―― クラウドファンディングで始まった商品ですけど、1年後に一般発売、さらに1年後の2021年は次のモデルが出せたということは、やはりそれなりに売り上げもあったし、改良ポイントもまたあったということなんでしょうか。
伊藤(健) おかげさまでクラウドファンディングも1週間で目標額の6600万円を達成できましたし、一般販売の際にも発売から2日で初回出荷分の1万台が売り切れました。ただやはり、クラウドファンディングで支援していただいたユーザーと一般販売時のユーザーでは、ガラッと違うところがあって、そこで課題というのもいただいたりしました。
―― REON POCKET初号機と2号機の違いですが、ボディーの外観は同じように見えます。どういったところを改良したのでしょうか。
伊藤(健) オフィスワーク以外で、ちょっとアクティブに動かれるユーザー向けに、中の部品全部に耐水のシーリング処理をしています。形を変えなかったのは、初号機用のウェアを持っていらっしゃるユーザーが、また全部買い直さなければいけなくなる状況は避けたかったからです。外形的には全く同じにしています。
―― ボディー外観は一緒でも、肌に接触する面の材質が違いますね。2号機は金属になっているようですが。
伊藤(健) 2号機はステンレスですね。初号機は中身がアルミですが、表面に薄いシリコンの膜を滑り止めとして貼っています。
―― 2号機になって、吸熱性能が従来比で最大2倍の「レベル4」が加わって冷却の段階が4つに増えましたが、やはりもうちょっと冷やしたいというニーズもあったということでしょうか。
伊藤(健) ペルチェ素子を使う場合、吸熱面が冷える代わりに、逆側の発熱面からの排熱が増えてきます。初号機の時は、冷やす対象である背中の首元に対して本体を固定するものがウェアしかなかったので、排熱のパワーを上げると熱がこもりやすいという課題がありました。その辺のバランスを実際にテストしながら、適切な冷却温度を探っていった結果、3段階だったわけです。
ただ、実際に市場に出してみると、例えばゴルフをする時に使いたいなど、われわれが想定していなかった需要が出てきて、冷感がもっと欲しいというフィードバックは非常に多かったです。
このニーズに対応するため、手としては、単純にパワーを上げていくっていうのが1つ。後は、肌に接触する面にシリコンの膜が1枚入っていると、どうしてもそこで冷感が鈍ってしまうので、そこに新開発のステンレスのプレートを採用したというわけです。
―― 逆になぜ初号機ではシリコン膜が必要だったんでしょうか。
伊藤(健) 当時は固定できるものがウェアしかなかったので、どうしても位置がずれやすかったんです。滑り止めが必要ということでシリコン膜を採用しましたが、2021年春に専用のネックバンドを新しくリリースできました。これを使うとズレがないんです。それで2号機ではステンレスに変えました。
―― 確かにこのネックバンドがあると服装が自由に選べるので、飛躍的に用途が広がると思います。逆に言うとなぜ初号機の時にこれがなかったんでしょう。
伊藤(健) それはよく言われますが、全くもって方法が思い付かなかったというのが正直なところで(苦笑)。
当時から、ストラップみたいなのがいいのでは? という話は出ていたので、何個か作ってみましたが、位置が全然安定しない。ちょっと動くとずれてしまうので、うまくいきませんでした。
―― 確かにこれぐらいの重さ(約92g)のものを、首を締めずに後ろ側に固定するって微妙に難易度高いですよね。
伊藤(健) そうなんですよ。それもあって全く解決策が思い付かなかったのですが、2020年の緊急事態宣言が明けたタイミングで家電量販店に行ったんですね。そこでソニーの商品でスポーツ向けのワイヤレスイヤフォンを見かけたんですが、首に固定するフレームが付いているんですよ。「これだっ!」とそこでひらめいて。そのイヤフォンの開発メンバーに知り合いがいたので、どんな材質使ってるの? というところからサポートしてもらって。そこからは早かったですね。結局、ソニーの中にノウハウがあった、という。
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