力し「ビジョンを現実のものにする取り組みを進めている」と経済産業省 大臣官房審議官(IT戦略担当)の竹内芳明氏は述べている。
こうした枠組みにより既にIoTの産業活用の動きは広がりつつあるが「『新産業構造ビジョン』は中間とりまとめであり、具体的な戦略を作り、正式版を2017年春までに公開する」と竹内氏は述べている。
IoT推進コンソーシアムについては、現在は2400の企業および団体が参加。IoTの活用を実現する社会実装と技術開発の場として、さまざまな活動を進めている。その中の「IoT推進ラボ」では、IoTプロジェクト選考会議による選考を受けた先進プロジェクトを「IoT Lab Selection」、テストベッドによる実証を「IoT Lab Demonstration」、ビジネスマッチングを「IoT Lab Connection」と位置付け、それぞれの活動を推進している。
※)関連記事:日本を第4次産業革命の中心地へ、設立1年となるIoT推進コンソーシアムの現在地
さらに「ビジョンを現実にするときに必要になるのは、データの自由な流通をどのような枠組みで確保していくのかということだ。グローバルでデータの流通を確保する枠組み作りが必要になる。既にEUや米国とはこうした枠組み作りを進めているが、今後世界に対してどういう取り組みをしていくのかが重要である」と竹内氏は述べている。
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