そんなわけで、Wind Riverは1987年に最初のVxWorksを、VRTXベースで発表する。1987年といえば、Intelの「80386」、Motorolaの「MC68030」、MIPSの「R2000」、Zilogの「Z80000」などが出荷されていた時期であり、本格的な(=OSサポート機能の付いた)32ビットCPUが利用できる時代だった。もちろんそれ以前の、Intelなら「80286」や「80186」、Motorolaの「MC68000/68010/68020」、Zilogの「Z8000」などは組み込み分野で広範に使われており、特にMC68000系列は組み込みにおけるシェアが圧倒的に高かった。
こうした比較的ハイエンドのプロセッサをターゲットとしてVxWorksは順調にシェアを伸ばしてゆく。また、初期のVxWorksは(VRTXがモノリシックでの構築だったので当然)モノリシックカーネルでの提供であったが、途中からモジュール構造に切り替わっている。もっともこれ、VRTX側の対応なのか、Mentorで書き直したバージョンなのかはもう判断がつかなかった。
というのは、VRTXの方も、まずVME(Versa Module Eurocard)バックプレーンベースのマルチプロセッサシステムに対応したMPUやMCU向けに、フットプリントを最小にした「VRTX-mc」、パーソナルユース向けの「VRTX-oc」、Machカーネルを取り入れてスケーラビリティを取り入れた「VRTX-sa」などが後追いの形で投入されているからだが、調べた限りではこうした後追いのバージョンではなく当初のVRTX32をベースにVxWorksが構築されており、その後はフォグリン氏が書き直したカーネルを利用しているようなので、モジュラ構造も恐らくは独自のものと思われる。
ちなみに先ほどのウォールズ氏による追悼記事の中にあった、BSDのTCP/IPスタックうんぬんは、時間的にはもう少し後、1990年に入ってからだったと思われる。他にもマルチプロセッサ対応やメモリ保護/仮想メモリ対応などの機能を、バージョンを上げながらどんどん取り込むことになる。
どのバージョンで対応したのかという話はちょっと置いておいて、VxWorksを機能的に見れば以下のような特徴を列挙できる。
これらを全て搭載すると、LinuxやWindows並みに重くなる(フットプリントがかなりの量になる)のは間違いないが、逆に最小構成のカーネルだけだと20KB台と非常にコンパクトで、当然ながら必要なモジュールやコンポーネントを選択して構築できるため、組み込み向けの厳しいリソースでも問題なく動作させることができる。
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