スズキが2030年度までの新中計を発表、インドに設備投資1兆2000億円:電動化(3/3 ページ)
スズキは2030年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。現在は2025年度を最終年度とする中計が進行中だが、売上高や営業利益率などの目標値を2023年度に前倒しで達成したことから、新たな中計を策定した。
インド
四輪事業の台数拡大はインドがけん引する。最大セグメントであるSUVと、今後の成長を見込むMPVで商品力を強化する。中間層が初めて購入するクルマをターゲットとしたエントリーモデルを早急に開発し、市場に投入する。
インドではシェア50%を目標とする。また、インド国内でのEVの生産/販売/輸出でトップを目指す。マルチ・スズキの商品企画や開発の機能を強化し、インドのユーザーの嗜好に合った商品をタイムリーに提供する体制にしていく。
インドの生産拠点は、国内需要の伸びに対応するとともに、グローバルな輸出拠点として活用するため、サプライチェーンや生産能力を拡充する。市場の状況を見て適切なタイミングで年産400万台体制を構築していく。
最重要市場のインドでは、世帯収入ごとの顧客層に合わせて、パワートレインや商品のラインアップをそろえる。モビリティの購入が難しい低所得者層へのアプローチにも取り組む。インドは生活の足を中心に二輪車の販売台数増加もけん引する。
欧州などその他地域
欧州は、要求性能が極めて高く、環境や安全で先進的な規制が導入されることを踏まえて技術や商品を磨く場と位置付ける。そのため一定の事業規模を維持していく。インド生産モデルも活用しながら商品ラインアップをそろえ、販売網やサービス網を維持する。
中東やアフリカは、インドに距離が近く、ニーズも共通することからインド生産モデルを活用して販売や利益を増やす。若年人口の増加や女性の社会進出で小型車の需要が増えている。サウジアラビアや南アフリカで成功した取り組みを中東やアフリカの他の地域にも横展開する。
ASEAN市場は、インドネシアを中心に販売台数を伸ばす。インドネシアの生産量とラインアップを増やし、ASEAN各国に競争力の高い商品を供給する。
パキスタンは、すでに高いシェアを生かして事業規模を拡大していく。近年は部品の輸入制限で生産や販売に影響を受けていたが、状況が改善しつつあり、市場も回復しているという。日本の軽自動車が受け入れられていることを踏まえて、軽自動車のグローバル化によって商品ラインアップを充実させていく。
今後の成長が見込まれる中南米では、小型SUVを拡販する。インド生産モデルを拡充しながら競争力を高めていく。大洋州は市場規模が横ばいで推移するが、燃費規制を踏まえた燃費のよい小型車を展開する。
インドの人材育成強化
経営基盤の強化に向けて、AI(人工知能)の業務活用も推進する。規格、設計、調達、生産、品質、販売やサービスまで、バリューチェーン上の全てのプロセスでAIを積極的に活用し、業務効率を高める。
インドでの人材育成にも力を入れる。現地R&Dセンターのサテライトオフィスでのエンジニアの採用拡大や業務領域の拡大、インド工科大学やインド経営大学院からの直接採用拡大に取り組む。日本人幹部をインドに出向させるだけでなく、インド人幹部を日本のスズキ本社に出向するなど、人材の相互交流も拡大する。日本でインドなどの人材が安心して働ける生活環境の整備や支援も積極的に行う。
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