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田口博士を追悼するつぶやきからタグチメソッドを読み返す「製造マネジメント」ランキング

MONOist 製造マネジメントフォーラムでアクセスが多かった記事を紹介します。今回の集計対象期間は、2012年5月16〜31日です。

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 今回のランキングでは、前回紹介した5月上半期の人気記事ランキングが人気という不思議な状況です。そこで、今回はTop 5以下の記事に着目していきましょう。

 今回はどうしても第9位にランクインした「本当の「タグチメソッド」を誤解していませんか?」を読んでいただきたいという意図もあります。というのも、このランキングを集計しているさなかの2012年6月2日、タグチメソッドで知られる田口玄一博士が逝去されたという訃報が届いたからです。



 田口博士は、九州大学で理学博士号を取得、その後、統計数理研究所や、日本電信電話公社電気通信研究所(当時)、インド統計学研究所、米プリンストン大学を経て、青山学院大学でも教壇に立たれています。

 日本電信電話公社電気通信研究所に所属していた頃に、R・A・フィッシャーが提唱した実験計画法を活用した品質管理の手法を編み出し、モノづくりにおける品質の在り方を大きく変えました。この功績を基に1960年にはデミング賞を受賞、その後も、日本規格協会参与、品質工学会名誉会長などを歴任されました。

 田口博士の功績は日本国内にとどまらず、フォード・モーターなどへの品質指導の功績により、米国では1997年に「自動車殿堂」に名を連ねています。

MONOistの連載から

 タグチメソッドについては、MONOistでも連載「本質から分かるタグチメソッド」で、長谷部光雄氏に分かりやすくその思想を解説いただいています。

 この連載の中で、長谷部氏は次のように語っています。

 消費者の立場に立った理想状態を追求するというTQMの考え方が、そのままタグチメソッドの特徴です。タグチメソッドとは、TQMの考え方を具現化する手段を提供しているのです。

 品質工学とも呼ばれるタグチメソッドは、ときとして品質管理と混同されることがあります。しかし、品質管理と決定的に異なるのは、そもそもの評価軸が顧客視点である、という点です。

 田口博士は品質を機能バラツキによる損失として評価し、理想機能からの機能バラツキの問題とする考え方を提唱しました。製品開発の前段で、顧客のニーズに対してロバストな技術を確立すべきであると唱えました。

 この方法論の適用範囲は広範です。特に製品企画・マーケティング、設計段階での評価が重要です。

 このあたりは筆者の理解よりも、本稿末に引用した田口博士の言葉を直接ご覧いただいた方がよいでしょう。

 実験計画法については連載「Excelで学ぶ実験計画法の基礎」で紹介しています。

 連載では、手軽に手を動かしながら読み進められるよう、一般的な表計算ソフトウェア(Excel)を使って、実験計画法の考え方とそれを応用した品質管理の方法を手順を追って紹介しています。この連載では純粋に実験計画法を軸とした解説を進めています。その際、対象は生産現場の品質としています。この点で、実はタグチメソッドが提唱した設計段階からのロバスト性を求めるような技術の評価は対象になっていません。しかし、統計・評価手法のベースは実験計画法ですから、上記のタグチメソッドについての連載と併せて、評価手法を学ぶためにも読んでみるとよいでしょう。

 また、設計者にとってのタグチメソッドの思想をより詳しく解説した記事として「品質を定量評価し、設計に生かす:「品質工学」のススメ」が「EDN Japan」に掲載されています。こちらは技術者に向けて、分かりやすい例を示しながら解説していますので、ぜひ通読してみてください。

「追悼まとめ」で惜しむ声

 オンライン上でも、田口博士の功績をしのぶ動きがありました。Twitter上の発言を編集してまとめるサービス「Togetter」では、Twitter ID:Flower_island氏が「品質工学と田口玄一博士」と題して、一連のTweetをまとめています。

 中でも、田口博士の名言をピックアップしたTweetは、あらためてタグチメソッドや市場品質とは何かについて考えさせられる内容だったので、ここで一部を抜粋しておきましょう*。

* 本稿の執筆に当たり、Twitter ID:Flower_island氏にご発言の引用許諾を得ました。ご快諾いただけたことをここに感謝いたします。


品質工学の名言1 品質が欲しければ、品質を測るな! これは、技術開発をするときに品質を測っても、品質の改善はできないヨと言っています。品質を作り出す働きとなる「機能」を見極めて、その機能を測って改善しないと、品質が良くならないということを指摘しています。

品質工学の名言2 ノイズと信号はユーザーの条件。技術開発段階でユーザーの条件で技術評価を行えということです。ユーザーが使うときに良い品質であるためには、ユーザーの使用条件で機能がばらつかないよう評価しなければ品質の善しあしが分からないでしょうということなのです。

品質工学の名言3 ロバスト設計とは、バラツキ原因をばらつかせたまま、機能を安定させることである。

品質工学の名言4 早く失敗しろ! 早く失敗すれば、早く成功する。往々にして、技術者は自分の考えにしがみついてしまいがち。品質工学の直交表実験は、一因子実験より失敗しやすい。でもそこが大切です。技術は妥協を許さないもん。

品質工学の名言5 成功する実験は意味がない! 田口玄一博士は成功するなら実験するだけ無駄だだと考えていました。それは、技術開発する課題がないことが分かるだけなのでそれなら意味はないのです。失敗して、そこから新しい答えを見つけることで、初めて技術が進歩するからです。

品質工学の名言6 原因を研究してはならない! 田口玄一博士は技術を不安定にするあらゆる原因に負けないように技術改善をすることがロバスト設計であるといっていました。つまり、いちいち原因を究明して、それに対策すること自体が無駄なのです。


 名言6については、長谷部氏も「タグチメソッドにおける「未然防止」への戦略って?」の中で、こう言及しています。

タグチメソッドの基本思想を理解するには、少しコツが必要です。単にツールとしての手順を覚えるのでなく、なぜそうしなければならないかを理解しないと、タグチメソッドの本質を見失ってしまうからです。

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 本稿から、田口博士がモノづくりの考え方に与えた影響、その恩恵について、あらためて見つめなおす機会としていただけると幸いです。



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