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» 2021年10月26日 09時00分 公開

“クラウドネイティブ”なERPは製造業に何をもたらすのか製造業DXが生む3つの価値(3)(1/2 ページ)

製造業でも多くの関心が寄せられている「DX」。本連載では、DX基盤を構築したその先で、具体的に「何が実現できるのか」を紹介する。今回のテーマは「クラウドERP」だ。定義や海外ベンダーらの市況を紹介する。

[栗田巧/Rootstock Japan,MONOist]

 今回は2つ目のテーマとなる「ビジネス可視化」の重要ポイントについてお話しします。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)基盤上で構築した基幹システムの利点は、生産活動に関するさまざまなデータを一元的に管理できることにあります。従来の仕組みでは個々に存在し、データ統合に向けた取り組みが課題とされていた顧客情報、商談情報、受注情報、購買情報、製造情報、出荷情報、原価情報、財務会計情報などを、DX基盤上でリアルタイムに一元管理する。これによって、さまざまな角度からのデータ解析が可能となり、ビジネス可視化に大きく寄与します。

 この際に重要な役割を担うのが「クラウドERP」です。以下では、クラウドERPの定義を紹介していきましょう。

オンプレミス型ERPの終わりが近づく?

 インターネット検索エンジンで「Cloud ERP」と検索すると、国内外のERP製品が数多くヒットします。しかし国内製品の大半は、もともとあったオンプレミス製品をデータセンターでホスティングして月額料金を請求する、という形式のSaaS(Software as a Service)型ERP製品が大半を占めます。

クラウドネイティブなERP製品に注目

 これは、筆者が本稿で言及したいクラウドERPとは少し異なります。筆者が注目しているのは、設計段階からクラウド環境での運用を前提に開発された、いわゆるクラウドネイティブと呼ばれる製品です。既に幾つかの製造業向けクラウドERP製品は日本国内の企業でも導入可能な状況になっていますが、それらは全て海外ベンダーが提供するものです。

 今後、クラウドERPへの全面移行を宣言しているERP大手2社であるSAPとオラクルが主力製品を対象にクラウドネイティブなERP製品を投入する日も遠くないはずです。現実化すれば世界のERP市場はクラウドERP製品が主流になるでしょう。それは、オンプレミス型ERP製品の終焉(しゅうえん)を意味します。

 ご参考までに、直近の四半期でクラウド関連売り上げの大きいIT企業Best10をご紹介します。クラウドERPそのものの売り上げ規模を示すものではありませんが、既にクラウド関連ビジネスによって巨大な市場が形成されていることを実感いただきたいと思います。このような巨大規模の市場は、将来的にクラウドERP製品がオンプレミス型ERPに対して優勢になることを予感させます。

第1位 マイクロソフト(直近四半期クラウド関連売上高、以下同:19.5億USドル)

第2位 Amazon.com(14.8億USドル)

第3位 Google Cloud(4.63億USドル)

第4位 セールスフォース(3.96億USドル)

第5位 SAP(2.69億USドル)

第6位 オラクル(推定2億USドル)

第7位 ServiceNow(同上:1.33億USドル)

第8位 Workday(同上:1.3億USドル)

第9位 IBM(同上:0.7億USドル)

第10位 Snowflake(0.2億USドル)

(出所:Cloud War Top 10

クラウドERP8つの定義

 話をクラウドERPの定義に戻しましょう。筆者は以下8項目を満たしている製品を「クラウドERP」と定義します。

1.コスト削減

 初期投資額が大きくなりがちなオンプレミス型製品と異なり、クラウドERPは必要な機能やユーザー数に基づいたサブスクリプション形式での料金体系を採用しています。

 またオンプレミス型製品ではローカルサーバ(もしくはデータセンター)費用や、サーバOS/データベースライセンスに加えて、それぞれの保守費用が別途発生しますが、クラウドERPであればそれらは生じません。オンプレミス型製品よりも低いTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)を実現できるのは、サブスクリプションモデルであるクラウドERPならではの特徴と言えます。

2.データ偏在性

 一般的なオンプレミス型製品のシステム構成では、アプリケーション間のデータインテグレーションが要求されます。一方でクラウドERP製品は、単一プラットフォーム上に全アプリケーションの管理対象データを一元保管できます。KGI(重要目標達成指標)設定〜KPI(重要業績評価指標)分析に求められるデータ抽出が容易です。

3.24時間7日間の運用が可能

 クラウドERPは24時間7日間の稼働時間を誇ります。システムメンテナンスなどの場合を除き、OSアップデート、トランザクションデータの定期バックアップなどでシステム運用が休止されることはありません。

4.高データセキュリティ

 データセキュリティはシステム運用における重要課題です。クラウドERPは堅牢なセキュリティと信頼性を誇るプラットフォームで運用されており、外部からの不正アクセス対策が施されています。顧客情報をはじめとする重要情報の漏えい防止に求められる膨大な労力とコストから解放されます。

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