AIとIoTで制御技術を進化、現場に寄り添う自動化の先にオムロンが目指すものスマートファクトリー

インダストリー4.0など世界的にIoTやAIを活用したモノづくり革新の動きが広がる中、スマートファクトリー実現に向けて存在感を高めているのがオムロンである。なぜオムロンがこれだけ支持を広げているのか。見えてきたのは「現場視点」と「人に寄り添う」という2つのポイントだった。

» 2017年11月07日 10時00分 公開
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 ドイツのインダストリー4.0や、日本のConnected Industriesなど、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ロボティクスを活用した産業革新の動きが広がりを見せている。特にスマートファクトリーを中心に製造業の動きが活発化しているが、その中で存在感を高めているのがオムロンである。

オムロン独自のモノづくり革新コンセプト「i-Automation」

 オムロンは「オートメーションを通じた社会的課題の解決」を掲げ、さまざまな「自動化」機器を世に送り出してきたメーカーである。例えば、無人駅システム(自動改札機)やオンライン現金自動支払機(ATM)など数々の世界初の自動化機器を生み出してきた。そのオムロンで現在最も大きな事業規模となっているのが、工場などのオートメーション化で活躍する制御機器事業だ。

 製造業においてモノづくりを取り巻く環境は現在、大きな変化の中にある。製品面では高密度化が進む中で多品種少量生産への対応や垂直立ち上げへの要求など、製造についての品質や基準は高まる一方である。その中で生産する場所としても地産地消化が進み世界同一品質が求められるなど、グローバルでの生産手法の確立などが急務な状況であるといえる。これらのように高度な品質や柔軟性が求められているにもかかわらず、熟練技能者の不足や新興国での人件費の高騰などが進んでおり、従来のように人の力に多くを頼った生産体制では限界が見えつつある。

 オムロンではこうした課題を解決するために新たな先進技術を以前から保有する制御技術に組み込み、新たな価値創出を実現する取り組みを行う。

 現場で何が起こっているかを把握するセンサーなどのセンシング機器と、これらをオートメーションに反映させる制御機器、そしてノウハウなどを加えて提供する。ノウハウについては、ファンクションブロック(FB)という機能を実現するソフトウェアコンポーネントを用意。これらをモジュールとして組み合わせることで簡単に高度な動きをソリューションとして提供することが可能である。オムロンはここにIoTやAI、ロボティクスといった技術革新を組み合わせて、進化させようというのだ。

 オムロンではこれらの取り組みをまとめ、モノづくり現場を革新するコンセプトとして「i-Automation!」を提唱する。「i-Automation!」の「i」は「innovation(革新)」を意味し、「integrated(制御進化)」「intelligent(知能化)」「interactive(ヒトと機械の新たな協調)」の3つの方向性で進化させていくというものである。

photo 図1 オムロンが推進する「i-Automation!」(クリックで拡大)出典:オムロン

 「integrated(制御進化)」は、制御技術を進化させて機械制御の高速化、高精度化を追求し生産性を飛躍的に向上させようという取り組みだ。従来の制御機器の高度化を更に進めていくという。「intelligent(知能化)」はデータを収集して統合し、解析を行うことで学習・進化するモノづくりを実現しようという取組みだ。IT(情報技術)を活用し、予兆保全やこれまで人の感性に頼っていた官能検査などを機械で実現する。「interactive(ヒトと機械の新たな協調)」については、機械が同じ生産ラインにおいて人の能力を支援し拡張したり、需要変動などに柔軟な生産ラインを実現したりする取り組みである。

土台となる“標高10m”以下の20万種の制御機器

 これらの3つの革新を実現する土台となるオムロンの強みが制御領域でのカバー範囲の広さである。オムロンは制御機器の主要機能である「Input(入力)」「Logic(制御)」「Output(出力)」「Safety(安全)」のほぼ全てをカバーする20万種の製品群を展開してきた。

 さらに、不足している領域については、ここ3年間でM&A(買収・合併)を進めてきた。2015年にモーション制御機器を展開するデルタ タウ データ システムズ(Delta Tau Data Systems)と、ロボットを展開するアデプト テクノロジー(Adept Technology)を買収した他、2017年には産業用カメラを展開するセンテックとコードリーダーメーカーのマイクロスキャンシステムズ(Microscan Systems)を買収。製品ポートフォリオの拡充を図ってきた。

photo 図2 オムロンが推進する「ILOR+S」(クリックで拡大)出典:オムロン

 さらに特筆すべきはこれらの製品群の大半を製造現場の領域で展開している点だ。同社では、製造業で扱われる情報の階層を高度で表現しているが、商品やソリューションの提供を「高度10m以下」の領域に特化しているという点が強みだ。

 具体的には、ERP(Enterprise Resources Planning)システムなどで管理する企業レベルの経営情報などを高度1000mと位置付け、工場レベルのMES(Manufacturing Execution System)などを高度100m、PLCや産業用PCレベルを高度10m、そして製造現場のセンサーやI/Oなどの高度1mだとしている。オムロンは産業用PCおよびPLC以下の領域に特化している。

 製造現場の制御機器だけでこれだけのカバー範囲を持つ企業は世界でもそれほど例がない。これらをすり合わせて製造現場のさまざまなソリューションを実現できるというのがオムロンの独自の強みとなっているのだ。

photo 図3 高度1〜10mのモノづくり革新(クリックで拡大)出典:オムロン

「integrated(制御進化)」のカギを握る制御アプリケーション

 豊富な制御機器群を抱える強みをそのまま生かして進めるのが「integrated(制御進化)」である。オムロンは世界各地に「オートメーションセンター(ATC)」を設置している。ATCは制御機器によるアプリケーション別のソリューションを実証実験したり、ファンクションブロックと呼ばれるソフトウェア資産化する開発を行ったりする場である。

 汎用性の高い動作について、関連ノウハウなどをアルゴリズム開発し、機器と合わせてソフトウェア(ファンクションブロック)として提供することで、製造現場での高度なライン構築を簡単に実現する役割を担う。従来は全世界に2カ所だったが、ここ数年で大きく拠点を拡大し、2017年10月にも新たにシンガポールに新施設をオープン。現在は世界9カ所で顧客ごとの制御ニーズに応えるソフトウェア資産の開発に取り組んでいる。

 ATCで開発したソフトウェア資産についてもここ数年間で大きく拡大。制振制御やわらか制御、高速同期制御や包装機制御、巻き線制御、サーボプレス制御、ロボット連携制御など。現在は132種類(枝番を含め200種以上)の制御アプリケーションを展開できているという。

photo 図4 拡大する制御ソリューション(クリックで拡大)出典:オムロン

ITと制御を組み合わせた「intelligent(知能化)」

 さらに「制御進化」で取り組む「ノウハウやソリューションの提供」をICTの活用で高度化する取り組みが「intelligent(知能化)」である。「知能化」に対しては、オムロンは自社工場でさまざまな実証を行っている。取り組みの1つが草津工場での基板実装ラインのモニタリングである。表面実装ラインで各装置間のプリント基板の入る時間と出る時間をモニタリングし、その情報をPLCからサーバに吸い上げて可視化ツールで時間軸に沿って「見える化」した。これにより。ラインバランスなど、作業の停滞を示すことができたという。

photo 図5 オムロン草津工場の基板実装ライン(クリックで拡大)出典:オムロン
photo 図6 基板実装ラインで実施しているビジュアルライン(クリックで拡大)出典:オムロン

 生産性は30%改善し同じラインで1.3倍の生産を可能とした。また改善すべき点の抽出時間についても6分の1に低減することに成功したという。

photo 図7 草津工場での取り組みに対する成果(クリックで拡大)出典:オムロン

 自動化や見える化などが難しいとされてきた人手によるセルラインについても、同様の「ビジュアルライン」による見える化に取り組んだ。人手によるセルラインは、センシングが難しく、作業の見える化を負荷なく行うのが難しかったが、上海工場では、各工程の開始と終了を把握するセンサーを活用し、基板実装ラインと同様の見える化を実現することに成功した。これにより定量的なデータをベースに組み立て作業の現場作業教育を行うことができ品質改善と生産性の約30%の改善に成功したという。

 こうした動きをさらに発展させるために取り組んでいるのがAIの活用である。同社ではAI機能を搭載したPLC「AI搭載マシンオートメーションコントローラー」を開発している。機械学習技術を実装して、機械の「いつもと違う」という挙動をPLCで見つけ出すというものである。これにより包装機のかみこみ防止に活用するケースなども実現。異常が発生する前にアラートを出したり、補正をかけることで品質不良を未然防止する仕組みを作っている。

 オムロンでは、こうしたITやIoTを活用した知能化の動きをサービスとして提供するために新たにIoTサービス基盤「i-BELT」を2017年10月から開始した。これはAI搭載マシンオートメーションコントローラーを軸に、オムロンが保有する幅広い制御機器などからのデータを製造現場レベルで簡単に収集・分析し活用するためのものだ。

photo 図8 オムロンが立ち上げたIoTサービス基盤「i-BELT」(クリックで拡大)出典:オムロン

 「i-BELT」は「制御機器やセンサーなどの入力機器からのデータをAIコントローラーを経由して蓄積」「蓄積したデータの見える化や分析を支援」「蓄積したデータ分析から得られた知見を制御アルゴリズムとしてAIコントローラーにフィードバック」するという順番で活用を行う。例えば飲料業界などでの充填ノズルの個別制御や自動車業界などのプリント基板のはんだ不良の予兆検知などで活用が進んでいるという。

人と機械の関係性の変化を支える「interactive(人と機械の協調)」

 これらの新たな技術を活用していくと、人と機械の関係性が変化していくというのがオムロンの考えである。従来は、安全性などの問題から人と機械は同じスペースに共存できなかった。しかし、技術進化を背景とする規制緩和などで人と機械が協調して働くことができるようになりつつある。この変化を更に推し進めていくのが「interactive」だ。1つの例としてオムロンが描くのが、工程そのものが自由に動いて製造作業を行う、コンベヤーレスのフレキシブル生産ラインである。同ラインは将来的な話だとみられるが、既に欧州などでは実証が進められているという。

photo 図9 オムロンが実現するフレキシブル生産ライン(クリックで拡大)出典:オムロン

 オムロンには「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という創業者の立石一真氏の企業哲学がある。合わせて、社会の変化を予測し経営に生かすための未来予測理論「SINIC(Seed-Innovation to Need-Impetus Cycle Evolution)理論」を1970年に公表。以来、経営の羅針盤としてきた。この理論からすると現在は「情報化社会」を終え、2025年頃までにさまざまな社会的課題が解決され最適化していく移行期「最適化社会」にあるとされている。まさに、人と社会が協調するという新たな世界を描いているというわけである。

photo 図10 オムロンが考える工業社会の変化「SINIC理論」(クリックで拡大)出典:オムロン

 2017年3月に発表された日本版第4次産業革命のコンセプト「Connected Industries」では、日本の産業の特徴として「人間中心」と「現場(エッジ)重視」を掲げている。まさにオムロンの目指す人間の強みを生かした、機械が人の能力を高める現場の姿こそが、日本の製造業の理想の姿として描かれているのだ。

 オムロンはまさに、「Connected Industries」が描き、創業者の哲学が現実のものとなった未来のモノづくり現場の実現に向け、新たなオートメーションの進化に挑戦を続けている。

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提供:オムロン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年12月6日