ブレードを使わず、レーザーを利用して加工する方法もあります。
レーザーダイシングには複数の加工法がありますが、代表的なものに、ウエハー表面へレーザーを集光し、切断ラインの材料を除去して溝を形成する方法があります。強いレーザー光によって材料を除去する加工は「アブレーション」と呼ばれます。
工具がウエハーに直接接触しないため、ブレードのような刃の摩耗はありません。また、加工条件や材料によっては、細い切断ラインを形成できます。
切断ラインを細くできれば、その分だけチップ同士の間隔を狭められます。同じ大きさのウエハーから取れるチップ数を増やせる可能性があるため、これは半導体製造では大きな意味を持ちます。
ただし、「非接触だからダメージがない」と考えるのは早計です。
レーザー加工では熱の影響を考える必要があります。条件によっては切断部周辺に熱影響が生じたり、除去された材料が周囲へ再付着したりすることがあります。出力を高くすれば加工速度を上げられる場合がありますが、その結果、熱影響が大きくなればチップ品質を損なうかもしれません。加工後には溝の幅や深さだけでなく、周辺の変色、再付着物、微細なクラックなども確認します。
速く加工できる条件と、良いチップを作れる条件は必ずしも同じではないのです。
ステルスダイシング※もレーザーを使いますが、先ほどの方法とは考え方が大きく異なります。
表面から材料を除去するのではなく、材料を透過するレーザー光をウエハー内部に集光し、「改質層」を形成します。その後、ウエハーを保持しているテープを広げるなどして力を加え、改質層を起点としてチップを分離します。分かりやすくいえば、ウエハー内部にあらかじめ「割れる道」を作っておく方法です。
レーザー照射時にウエハーを端から端まで削り取るわけではないため、表面で大量の削りくずを発生させません。また、切断ラインを狭くできる可能性があり、薄いチップや小さなチップなどで特徴を生かせる場合があります。
一方、焦点位置がずれれば、狙った深さに改質層を形成できません。改質状態が適切でなければ、分割が不安定になったり、チップ強度に影響したりする可能性があります。また、レーザー光が材料内部まで適切に届くことも適用条件の一つです。
そのため、表面から見える加工跡だけでなく、分割後の端面やチップ強度まで含めた評価が重要になります。
※ ステルスダイシングは浜松ホトニクスの登録商標です
ここまでの3方式とはさらに異なる考え方が、プラズマダイシングです。
プラズマダイシングでは、切断したい部分をあらかじめ露出させ、プラズマを利用したエッチングによってシリコンなどを除去し、チップを分離します。ブレードのように刃を押し当てるのでも、レーザーで切断線を1本ずつ加工していくのでもありません。
ブレードでは基本的に切断ラインを順番に加工します。これに対し、プラズマダイシングではウエハー上に形成された多数の切断ラインをエッチングによって処理できます。また、刃が接触しないため、機械的な切断力に起因するチッピングやクラックを抑えたい場合にも特徴を生かせます。
プラズマダイシングの特徴として、ダメージやチッピング、ダスト/パーティクルの低減、一括処理による生産性などが挙げられます。また、直線だけではない切断形状に対応できることも特徴の1つです。
ただし、プラズマを当てれば必要な場所だけが自動的に削れるわけではありません。
必要な部分だけをエッチングするためには、切断する部分と残す部分を分ける「マスク」が必要です。そのため、プラズマ処理の前に切断ライン部分を開口するパターニング工程を設ける方法があります。
東京精密とパナソニック コネクトが共同開発したプラズマダイシング向けシステムでは、マスク層を形成したシリコンウエハーにUVレーザーで切断位置をパターニングし、その後、プラズマダイシングを行う工程が公開されています。2018年に発表されたレーザーパターニング装置では、デバイス構造による条件付きながら最小15μm幅のパターニングが可能とされています。
つまりプラズマダイシングは、「プラズマ装置だけでウエハーを切る」と考えるより、前処理を含めた一連の工程として理解した方が分かりやすいでしょう。
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