5%で価値を生む:「製造マネジメント」ランキング
MONOist 製造マネジメントフォーラムでアクセスが多かった記事を紹介します。今回の集計対象期間は、2012年6月1〜15日です。
今回のランキング第1位は「ソニーの“プロ機”が日本人にしか作れない理由」でした。筆者である小寺信良氏が、多能工を必要とする「デジタル屋台」式のモノづくりの現場を直接取材して執筆した記事です。
IT技術を駆使したカイゼンの積み重ねと、現場の創意工夫によって支えられて作られる“プロ機”のできるまでを追いかけています。第10位にランクインした「思い描いた『コンセントの未来』、ソニー発の強力な技術を使いこなせるか」と併せて読んでいただきたい記事です。国内生産ならではの価値追求という意味では、日本HPを取材した「日本HPが東京生産する必然性」にもぜひ注目してください。こちらの記事では国内生産だからこそ実現する価値を追求し、市場価値を高める日本HPの取り組みを紹介しています。国内生産の優位性を極限まで引き出すための、部品メーカーを巻き込んださまざまな工夫が見られます。
製造マネジメント Access Top10
ランキング第3位は「CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は?」でした。
製造技術の革新が進んだこともあり、今後は高級車種だけでなく、普及車向けの部品素材としても注目されているCFRPの分野は、日本企業が圧倒的に強い状況です。第9位にランクインした後編「CFRPリサイクル技術の進展、そして次への展開を推察する!」と併せて読むと、各社とも、普及した「後」のことも考慮した研究・開発を進めていることが分かります。
「鍛え上げられた家庭用蓄電システム、価格だけではないNECの工夫」も、同様に実際の利用シーンに即した機能改良を詳述しています。利用シーンを想定した電源切り替えや給電設定、薄型化と排熱効率の改良などは、決して過剰品質の作りこみではなく、ユーザーニーズをとらえたものだといえるでしょう。
こうした分野での日本企業の技術力・功績には目を見張るものがあります。
前回のランキングでは、品質工学という分野を開拓した田口博士の功績に注目しました。その1つに、市場品質を基準にモノを設計していくという視点を明確にしたことにあります。
こうした記事を読んだ上で、あらためてランキング1位の記事を読むとどうでしょうか。日本的なモノの作り方が、過剰品質などという批判もありますが、一方で日本的だからこそ実現できるモノづくりというものが、歴然としてあることが分かるのではないかと思います。
過去の記事で、一橋大学 イノベーション研究センター 延岡 健太郎教授は、「残り5%で勝負せよ」と語っておられました。
あらゆる技術はコモディティ化をまぬがれないが、95%がコモディティ化したとしても最後の5%は擦り合わせ開発による価値づくりに依存するとし、「あと100万円高くても買う、という人たちを引き付けるには、残り5%の擦り合わせ開発が絶対的に必要」「この5%の部分の擦り合わせについては、日本は決して引けをとらない力を発揮できるはず」というのが、延岡教授の見解です。
延岡教授によれば、日本の強みは擦り合わせ開発にあるが、それもモジュール化・標準化が95%達成できていることが大前提だといいます。単なる旧態依然としたモノづくり慣習への憧憬としての日本型モノづくり礼賛ではなく、正しく効率化されたモノづくり基盤の上に、プラスアルファの価値を生み出すものとしての「残り5%」であることは忘れてはならない点です。
連載「ものづくり最前線レポート」では、生産現場の改善手法から最新の企業研究や事例などを適宜紹介していますので、ぜひご覧ください。
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