ソフトウェアそのものは無償で提供するという、サブスクリプション型ビジネスモデルで導入数を伸ばしている米国のPLMベンダーAras。同社では2016年より、パートナー企業での成功事例をベースに開発した一種の“テンプレート”を製品の機能として順次提供していく方針だ。
米国のPLMベンダーArasが好調だ。2000年創業の同社はPLMシステムそのものは無償で提供し、サポートやメンテナンス費用をサブスクリプション(定期契約)で提供する「エンタープライズ・オープンアーキテクチャ・ビジネスモデル」というビジネスモデルを展開している。2015年度の売上高は前年度比約70%の成長で、2016年度も同等の成長率を見込んでいるという。
同社の日本法人であるアラスジャパンは2012年に設立。日本でも順調にユーザー数を伸ばしており、現在約100社の日本企業がArasのPLM「Aras Innovator」を採用しているという。そしてArasは2016年から、複雑化が進むモノづくりを支援する新しいアプリケーション・モジュールを展開していく計画だ。その概要と戦略について、アラスジャパンの代表取締役 社長を務める久次昌彦氏に聞いた。
久次氏は一般的な製造業のPLMの活用について、「従来のPLMというのは“3次元設計を効率化する”という点のみに焦点が置かれていた。結果的にPDM(Product Data Management)として、エレ/メカ設計者がそれぞれの設計データを保存するだけの利用にとどまってしまっている場合が多い。つまり、導入してもビジネスプロセスの効率化につながっていないことが多かった」と指摘する。
そこでArasが以前から提唱しているのが「ビジネス・オブ・エンジニアリング」だ。これは製品の開発、設計、製造まで、モノづくりの全てのプロセスにおいて、CADデータ、製品仕様などのさまざまな必要情報をシームレスに活用できる環境を構築し、モノづくりというビジネス全体を効率化していくという考えだ。
久次氏は「こうしたArasのコンセプトに賛同してもらえていることが、導入数の増加につながっていると感じている。2016年度もこのビジネス・オブ・エンジニアリングを推進するという基本方針は変わらない。また、製品に組み込まれるソフトウェアの重要性が高まり、製品情報などと連携した効率的な管理も求められている。さらにIoTの流れもあり、このようにモノづくりが複雑化していく動きは、今後もさらに進んでいくと見ている。2016年度はこうした際に生まれる課題を、より具体的にサポートするさまざまなアプリケーションを投入していく」と述べる。
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