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今後どうなる!? 日本の有機EL技術〔後編〕どうなるコダック? ソニー vs. シャープの開発競争は?知財コンサルタントが教える業界事情(8)(1/3 ページ)

中編で見た韓国企業の有機ELディスプレイ関連の知財戦略のしたたかさに対して、欧米・日本企業はどんな作戦を立てているのだろうか。知財データベースから業界事情を推察する。

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 「前編」では、有機EL技術を開発したコダック*と、それを追撃した日本の有機EL材料メーカーや電機系企業の動向に注目し、「中編」では海外企業(日本企業も含む)との共同開発や合弁を事業化につなげた韓国企業のしたたかな特許戦略に注目してみました。

 「後編」では、照明事業開発にかじを切った欧米企業と日本企業の動向に、それぞれ焦点を当ててみたいと思います。

*イーストマン・コダックおよびそのグループ企業を含む。以降、本稿で登場する企業名は特に断りがない限り、原則としてグループ企業を含む。


“有機EL照明”へのシフトを進める欧米日の各企業

 コダックの積層機能分離型有機EL(1987年:Tang氏ら*)が学会発表されてから、各社の事業開発競争が始まったわけですが、当初有機ELに取り組んだ米欧日の各国企業は技術開発投資力を失い、ディスプレイを目指した米欧日の企業は2000年代半ばまでに順次撤退しました。このとき、有機EL技術開発に踏みとどまることにした米欧日の企業は有機EL照明事業開発に目を転じ、有機EL材料を手掛けてきた日本の材料メーカーも、有機EL照明事業への参入を模索し始めました。

 このかじ切りはコニカミノルタの例が分かりやすいでしょう。コニカミノルタは2007年3月から2011年3月まで、塗布型有機EL照明を狙ってGeneral Electronic(以降、GE)と組んでいます。この取り組み中に塗布型では事業化は当面無理と判断して、蒸着型を採用するフィリップスと組むことを決めています。結果、2011年4月にはフィリップスへの量産委託を発表しています。

 照明業界のビッグ3は、米国のGE、オランダのフィリップス、そしてドイツのオスラム(シーメンスの100%子会社)で、これら3社が際立った存在です。欧州企業であるフィリップスとオスラムはLED照明を先行させており、有機EL照明は実用化への試行段階に入ったと捉えることができます。

 一方、有機ELディスプレイから日本の電機系企業(NEC、三洋電機、ソニー)*が事実上撤退した後に、有機EL事業に参入した日本企業は面光源である有機EL照明の可能性を提示している段階といえます。

*Tang, C. W.; VanSlyke, S. A., Organic electroluminescent diodes, Applied Physics Letters (1987), 51(12), 913-15. 中編参照。


市場規模は光源<照明

 ここで忘れてはならないことは、照明機器市場の規模は照明用光源(有機EL照明では、有機ELパネルに相当)そのもの市場規模の3倍くらいあり、ブランドも照明事業の重要な要素になっていることです。従って、照明ブランド名(VELVE、ヴェルヴ)を手に入れ、LED照明から参入して海外市場での足場を築きつつある三菱化学(および関連子会社)、既存の照明事業展開の中に組み込むであろうNECライティング(ブランド名:LIFEEL、ライフィール)、さらには住宅向け市場で著名な「パナソニック」ブランドで切り込みを開始したパナソニック出光OLED照明が事業開発では先行していると推測されます。

 そして、山田照明やコイズミ照明といった照明機器メーカーが、有機EL照明をどのように位置付けて事業開発を進めるか、今後の動向が注目されます。

参入障壁の高さはディスプレイ>照明

 もう1つ忘れてならないことは、システムや最終製品までに取り組もうとするときに直面する特許係争問題です。有機ELディスプレイは液晶ディスプレイと同様なアクティブマトリクス駆動を採用していることもあり、以前から液晶ディスプレイを手掛けてきた企業との画像処理関連技術での特許係争は避けられない宿命にあります。それに対して、有機EL照明とLED照明の関係は共に、ルミネッセンス光源ですから、避けて通れない特許の発見はあるかもしれませんが、有機EL照明は面状に積層された有機物であり、LED照明は半導体チップの配置や光拡散の工夫ですから、制御方法や照明機器化に本質的な相違点があって当然だと思います。

 つまり、有機EL照明パネルへの参入障壁は比較的小さいでしょうが、有機EL照明事業開発競争(ブランドやビジネスモデルの構築まで含む)そのものはとても厳しいものになるでしょう

 有機EL照明の事業化を目指し、有機EL材料開発から取り組んでいる日本企業のうち、低分子型有機EL材料を採用している企業には、2008年5月に設立されたルミオテック(三菱重工業、ローム、凸版印刷、三井物産および城戸淳二山形大教授が出資)や2010年2月にパイオニアと組んだ三菱化学(当初は下層を塗布法で、上層は蒸着法での製造を想定)があります。高分子型有機EL材料を採用している日本企業には、塗布型を目指して、2007年7月にCDT(Cambridge Display Technology)を買収した住友化学があります。

 さらには、2010年9月に倒産した東北デバイスの事業を買収して、有機EL照明パネル製造の早期立ち上げを図ったカネカや、出光興産と合弁事業を開始したパナソニック(2011年4月にパナソニック出光OLED照明を設立、同9月に有機EL照明パネルを国内外の照明機器メーカー向けにサンプル出荷を開始)は、同12月から有機EL照明モジュール(制御回路内蔵)を発売すると公表しています*。

 しかも、パナソニックは三洋電機・パナソニック電工を既に事業統合化しており、日本市場では住宅用総合機器メーカー(太陽電池/蓄電池/照明/ディスプレイ/家電/ホームネットワーク……)を指向しており、今後の動向が注目されます。

図1
図1 照明メーカー・ビッグ3と日本企業

 それでは、欧米企業と日本企業の有機ELディスプレイから有機EL照明への転進ぶりを眺めてみましょう。


*2011年8月31日付けのプレスリリース「有機EL照明デバイス事業をグローバルに展開」を参照。



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