中期目標未達でパナソニックHDが組織再編へ、テレビや産業デバイスから撤退も視野:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
パナソニック ホールディングスは、2024年度第3四半期の連結業績を発表するとともに、グループ経営改革に乗り出す方針について示した。テレビ事業や産業デバイス事業など4つの事業を課題事業と位置付け、撤退や売却も視野に構造改革を進める。
重点領域としてのソリューション事業
これらの再編を進める一方で成長の軸として「ソリューション領域」を位置付ける。製品やサービスを組み合わせて新たな価値を創出するソリューション領域は、データセンター向け電源や創畜省エネ関連製品、SCMソフトウェア、コールドチェーン、アビオニクス、現場/工場向けソリューション、電設資材や照明などの事業を位置付けており、現在は約3.5兆円の売り上げ規模だとしている。「ソリューションといってもソフトウェアだけではなく、グローバルで戦える強い製品とソフトウェア、顧客の要望などを組み合わせることで勝負していく」(楠見氏)。
パナソニックグループの目指す姿として、車載用電池や電子デバイスを中心としたデバイス領域と、家電を中心としたスマートライフ領域を収益基盤とし、ソリューション領域で成長する姿を描く。「ここで示した『領域』は組織のくくりを示すものではないが、収益基盤となるデバイス領域では調整後営業利益15%以上、スマートライフ領域では同10%以上を目指す」と楠見氏は基準を示す。
構造改革の時間軸としては、2025年度を改革の1年とするが、一部課題事業の整理は2026年度までを見据えて進めるという。具体的にはグループ各社の人員最適化や、製造/物流/販売拠点の統廃合などを進める。さらに、課題事業として位置付けた4事業についても方向付けは2025年度中に行う。これらの構造改革の効果として、2026年度には1500億円以上、2028年度には3000億円以上の収益改善効果を目指す。これらにより2028年度にはROE(自己資本利益率)10%以上、調整後営業利益率10%以上を達成する計画だ。
楠見氏は「本来はこうした経営方針については2024年度の決算が出た後に行ってきたが、より早く手を打つ必要性があると考えたため、このタイミングで発表した。就任当初にも話したが30年間成長できていない現状に強い危機感を持っている。こうした状況に手を打てないと辞めるに辞められない。自分の世代でこうした体質を変え切りたい」と強い決意を示していた。
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