近年、「自動車はロボットである」と位置付ける企業が現れ始めている。その背景には、従来の自動車観と異なる新たな発想の転換がある。その代表例が、中国新興自動車メーカーのXpengが提唱する「Car-as-a-Robot」という概念だ。今回は、このような潮流を前にして、自動車とロボットの関係性を整理するとともに、将来的な影響を考えてみたい。
近年、「自動車はロボットである」と位置付ける企業が現れ始めている。なぜ今、自動車を、移動手段ではなくロボットとして再定義しようとしているのであろうか。その背景には、従来の自動車観とは異なる新たな発想の転換がある。その代表例が、中国の新興自動車メーカーXpengが提唱する「Car-as-a-Robot」という概念である。
これまで自動車とロボットは、それぞれ異なる産業や技術領域に属する独立した存在として位置付けられてきた。しかし近年では、自動車がロボット技術を取り込むだけでなく、自動車そのものをロボットの一形態として捉える発想の転換が起きている。
では、なぜこうした再定義が進んでいるのだろうか。また、この考え方は自動車産業にどのような変化をもたらすのだろうか。今回は「Car-as-a-Robot」を起点として、自動車とロボットの関係性を整理するとともに、産業的な影響を考えてみたい。
最初に、そもそも自動車とロボットに関係性があるのかという素朴な疑問がある。
従来、自動車はあくまで人間が運転する移動手段であり、ロボットとは全く異なるものとして認識されてきた。そのため、「自動車はロボットである」という近年の提唱に対して違和感を覚える人も少なくないだろう。
実際、これまでの自動車では、「認識、判断、操作」という運転に必要な一連の行為をドライバー自身が担ってきた。
一方、ロボットは一般的に「センサーによって外界を認識し、コンピュータによって判断し、アクチュエータによって行動するシステム」と定義される。産業用ロボットやヒューマノイドロボットなど用途や形態は異なるものの、その基本構造は共通している。
このように比較すると、自動車とロボットは「認識、判断、操作」という機能構造そのものは類似している。しかし従来の自動車では、その主体が人間であったのに対し、ロボットでは機械が担うという決定的な違いがある。このため自動車とロボットは別々の産業、別々の工学的領域として発展してきた。
さらに、自動車は認識、判断、操作以外にも、ロボットとは直接関係しない多くの要素によって構成されている。例えば、車体骨格やエアバッグなどの衝突安全部品、ヘッドライトやドアミラーといった外装部品、メーターやシートなどの内装部品は自動車固有の機能を担うものであり、必ずしもロボット技術とは結び付かない。このため、従来の視点に立てば、自動車はあくまで自動車であり、ロボットはロボットであるという考え方が自然であった。
しかし、AI(人工知能)の著しい進展により状況が変わりつつある。テスラ(Tesla)や中国の新興自動車メーカーを中心に、AIを活用した自動運転領域が著しく進展している。
例えば、自動運転に関しては、「自動運転1.0」といわれる、認識、判断、操作をルールベースのアルゴリズムに基づくソフトウェアで構築する段階から、「自動運転2.0」とも呼ばれるニューラルネットワークを活用したE2E(End to End)方式を採用するメーカーが増加してきた。さらに、最近では、E2Eの課題を克服しようとしたLBM(Large Behavior Model:大規模行動モデル)方式を採用するメーカーまで出現している。
そうなると、自動運転車に関する「認識、判断、操作」の行為内容は以下の通り変化する。
つまり、認識、判断、操作の主体は自動運転レベルによる違いはあるものの、次第に人間から車両側へと移行していく。自動車自身がAIにより認識、判断、操作を担うようになることで、ロボットの行為と近似してくるのである。このように、自動車とロボットの境界線が徐々に曖昧になってきている。
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