インダストリー4.0で具体化した日独連携、競合を越えた「つながる」の価値(前編):ハノーバーメッセ2016(1/3 ページ)
ハノーバーメッセ2016において第10回となる日独経済フォーラムが開催された。テーマは「実践の場におけるインダストリー4.0」とされ、会期中に発表された日独政府の連携なども含めて、日独の協力体制や土台作りに注目が集まった。
ハノーバーメッセ2016(2016年4月25〜29日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において2016年4月27日、第10回となる「日独経済フォーラム」が開催された。日独経済フォーラムでは毎年両国が関係するさまざまな経済トピックを取り上げているが、今回は前回に引き続き「インダストリー4.0」を中心に日独の政府および企業関係者が取り組みを紹介した。
ドイツ連邦政府が主導するモノづくり革新プロジェクトである「インダストリー4.0」は日本の製造業にとっても大きな関心を持つテーマだが、今回の日独経済フォーラムでは、テーマを「実践の場におけるインダストリー4.0」とし、具体化が進むインダストリー4.0の動向と日独の政府や企業間の連携に注目が集まった。本稿では2回にわたり同フォーラムの内容をお伝えする。今回は日独政府の連携とそれぞれの課題認識について紹介する。
日独で協力する“土台”がついに成立
インダストリー4.0は、ドイツ連邦政府が主導して進めるモノづくりの革新プロジェクトだ※)。2011年のハノーバーメッセで発表され動きが本格的なものになった。同プロジェクトで目指すのは、大量生産と同様の効率でカスタム製品を作ることができるマスカスタマイゼーションが可能なスマートファクトリーの実現だ。そのためには生産を行う機械が、人間の指示によるものではなく、自律的に作業を行えるようにならなければならない。そのカギを握るのがIoTなどICTの力で、実現する形としてサイバーフィジカルシステム(CPS)が必須のものになるといわれている。
※)関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】
これらを実現するには「つながる」ということが必要になる。この「つながる」には主に2つの意味がある。1つは通信面を示しIoT(Internet of Things、モノのインターネット)などを通じてデータを流通させる仕組み作りが必要だという意味だ。もう1つが、企業間や国家間の壁を越えるということだ。どんな大きな企業でも、どんなに優れた企業が集まる国でも1企業、1カ国でインダストリー4.0で描く世界を実現することは不可能である。そのため、自社が強みとする部分とそれ以外の領域を切り分けて、企業や国の枠組みを越えて協力していくということが必要になる。
ハノーバーメッセでは毎年パートナーカントリーを定め、その国の企業の誘致し国家間の経済連携などを確認し合う取り組みが行われているが、今回のパートナーカントリーは米国だった。そのため米国企業が中心となって推進しているインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)とインダストリー4.0の連携を訴える動きなどが会場では多く出展されていた。こうした動きに支配された中で、日独経済フォーラムの場であらためて日独連携の枠組みを示すことができた点は価値があるといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.