検索
ニュース

パナソニックHDは過去最高益更新も、車載電池など重点領域苦戦で中期目標未達に製造マネジメントニュース

パナソニック ホールディングスは、2023年度の連結業績を発表。米国IRA法による好影響やパナソニック液晶ディスプレイ解散に伴う一時益などもあり、純利益は過去最高を更新した。ただ、重点成長領域などで苦戦が目立ち、中期経営目標は未達が濃厚となった。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 パナソニック ホールディングスは2024年5月9日、2023年度(2024年3月期)の連結業績を発表。米国IRA(Inflation Reduction Act)法による好影響やパナソニック液晶ディスプレイ解散に伴う一時益などもあり、純利益は過去最高を更新した。ただ、重点成長領域と位置付けている車載電池、サプライチェーンマネジメントソフトウェア、空質空調領域などで苦戦も目立ち、2025年3月期(2024年度)までの中期経営目標(KGI)は未達となることが濃厚となった。

過去最高益も一時的要因で「冷静に見る」

photo
パナソニックHD 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

 パナソニックHDの2023年度連結業績は、売上高が前年度比1%増の8兆4964億円、調整後営業利益が同24%増の3900億円、営業利益が同25%増の2886億円、税引き前利益が同34%増の4252億円、当期純利益が同67%増の4440億円となった。2023年度の米国IRA補助金の業績影響については、調整後営業利益で868億円、当期純利益で1118億円のプラスとなっている。

 売上高は、くらし事業、インダストリー、エナジーが減収となったものの、オートモーティブ、コネクトの販売増に加え、為替の好影響により増収となった。調整後営業利益については、インダストリーが減益となったが、くらし事業、オートモーティブ、コネクトの増益に加えIRA補助金により増益となった。ただ、IRA補助金を除くベースでは減益となっている。

 パナソニックHD 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は「純利益は2018年度以来の過去最高となったが、IRA補助金やパナソニック液晶ディスプレイ解散に伴う一時的な利益があってのものなので特に高揚感はない。冷静に見ていく」と語っている。

photophoto パナソニックHDの2023年度連結業績(左)とセグメント別業績(右)[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 2024年度の連結業績見通しは、売上高は前年度比10%増の8兆6000億円、調整後営業利益は同15%増の4500億円、営業利益は同5%増の3800億円、税引き前利益は同1%増の4300億円、当期純利益は同30%減の3100億円を見込んでいる。

photophoto パナソニックHDの2024年度連結業績見込み(左)とセグメント別業績見込み(右)[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

重点成長領域は車載電池や空質空調で厳しさは続く

 ただ、重点成長領域として見込んでいる車載電池、空質空調、サプライチェーンマネジメントソフトウェアの3領域だが、サプライチェーンマネジメントソフトウェアを除く2分野は2024年度も厳しい見通しだ。

 空室空調事業については期待していた欧州A2W事業が景気動向や政策動向により低迷し、本格的な成長トレンドへの回復には数年を要する見込みだとしている。「従来の主力市場だったポーランドなどが落ちたが、現在はより大きな市場であるフランスやイタリア、ドイツへの拡販に2023年度は取り組み徐々に成果を生みつつある。また、戸建て住宅中心から商業用途で事務所や商店への展開を広げており、改善への手を打っている」と梅田氏は述べる。

photo
成長領域への取り組み[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 車載電池を含むエナジー事業については、2023年度も国内工場の減販損や過去の不具合品対応費用を計上したことから187億円の赤字となったが、2024年度も既存工場の収益改善などは進むものの、和歌山工場における新型電池4680セルラインの立ち上げと、米国カンザス州のカンザス工場の立ち上げ先行費用300億円を見込んでいることから、170億円の赤字が残る見込みだ。

 梅田氏は「4680セルは和歌山工場で量産立ち上げを2024年度上期中に行う。カンザス工場はテスラ(Tesla)と話し合って2170セルの立ち上げを進めており、2024年度末に量産を開始する。カンザス工場については、2026年度後半から2027年度くらいにフル生産となるように拡大していく」と述べている。

photo
エナジー事業の見通し[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 これらの主力事業における想定外の市場環境の悪化などが影響し、2022〜2024年度の中期経営指標(KGI)としていた「累積営業キャッシュフロー2.0兆円」「ROE(自己資本利益率)10%以上」「累積営業利益1.5兆円」の目標は、累積営業キャッシュフロー以外の項目は未達になる見込みだ。

 梅田氏は「EVやA2Wなどは事業環境の変化に翻弄されているのは確かにある。ただ、これらの領域は中長期的には確実に成長を見込んでおり、着実に手を打っていく時期だと考えている。中期経営指標についても今の見込み値をボトムとして積み上げていきたい」と語っている。

photo
中期経営指標(KGI)見通し[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

≫「製造マネジメントニュース」のバックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る