オートデスクのプラットフォーム戦略とAI活用について日本のキーマンに聞いた:メカ設計インタビュー(1/4 ページ)
近年、オートデスクが展開を強化している「Autodesk プラットフォーム」と「Autodesk AI」の詳細について、日本のキーマンであるオートデスク 日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長の加藤久喜氏に話を聞いた。
3D CAD/PLM業界でここ数年活発化しているのがクラウドの利用を前提としたプラットフォーム戦略の推進だ。そのうちの1社であるAutodesk(オートデスク)も近年、年次ユーザーイベント「Autodesk University」の場において、プラットフォーム戦略やAIを活用した機能強化の方向性を強く打ち出している。
MONOistでも、イベントレポートとしてAutodesk Universityの基調講演の記事などを掲載しているが、そこでアナウンスされた「Autodesk Platform Services」や「Autodesk AI」、そしてオートデスクの狙いについて、あらためて、日本のキーマンであるオートデスク 日本地域営業統括 技術営業本部 業務執行役員 本部長の加藤久喜氏に話を聞いた。
オートデスクが掲げるプラットフォーム戦略とその基盤
――近年、3D CAD/PLM業界ではクラウドの利用を前提としたプラットフォーム戦略の動きが活発化しています。オートデスクではどのような取り組みを進めているのでしょうか?
加藤氏 オートデスクの「プラットフォーム」に関する取り組みは、「サステナビリティ」「デジタル化の加速」「AI(人工知能)」と並び、現在戦略的に投資を行っている注力テーマの1つに位置付けられており、われわれは“デザインと創造(Design&Make)のプラットフォームカンパニー”として歩み始めている。サステナブルなモノづくりも、デジタル化の加速も、AIの活用も、全てクラウドベースのプラットフォームの存在が不可欠だ。
具体的には、製造向け、建築/エンジニアリング/建設/運用(AECO)向け、メディア&エンターテインメント(M&E)向けの3つの“インダストリークラウド”で構成される「Autodesk プラットフォーム」の展開を進めている。
3つのインダストリークラウドとは、製造向けの「Autodesk Fusion」(以下、Fusion)、AECO向けの「Autodesk Forma」(以下、Forma)、M&E向けの「Autodesk Flow」(以下、Flow)のことであり、それぞれ業界固有のアセットやワークフローを統合的に管理できる機能を有しており、プロジェクトやチームにおけるスムーズなコミュニケーション、シームレスなコラボレーションを実現し、生産性の向上や新たな洞察の獲得、意思決定の迅速化などに寄与する。
そして、これら3つのインダストリークラウドから構成されるAutodesk プラットフォームの基盤となっているのが、Autodesk Platform Services(以下、APS)だ。APSはかつて「Autodesk Forge」と呼ばれていたもので、オートデスクの各種ソフトウェア/ソリューションのカスタマイズ、ワークフローやタスクの自動化、さまざまなツールやデータの統合などを可能にする各種API(Application Programming Interface)とサービスを提供する開発環境として活用されてきた実績がある。
「Autodesk プラットフォーム」の特長
――Autodesk プラットフォームの特長について、もう少し詳しく教えてください。
加藤氏 Autodesk プラットフォームには「ファイル」という概念がなく、ファイルの中に含まれるさまざまな情報を「粒状データ」として抽出し、データベースで管理する仕組みを採用している。粒状データは、従来ファイルという一塊でしか扱えなかったものを、価値ある/意味のある情報の単位に分解し、関連性を保持した状態で扱えるようにしたもので、本当に必要な情報にだけアクセスでき、常に最新状態を保ったまま利用することが可能だ。APSとインダストリークラウドの中間に位置付けられる「Autodesk Data Model」がデータモデルの役割を担っており、APIを介した粒状データへのアクセスを可能にしている。
従来のファイルベースの運用では、例えば「設計した製品の一部の情報だけを共有したい」といった場合であっても、該当のCADファイルを丸ごと関係者に共有する必要があった。その際、使用するソフトウェアごとに固有のファイル形式が存在するため、受け手側で同じソフトウェアを使用するか、中間ファイル形式に変換するなどの制約がある。さらに、ソフトウェアの高度化に伴いファイルに含まれる情報も増えてサイズも大きくなり、やりとりの手間も掛かる上、コピーが繰り返されてどれが最新のファイルか分からなくなるなど運用面での課題も多くある。
Autodesk プラットフォームが目指すのは、このようなソフトウェアやファイル形式の違いによる壁、それらによるデータのサイロ化をなくして、データの連続性を保ち、円滑なコミュニケーション/コラボレーションを実現することだ。
Autodesk プラットフォームの最大の特長は、オープンなエコシステムであることだ。オートデスクが提供する各種ソフトウェアやサービスだけでなく、社内システムや外部のITソリューション、サードパーティーが開発するアプリケーションなどもAPSが用意するAPIを介してAutodesk プラットフォームとつなぐことができる。さらに、APSが提供するAPIを使えば、ユーザー自身の力で、Autodesk プラットフォームと連携した独自アプリケーションを構築したり、オートデスク製品の機能を拡張/カスタマイズしたりすることも可能だ。
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