スマート化した「ペグ」やIoT対応PLCも、ifLinkが成果物の展示会を開催：製造業IoT（1/2 ページ）

ifLinkオープンコミュニティは同団体を通じて生まれたIoTの成果物を展示する「ifLink 商品showcase」を開催した。

[池谷翼，MONOist]

　「誰もがカンタンにIoT（モノのインターネット）を使える世界」を目指すifLinkオープンコミュニティは2023年11月10日、ifLinkユーザーが開発したIoTの成果物を展示する「ifLink 商品showcase」をラゾーナ川崎東芝ビル（神奈川県川崎市）で開催した。なお、Web展示では同月30日まで成果物を展示している。

手軽にIoTシステムを構築可能

　ifLinkはユーザーが自由かつ簡単にIoTを活用できる環境づくりを目指して開発されたプラットフォームだ。モジュール化されたセンサーやボタンなどさまざまなIoTデバイスやWebサービスを、特定の条件下で起こる機能として指定する「IF-THEN」形式で組み合わせることで、さまざまなシーンに対応したIoTの仕組みが素早く実現できる。

　ifLinkオープンコミュニティは東芝と東芝デジタルソリューションズが2020年3月に設立した団体で、製造業の他、さまざまな業界から100以上の企業や教育機関が参加している。業界や企業の枠を超えて、さまざまなIoTデバイス／サービスの使い手、作り手の交流を図ることで、自律的なオープンイノベーションの場を提供することを目指す。

IoT開発の知見ない中で「大いに助けられた」

　今回のifLink 商品showcaseは、ifLinkのユーザーらが「人が使いたくなるIoTサービス」「組み合わせて使えるIoT部品」の具体的な事例を共有することを目的に開催した。またifLinkは現在、「会員の商用サービスやデバイスが増えてきた」（ifLinkオープンコミュニティの担当者）段階にあり、ビジネスマッチングや商用化、共創のための仲間づくりを促進するといった意味合いもある。

　展示会場では東芝テックや東芝インフラシステムズの他、デンソーウェーブやリコー、大阪ガスマーケティング、岩崎学園などさまざまな企業／教育機関がifLinkを活用した商品やサービス、プロトタイプなどを全29小間で展示した。参加者は合計で「320人を超えた」（同担当者）という、

　例えば、金型などのメーカーであるPUZZLCEはキャンプ場での盗難防止に役立つIoTデバイス「スマペグ」を展示した。日本刀を模した形状のペグ（ロープを地面に固定するもの）で、振動を検知するIoTセンサーを内蔵している。自身のキャンプギアや貴重品にワイヤーを結び付けておくと、万が一、持ち出された場合などに自動でスマートフォンにアラートが飛ぶ仕組みになっている。

スマペグの外観［クリックして拡大］

　PUZZLCE 代表取締役の小池恭平氏は「キャンプ領域でのIoTデバイスは当時まだ誰も出していなかったので、こうしたペグを作ろうと考えた。ただIoT開発、特にアプリケーション領域の知見が全くなかったので、ifLinkを活用することにした。正直、結果としてIoT開発自体がスムーズに進んだかというとそうでもない。ただ、どの基盤やセンサーを使えば良いのか、どうソフトウェア開発を進めればよいのかも分からない中で、ifLinkには大いに助けられた」と語った。

スマペグの使用イメージ［クリックして拡大］

　この他、東芝インフラシステムズはifLinkに対応した産業用コントローラー「type1 light」にIoT機能を持たせた仕組みをデモ展示した。生産設備が停止するなど異常が発生した場合に担当者のスマートフォンにアラートを送信する機能を手軽に実現できる。アラート通知の条件は温度など、さまざまなものを設定可能だ。反対に、スマートフォン上からボタンを押すことで設備の緊急停止や、ランプを点灯させるといった仕組みを作れる。

type1 lightとifLinkの連携イメージ。スマートフォン上に配置されたボタンからランプの点灯などを遠隔操作できる［クリックして拡大］

　東芝インフラシステムズは現在、同社のPLCをさまざまなアプリケーションと接続することで、クラウド上でエンジニアリングなどが行える環境作りを構想している。ifLinkへの対応もそうした施策の1つで、ユーザー自身がPLCに関するさまざまなアプリケーションを手軽に作れるようにすることを目指す。ifLinkとPLCなどを組み合わせたデモ展示は、産業用オートメーションなどの展示会「IIFES 2024」（2024年1月31日〜2月2日に開催予定）にも出展する予定だ。