3D CADに搭載されはじめたAI機能と自動化:テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(1)(1/2 ページ)
連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第1回のテーマは「3D CADに搭載されはじめたAI機能と自動化」です。
皆さん、こんにちは! 小原照記(おばらてるき)と申します。普段は岩手県の「いわてデジタルエンジニア育成センター」という施設で3D CADを中核とした、デジタルエンジニアの育成と“企業の困りごと”を聞いて支援する仕事をしています。当センターではいろいろな3D CADをはじめとしたデジタルモノづくりに関する設備を保有しており、学生や企業の方たち向けに講習会を開催したり、3Dプリンタでの試作や3Dスキャナーを使用しての検査/リバースエンジニアリングなどの受託を行ったりしています。また、筆者個人のSNSやブログでは「テルえもん」という名前で活動しております。
本連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基にコラム形式で、デジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。どうぞよろしくお願いします。
“CAD/CAE×AI”の波が来ています!!
MONOist−メカ設計フォーラムのトップページを見ていたら、CADニュースとして、「AI活用機能を強化した『AutoCAD 2025』『AutoCAD Plus 2025』をリリース」の記事が目にとまりました。AutoCADの最新バージョンでは、2Dや3Dの設計効率を向上する「Autodesk AI」によるデータ分析や自動化機能などが搭載されたようです。例えば、手書きやデジタルのマークアップを読み取り、製図の反復作業にかかる時間を短縮できたり、ユーザーの意図を判断して、内容に応じた次のアクションを推奨してくれたりなど、AI(人工知能)/ML(機械学習)が設計作業の効率化を実現します。派手さはあまりありませんが、設計者のかゆいところに手が届く、そんなAIの活用が進んでいるようですね。
その他にも、メカ設計フォーラムのトップページには、CAEニュースとして「AIソリューションを拡大したマルチフィジックス解析ソフトの最新版を販売」が掲載されていました。Ansysのマルチフィジックス解析ソフトウェアの最新版「Ansys 2024 R1」の話題です。最新バージョンでは、クリックするだけで実行できる「Ansys AI+」アドオンの「Ansys optiSLang AI+」「Granta MI AI+」「CFD AI+」が利用できるようです。過去のシミュレーション結果を使用して、数分以内に新しい設計の性能を正確に予測できるとのことです。一般的にCAEによる解析は時間がかかるため、数分以内で結果(予測)が出せるのは非常にありがたいですね。限られた設計開発の期間の中でも、より多くの設計バリエーションの検討ができそうです(関連記事:高度なユーザーエクスペリエンスを導入した「Ansys 2024 R1」発表)。
3D CADのAI機能と自動化の流れに注目してみた
ご覧いただいた通り、CAD/CAEの最新動向として、AI機能の搭載が各ベンダーで進んでいます。ここからは「3D CADに搭載されはじめたAI機能と自動化」をテーマに、各ベンダーやツールの動向、方向性などについてご紹介していきたいと思います。
1.オートデスク/Fusion
オートデスクでは、同社の各製品やソリューションに対してAI機能の搭載を進めており、その総称のことをAutodesk AIと呼んでいます。Autodesk AIによって、クリエイティブな探求や問題解決の機能がさらに拡張され、手間の掛かる繰り返し作業を自動化したり、プロジェクトデータを解析してさまざまな予測を行ったりすることが可能です。
MONOistのメカ設計インタビュー「オートデスクのプラットフォーム戦略とAI活用について日本のキーマンに聞いた」の記事では、オートデスクが展開を強化している「Autodesk プラットフォーム」とAutodesk AIについての詳細が書かれています。
筆者は普段、同社が提唱するインダストリークラウドの1つである「Autodesk Fusion」を使用しており、AI機能として以前から「ジェネレーティブデザイン」を活用しています。Autodesk Fusionのジェネレーティブデザインは、設計に求められる必要最低限の形状を用意し、荷重や拘束、目的、製造方法、材料などの設計仕様を入力すると、その条件を満たした多数の設計案を自動生成してくれます(関連記事:ジェネレーティブデザインで実現するサステナブル設計とその可能性)。
他にも、図面の自動化機能があります。3Dモデルから投影図が自動で作成され、寸法も自動で配置されます。付加価値を生まない単純作業に費やす時間を削減することが可能です。また、アセンブリデータにも対応しており、組立図と複数の部品図面を自動で生成してくれます。現時点では、正直言ってパーフェクトな見やすい図面が出来上がるわけではありませんが、とても便利な機能なので筆者は気に入って使っています。実際に操作している動画が筆者のYouTubeチャンネル「テルえもんCADルーム」にアップされていますので、ぜひ視聴してみてください。
もう1つ参考としてご紹介したいのが、「Project Salvador」というAutodesk Fusionのアドイン機能です。現在β版ではありますが、Autodesk Fusion上でAIを用いて画像を生成する(生成AI)機能が提供されています。生成された画像をキャンバスに追加した後、その画像からさらにデザインのインスピレーションを得たり、スケッチを自動で作成したりすることが可能です。ちなみに、“象の椅子”のイメージを得るために、「elephant chair」と入力してAIに生成してもらった画像が図1になります。
Project Salvadorの詳しい内容については、筆者のブログ「テルえもん Autodesk Fusion 勉強部屋II」の記事「Autodesk Fusionと生成AIを繋ぐアドイン『Project Salvador(プロジェクト サルバドール)ベータ版』を使ってみた!」に記載されているので、併せてご覧いただければと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.