スマート工場化が進む中、工場内でもさまざまな機器やロボットを高度なネットワークでつなぎ、それぞれの緊密な同期制御や、連携によるデータ活用の動きが広がっている。これらの製造現場の「つながり」を実現する産業用ネットワーク規格の1つがMECHATROLINKである。パートナーの拡大が進む中、IIFES2022ではエコシステムにより実現できる現場価値を訴求した。
IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)など先進デジタル技術を活用し、製造現場の革新を進めるスマート工場化の動きが広がりを見せている。その中で重要性が増しているのが、これらの緊密な連携やデータ活用などを高度化するオープンフィールドネットワークである。
製造現場で使用されるオープンフィールドネットワークの中で、ロボットやモーターなどのデバイスをつなぎ、製造装置や機械内のモーションを支えるネットワーク技術が、モーション制御ネットワーク「MECHATROLINK」だ。MECHATROLINKを推進するMECHATROLINK協会では、これらを支える新たな技術である「MECHATROLINK-4」と「Σ-LINK II」などの普及を推進。さらに、スマート工場化により工場内のあらゆる機械がつながり、緊密に情報を伝え合いながら連携する必要性が高まる中で、パートナーエコシステムにより「つながる世界」の拡大に取り組んでいる。
これらを示す場として、オートメーションと計測の先端技術総合展である「IIFES2022」でMECHATROLINK協会は、「オープンフィールドネットワークの進化で現場革新」をテーマに「MECHATROLINK-4」および「Σ-LINK II」などの先進規格を活用した最新のデモを出展。また、パートナーエコシステムにより、エニイワイヤ、NEC、システック、日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)、マイクロ・テクニカ、モベンシス、安川電機、横河電機のパートナー8社と共に、豊富なMECHATROLINK対応製品による「つながる世界の拡大」とこれらによって得られる製造現場革新の価値、開発環境の充実について訴求した。
それでは、実際にIIFES2022における出展内容を見ていこう。特に今回は新たな規格であるMECHATROLINK-4やΣ-LINK IIに対応する製品や関連デバイスが登場したことが特徴だ。
安川電機は、MECHATROLINK-4とΣ-LINK IIに対応したサーボドライブ「Σ-Xシリーズ」を紹介した。Σ-Xシリーズは、速度周波数応答を3.5kHzとし、サーボモーターの最高回転速度7000回転、26bitの高分解能エンコーダーを搭載するなど、高い動作性能や制御性能を実現している。加えて、データ活用の効率化を実現するさまざまな機能を搭載していることが特徴だ。センサーを接続することでセンサー情報をサーボドライブに集約できるΣ-LINK IIに対応し、上位の通信はMECHATROLINK-4に対応することで、装置内の省配線を両立できる。また、簡単なデータ処理の機能を持たせており、データをそのまま送るのではなく結果のみを収集することなども可能だ。ブース内のデモでもこれらの特徴を訴求。動作性能を示すとともに、データ活用を省配線で行えることを示した。「当社ではサーボモーターもセンサーの1つだと考え、これらで得られるデータ活用を行いやすい環境を提供していくつもりです。その中でMECHATROLINK-4とΣ-LINK IIは大きな役割を果たすと考えています」(安川電機 担当者)。
2021年11月にソフトサーボシステムズから社名変更をしたモベンシスは、世界で初めてMECHATROLINK-4のソフトマスターを開発し、これを搭載したモーションコントローラー「WMX3」を出展した。従来のMECHATROLINKではハードマスターのみだったが、MECHATROLINK-4ではソフトマスターにも対応しており、これにいち早く対応した。「WMX3」はPC1台で128軸を同時制御可能なソフトモーション製品で、主に半導体製造装置産業で多くの実績を残している。「産業用ネットワークのソフトウェアマスターに対するニーズは高まっています。今回のMECHATROLINK-4ソフトマスター搭載をきっかけに、市場拡大が狙えると期待しています。今後もMECHATROLINKの技術革新に積極的に対応しWMX3も随時アップデートを進めていきます」(モベンシス担当者)。
日本TIは、MECHATROLINK対応の各種デバイスを紹介。会場では、Sitaraプロセッサ「AMIC110」を使用したMECHATROLINK-III通信のデモを行った他、新製品であるSitaraマイコン「AM243x」の展示も行った。「AM243x」は1つの汎用マイコンでMECHATROLINK-IIIとMECHATROLINK-4、さらには各種産業通信プロトコルに対応可能で、複数の通信プロトコルに柔軟に対応することが求められる各種産業機器において、開発を容易にする。「TIのデバイスは、すでにTSNやギガビットイーサネットに対応しているため、今後MECHATROLINK-4がこれらの対応を本格的に進めれば、それに対応したソリューションを提供できます」(日本TI 担当者)。
システックはMECHATROLINK対応装置の開発を効率的に行える様に、各種デバイスに対応したコントローラーIP製品を訴求した。今回はTI製Sitaraプロセッサ「AM64x」に対応したIP(開発中)や、FPGA向けのIPを用いたMECHATROLINK-IIIの通信デモを出展した。「強みである高速通信制御技術を活用し、MECHATROLINK-IIIおよび、MECHATROLINK-4のFPGAやCPU向けのさまざまなデバイスに対応した製品を拡充し、今まで以上に顧客の課題解決に貢献していきたいと考えています」(システック担当者)としている。
これらの対応製品や対応デバイスが拡充される中で、より簡単にカメラやセンサー、モーターなどを連携する技術なども数多く紹介されている。
NECは、機器に接続するだけで有線LAN通信を高信頼・低遅延の無線通信に変換する「ExpEther無線コンバータ」を出展した。工場内では無線化へのニーズが高まっているものの信頼性の問題があったが、これらを解決する製品だ。会場では、生産現場のセルや装置を制御する安川電機のコントローラー「YRM-X」と、リアルタイムで現場のデータ収集や見える化、解析を行う安川電機のソフトウェア「YASKAWA Cockpit」を搭載したコンピュータ間を同製品で無線化するデモを披露した。「今後は、ExpEther無線の性能をより向上させ、MECHATROLINK-4を含めた無線化に向けた取り組みを進めていきます」(NEC 担当者)としている。
画像認識ソリューションを展開するマイクロ・テクニカは、フィールドネットワークに直接接続できるスマートカメラ「SimPrun-200」の製品コンセプトと機能仕様を紹介した。会場では、このスマートカメラとモーションコントローラーをMECHATROLINK-IIIケーブルで接続し、スマートカメラで撮像したワークの位置情報を取得後、ステージを動かすデモを行った。「MECHATROLINKの特徴であるリアルタイムでのデータ伝送、高速性やレスポンス性と、当社のビジョンシステムにより、産業用ロボットと組み合わせた位置決めやキャリブレーションによる生産性向上に貢献できると考えています」(マイクロ・テクニカ担当者)。
その他、今回はパネル展示のみだったが、横河電機はIT(情報技術)とOT(制御技術)の枠を超えてプログラム言語「Python」で機械学習ライブラリを用いて顧客課題に合わせたアプリケーション開発ができる産業用AIプラットフォーム「e-RT3 Plus」を紹介した。豊富なI/Oを備え、データ収集から解析、制御まで1台で実現でき、現場の装置と上位システムをシームレスにつなぎ、ITとOT、どちらの領域でもAIを活用したアプリケーション開発を可能とする。MECHATROLINKとの融合で、高速、高機能な次世代装置の構築を実現する。
同様にパネル展示を行った省配線メーカーであるエニイワイヤは「MECHATROLINK-III」対応の省配線ブリッジを紹介した。「つながる世界」の拡張でこれらを接続するケーブルそのものが増えているが、省配線ブリッジを活用することで、I/O用に別のネットワークを用意することなく、MECHATROLINK経由での情報収集を可能としている。
ここまで見てきたように、MECHATROLINKによりつながる世界はMECHATROLINK-4とΣ-LINK IIなどの新規格対応製品の拡充も進んだことで、さらに広がりを見せている。
MECHATROLINK協会 事務局代表 下畑宏伸氏は「コロナ禍により活動の制限を受ける部分はありましたが、その中でも着実に製品や関連技術の開発などは進んでいます。2022年はさらにこれを加速し、関連製品の市場投入によるつながる世界の拡充を進めていくとともに、これらの製品を組み込んだ最終製品が生まれるように提案を進めていきたいと考えています」と述べている。
スマート工場化の動きは着実に広がりを見せているが、現場データから価値を生み出すためには、現場作業の最先端から有益なデータを収集し活用していく必要がある。モーション制御領域からのデータ活用を進め、製造現場や装置開発に革新を起こすためには、幅広い領域をカバーするMECHATROLINKのエコシステム活用は1つの解決策になるかもしれない。
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提供:MECHATROLINK協会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月16日