環境を切り口に“売った後に価値が上がるモノづくり”に挑戦するパナソニックHD:製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(1/5 ページ)
2022年に環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表し着実にアクションをとり続けているのがパナソニックグループだ。同社グループの環境問題についての考え方や取り組みについて、パナソニック ホールディングスのグループCTOである小川立夫氏に話を聞いた。
環境への取り組みが製造業に強く求められるようになる中、どのような優先順位で進めていくべきだろうか――。
2022年に環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表し、行動計画を示しつつ着実にアクションを続けているのがパナソニックグループだ。自社での脱炭素や資源循環についての取り組みだけでなく、「削減貢献量」の普及など「環境に良い取り組みが経済的にも評価される仕組み作り」を積極的に進めるパナソニックグループの環境問題への考え方について、パナソニック ホールディングスのグループCTOである小川立夫氏に話を聞いた。
連載「製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか」の企画趣旨
環境への取り組みは重要性を増す一方で、収益とのバランスが難しいケースも多く存在します。そこで、MONOistでは、環境特集「カーボンニュートラルへの挑戦」および「サステナブルなモノづくりの実現」の中心企画として、製造業として環境への取り組みにどのように向き合い、どのような優先順位で進めているのかを各企業のキーマンに伺う本連載を企画しました。
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環境問題は「経営の前提条件」として取り組むパナソニック
MONOist 製造業に対して環境問題に対する取り組みへの要求が世界的に強まっています。これらがビジネス面とトレードオフの関係になる場合もありますが、どのように捉えていますか。
小川氏 パナソニック ホールディングスのCEOに楠見(楠見雄規氏)が就任して以来、創業者である松下幸之助氏が掲げた「物心一如」(※)の考えのもと、「事業を継続していくためには社会を継続していくことが必要」という考えから、地球環境問題を「経営の前提条件」として捉えて取り組みを進めています。決して、経営と環境問題への取り組みが対立するものではないと捉えています。
(※)物心一如:「精神的な安定と物資の無尽蔵な供給が相まってはじめて人生の幸福が安定する」という松下幸之助氏の考え
確かに企業活動を行うとCO2は生まれます。また、製品を売ると顧客がその製品を通じて電力を消費し、CO2を排出することになります。しかし、社会全体が再生可能エネルギーの活用や脱炭素化に向かい、地球環境を持続可能なものにするには、企業活動によってこれを維持、推進していくことが必要となります。そのために製造業として何ができるかという発想で取り組むことが求められ、こうしたことを基本的な考えとしてまとめたのが、グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」です。
Panasonic GREEN IMPACTでは、CO2排出量を2050年までに3.1億トン低減する目標を掲げています。その内訳として「GHGプロトコル」のスコープ1、2、3など自社のバリューチェーンに関わる排出量を実質ゼロ化する「OWN IMPACT」で約1.1億トン、既存事業において製品などを通じて社会でのCO2排出量削減に貢献する「CONTRIBUTION IMPACT」で約1億トン、将来の新技術や新事業によってCO2排出量削減を目指す「FUTURE IMPACT」で約1億トンのCO2排出量を削減します。
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