Siemens Digital Industries Softwareは2020年6月16日から17日(現地時間)にかけて、「Media and Analyst Conference 2020」をオンラインで開催した。本稿では同社 社長兼CEOであるトニー・ヘミルガン(Tony Hemmelgarn)氏による基調講演を抜粋してお届けする。COVID-19感染拡大の状況下でもXceleratorが有用であること、また新製品「Teamcenter Share」などをリリースすることを発表した。
Siemens Digital Industries Softwareは2020年6月16日から17日(現地時間)にかけて、年次イベントである「Media and Analyst Conference 2020」をオンラインで開催した。例年は米国現地で開催していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考慮してオンラインで実施した。本稿では当日の講演のうち、同社 社長兼CEOであるトニー・ヘミルガン(Tony Hemmelgarn)氏による基調講演を抜粋してお届けする。
講演冒頭、ヘミルガン氏はCOVID-19がもたらした社会的影響について触れて「戦争や自然災害などの新しい危機で社会に多くの困難な問題が生じることがある。だが同時に困難な問題はイノベーションのきっかけともなり得るのだ。COVID-19の場合は、人類に全面的なデジタル変革への備えを促すきっかけとなる可能性がある」と語った。
具体的にデジタル変革が必要とされる場面について、ヘミルガン氏は「例えば、自動車工場を持つある米国の企業では、既存の製造ラインを活用する形で人工呼吸器を大量生産する必要に迫られた。またヘルスケア製品企業の生産部門では、手指消毒剤や殺菌剤の生産数を急激に増加させることが求められた。また、米国のテキサス州サンアントニオ市はCOVID-19によって被害を受けた市民のための緊急住宅支援策を推進するためのアプリケーション開発に迅速に取り組まなければならなくなったのだ」と例示した。
こうした課題をまとめて解決する上でヘミルガン氏は、Siemens Digital Industries Softwareが提供するソフトウェアやアプリケーションの統合開発ポートフォリオ「Xcelerator」が役立つと強調する。
Xceleratorの基本的な製品特徴は3つある。1つは現実の機器から送信されるフィードバックを確実にデジタルモデルに反映し、かつPLM(製品ライフサイクル管理)を可能にする「デジタルツイン」を実現するということ。2つ目はアプリケーション開発のためのアプローチを自社の事業計画や組織形態、従業員に合わせて柔軟に変更できるという「カスタム化されたアプローチ」が可能であること。そして3つ目は、同社パートナーなどから構成される「オープンなエコシステム」が用意されているという点だ。
特にヘミルガン氏はデジタルツイン構築の有用性を強調する。「デジタルツインを利用すれば、企業による安全性と生産性の最適化を促すと同時に、工場のレイアウト変更などの物理的変更を実施する前に、オペレーション全体の再設計を検証可能にする。製品の生産構成を突然変更しなければならない事態に陥った際にも、柔軟な対応が実現できるのだ」(ヘミルガン氏)。
また、COVID-19対策としては生産ラインに並ぶ作業員同士の物理的な距離を確保して安全な職場環境を確保することも重要だが、この問題もXceleratorで工場のデジタルツインを制作することで解決可能だという。「継続的に作業員の間隔を測定して、対人距離が6フィート(約1.8m)以下となれば、彼らが着用しているバッジがアラートを出して警告を行う。経時的に収集されたデータを分析することで、作業員同士の接近というリスクシナリオが頻繁に起きる『ホットスポット』も特定できる」(ヘミルガン氏)。
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