日本マイクロソフトは、同社の統合型ローコード開発プラットフォーム「Microsoft Power Platform」の最新機能を説明するとともに、花王 和歌山工場の製造現場における活用事例を紹介した。
日本マイクロソフトは2022年10月20日、オンラインで会見を開き、同社の統合型ローコード開発プラットフォーム「Microsoft Power Platform(以下、Power Platform)」の最新機能を説明するとともに、花王 和歌山工場(和歌山県和歌山市)の製造現場における活用事例を紹介した。
製造業をはじめとするさまざまな産業で、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目的としたデジタル需要が高まっている。今後5年間に作成されるアプリの数は7.5億に達し、これは過去40年間の総数を超える。また、デジタル化の壁になっているのが非構造化データの分析であり85%以上の組織が苦労しているという調査結果も出ている。そして、現在のテクノロジーでは50%の業務しかデジタル化できないといわれている。日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション事業本部 本部長の野村圭太氏は「これらのデジタル需要を満たすには何より開発者が必要だが、2025年までに世界全体で400万人、日本国内でも43万人が不足するという報告もある」と語る。
統合型ローコード開発プラットフォームのPower Platformは、旺盛なデジタル需要に対する開発者数のギャップを埋めるソリューションである。これまでプログラミングを行ったことのない、例えば工場の現場担当者などが、プログラミング言語によるテキストコーディングをほぼ行うことなく、自身の業務課題をデジタル技術によって解決するアプリを開発することができる。これまでITシステムの開発者とはいえなかった人々を、市民開発者(Citizen Developer)に変える基盤となるのがPower Platformなのだ。もちろん、全てのデジタル需要をPower Platformだけで満たすことは難しいが、クラウド「Microsoft Azure(以下、Azure)」とPower Platformの組み合わせでITシステム管理者が対応できる範囲も広いので、Power Platformでは実現できないプロ開発者が必要な開発案件を削減することが可能だ。
また、Power Platformのうちアプリ開発に用いられる「Power Apps」が、企業のオフィススイートで広く採用されている「Microsoft 365」のユーザーであれば基本的に無償で利用できる点も高い評価を得られているポイントだろう。ダッシュボード作成ツールの「Power BI」も無償利用が可能であり、導入のハードルは低い。
さらに、米国マイクロソフト本社が2022年10月13〜14日に開催した年次イベント「Microsoft Ignite 2022」ではPower Platformの新機能も発表された。ビジネスWebサイトをローコードで開発できる「Power Pages」、Power Platformで開発したアプリのITシステム管理者による運用を大幅に削減するマネージド環境、自由形式文書などの非構造化ドキュメントの処理や日本語の手書きテキスト認識など機能が強化された「AI Builder」などがある。
野村氏はPower Platformのユーザー事例としてトヨタ自動車を挙げた。「2020年の利用開始からの約2年間で約7600人のアプリ開発者を育成し、月間アクティブ開発者数も全社員の3%に当たる3000人に上る。Power Platformのユーザー企業の中でも最多のレベルになっている」と強調する。また、パートナーエコシステムの拡大にも注力しており、無料のトレーニングサービスも多数用意するなど、Power Platformの事業拡大に向けた体制整備を進めているところだ。
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