連載
» 2009年10月06日 00時00分 公開

経済不況の影響知らずの電脳加工屋メカ設計製品/サービスレポート(3)(2/3 ページ)

[小林由美,@IT MONOist]

営業が押しかけてこない

 普通の見積もり・加工依頼であれば、図面を見ながら対面で打ち合わせする。電話だけでは伝わらないので、実際に会って話をするのも常だ。いまでも、たいていの加工業者ではそれがセオリーであり、打ち合わせにたくさんの時間をかけている。また依頼する際には図面を郵送したり、ファックスをしたり、あるいはPDF化してデータ添付した電子メールを送ったりする。

 また矢田氏は、自身の過去を思い出しつつこんなことも述べた。「私自身もかつては設計者でした。当時、軽い気持ちで加工業者に部品の見積もり依頼をすると、営業がものすごい勢いで電話をかけてきて『いますぐ会いたい!』といってきたものです……。正直、そういうのがわずらわしく思っていたんですよ。それに、高額を吹っかけられるのではという不安も付き物でしたし」。

 同社はそういった心労から設計者を解放し、本来の設計業務に専念してもらえるようにするというミッションも掲げる。

 プロトラブズへ見積もり依頼を出した場合も担当の技術者から電話がかかってくることはあるが、それは営業活動ではなく、あくまで結果のフォローアップが目的であり、「会って話をさせてくれ!」といわれる心配はまずない。

量産に手を出さない

 同社は少量生産に特化し、量産には一切手を触れないと割り切っているという。

 「他社と比べてどれだけ短納期なのか? その質問に答えるのは非常にむずかしいことです。早いということは確かに私どものサービスの特徴ですが、試作だけやっているという業者がまずいないので、比較ができないのです。たいていの業者は量産と試作、両方に対応していますからね」(矢田氏)。

 例えば、ある顧客から射成型の試作を100個とオーダーを受けたとする。一般的な業者でも同じぐらいの納期で作ってしまえないことはない。もしくは、時間と人員が何とか確保できれば、徹夜して無理すればこなせてしまうかもしれない。

 通常の加工業者は、そのときどきで仕事の混み具合が異なる。例えば、量産立ち上げを請け負っていて立て込んでいる場合は、新たな仕事の依頼を断らざるを得なくなる。当然、量産の仕事もなく暇なときであれば、その対応ができる。同社が彼らと違う点は、いつでも同一の納期で、無理することなく対応できるという点だ。

 「量産というのは、1サイクルでいかに早く部品をたくさん作るかが勝負で、1時間で1000個作れるところを1500個まで増やそう、早くショットを打とうと奮闘しますが、試作の場合では、1〜数個を早く作ることにとにかく専念すればいいわけです」(矢田氏)

 何十万何百万ショットというおびただしい数の部品を打ち出す量産用の金型は、一般的には、耐久性を考慮して鉄鋼(特殊鋼)が多く使われる。耐久性が高いということは、つまり切削性が劣るということになり、つまり型を素早く加工することが難しくなる。同社で採用しているアルミ製の金型は数千〜1万ショット程度でへたってしまう。しかし少数生産に特化している同社なら、それでも十分な数だ。

 また量産における射出成型は、熟練の職人がこつこつと数カ月、半月とかけて調整していかなければならない。同社は、あえてその世界には手を出さない選択をした。量産をやらないと割り切ってしまえば、射出成型の装置も試作に割り切った仕様にできるという利点もある。その仕様というのは、冷却工程に鍵があるが、企業秘密とのことだ。

一見、ごく普通の工場 まだ建屋が新しいこともあるが、整理整頓され清潔

値段をふっかけない

 「見積もりは参考価格ではなく、本気の価格を出しています。受注をいただくと、その値段で作ります。でも、アイミツでも当て馬でも、勉強のためでも……当社としてはそれでも構わないんです」(矢田氏)。

 値段を交渉されることはあるが、その場合は話し合いをするしかないとのことだ。中には厳しい値引き交渉もあるという。ただ、そのように交渉をしようと同社にコンタクトをしてくれればいいが、見限られてしまう場合だって大いにあり得る。自動見積もりは、その点が怖い部分といえる。「対面すれば、お客さんお顔色を見ての提案ができます。だけど、私どもはそれができません……。ですから、常に自信のある値段を出さなければなりません」(矢田氏)。

 部品加工の価格設定の世界はグレーだといわれる。業者が忙しければ高くなり、1日で試作する場合は特急料金などを設定するがそれも常に一定していないこともある。例えば50万円で作れるといわれても、それがいったい高いのか安いのかの判断ができない。部品加工の世界では、吹っかけられてしまう恐れとの戦いは日常だ。しかし当社の場合は、自動解析しているゆえ、価格が常に一定しているので、作り側が計画性をもって依頼ができる。またサンプル部品の価格がWebで明確に示されている。

地域と企業に依存しない

 同社のターゲットは、日本の首都圏の顧客だけではない。日本全国はもちろん、海外も含まれる。離島や未開の地などをのぞいて、インターネットがつながり、宅配可能な範囲ならば受注可能だ。

ここが、Protolabsの正体

 「経済が沈滞化しても、経済活動の一切が止まることはない、すなわち、新製品の開発の一切が止まることはありません。新製品の開発が激減するだけの話です。たいていの中小企業は、大手企業に依存しています。つまり総売り上げのうち、大手企業の売上げが半分以上を占めているような状態です。大手企業が新製品の開発を大幅に減らせば、そのような企業の売上げは激減します。いま多くの企業がそういった状況に陥っているのではないかと思います」(矢田氏)。

 営業が地域に縛られないということは、つまり大きな利益を生み出している大手企業が日本のどこにいようが関係がない。同社では営業マンが自らの手足を使い営業をする必要は基本的になく、Webを通して不特定多数のユーザーにプロモーションができる。

 「企業規模も業種を問わない不特定多数がターゲットですから、大手企業に強く依存しません。米国本社も、大手企業1社分の売上げは、総売り上げのうちのほんの2%程度です。と取引のある業種も多岐ですから、強いていえば一番シェアが大きい医療業界でも、総売り上げの15%程度です」(矢田氏)。

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