特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
連載
» 2021年12月09日 10時00分 公開

冴えない工場セキュリティガイドラインの育てかた事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(4)(1/4 ページ)

社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命された、ABC化学薬品新卒6年目の青井葵。元工場長の変わり者、古井課長の手助けも得て、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」を推進していく本連載。今回は、ピンとこない工場セキュリティのガイドラインをどのように使いやすいものにしていくかを考える。

[佐々木弘志,MONOist]

 国内製造業で進む、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、クラウドなどを活用した「DXプロジェクト」。分かりやすい価値を生み出すDXに対して、取り組みが遅れがちなのがセキュリティ対策です。

 そこで本連載では、国内中堅化学薬品メーカーのABC化学薬品に勤める新卒6年目の青井葵を主人公に、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」について解説します。

⇒連載「事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門」バックナンバー

本連載の登場人物

青井葵(あおいあおい):ABC化学薬品のセキュリティ問合せ担当から会社全体のDXセキュリティのプロジェクトに大抜てきされた。新卒6年目。人当たりがよく、元気印の愛されキャラ。趣味は旅行、ラノベ・アニメ鑑賞。


古井静三(ふるいせいぞう):ABC化学薬品のセキュリティ担当課長、元工場長で現社長の黒川とは盟友関係。工場長時代に大病を患い2年ほど職場を離れたあと、趣味のPCの知識を生かして、数年前にセキュリティ部門の担当課長として職場復帰。いつもひょうひょうとしていてつかみづらい変わり者。趣味は無線、PC自作、釣り。


※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。

工場セキュリティのラッパー?

古井課長のアドバイスもあり、工場側メンバーとの関係もいい感じに深まってきた青井葵。しかし、実際に工場セキュリティを現場で実施してもらうためのガイドラインづくりで壁にぶち当たる……いや、泥沼にはまってしまった!

課長、工場DXセキュリティの件で、少しお時間いただいてもよいですか?


ああ、今日は天気もいいし、外線も静かだし、構いませんよ。その件は、確か課題の洗い出しが終わって、対策検討中でしたよね。


 先日の課長との相談のおかげで、工場セキュリティの課題整理と対策案は見えてきたものの、また新しい壁にぶつかってしまっていた。それにしても相談受けるのに、天気は関係ないでしょ。

ええ、今日は晴れていてラッキーでした。ちょうど工場の目標や活動に沿った形でのセキュリティ対策を検討していまして、個別の対策そのものには手応えあります。


ほぉ、例えばどんな対策を検討しているの?


「セキュリティ標語コンテスト」とか、「安全教育にセキュリティの章を追加」とか、特別に何かを増やすのではなく、今の工場の活動に溶け込むようにやっています。実際、生技の皆さんの受けもいいです。


さすがだねぇ。ちなみに、セキュリティ標語コンテストってどんな内容なの?


現場の作業員を対象にした賞金付きのコンテストです。これまでは5S目標をお題に標語コンテストをやっていたのですが、今回は、お題をセキュリティ縛りにしました。


ああ、「ミス発生 焦るな 騒ぐな 深呼吸」みたいなやつね。確かに昔からやっているね。


この取り組みは、生技の方から頂いた案です。もう早速実施してみたのですが、皆、ノリノリで標語を考えていましたよ。


へぇ、例えばどんな?


私も夢に出るくらい一生懸命考えたのですが、イマイチでして。候補の中で、私が一番面白かったのは、「USB(ユーエスビー) うかつに刺したら You See Blood!(血を見るぜ) マッドな面倒 バッドなエンド」ですかね。


アッハッハ! ラップみたいだね。何もしかめっ面してやる必要はないわけだし、遊び心があってもいいよね。


はい「セキュリティ対策=面倒くさいもの」というのを少しでも変えられたらと。


なるほど、寄り添うのが得意な青井さんらしい取り組みだね。で、相談したいことは何? 今聞いた限りだと、うまくいってそうに聞こえるけど。


課題に対する個別対策のアイデアは出てくるのですが、網羅性というか、結局どこまでセキュリティ対策をやったらよいのか、その対策が妥当であることをどう説明したらよいかが分からないです。


黒川社長 大黒さんことABC化学薬品の黒川社長

 今回、検討している対策は、リスク低減効果、実施の優先度、費用の妥当性などを経営層(特に大黒さん)に説明する必要がある。セキュリティの問い合わせみたいに来たボールを打ち返す作業とは違うんだよなぁ。ここしばらくは、大好きなラノベを読む気も起らないほど悩んでいる。

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