3D CADに搭載されはじめたAI機能と自動化:テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(1)(2/2 ページ)
連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第1回のテーマは「3D CADに搭載されはじめたAI機能と自動化」です。
2.ダッソー・システムズ/SOLIDWORKS
2024年2月に米国テキサス州ダラスで開催された「3DEXPERIENCE World 2024」で、ダッソー・システムズ 会長のベルナール・シャーレス氏が、3DEXPERIENCEプラットフォーム上でのAIを活用したモデリング&シミュレーション(MODSIM)体験について言及しています。この体験についてシャーレス氏は「Magic SOLIDWORKS(AIにより魔法のような体験がもたらされるSOLIDWORKS)」と表現しています。
シャーレス氏の講演では、フリーハンドのスケッチを起点に、AIと対話しながら電動自転車のハンドルバーの設計案(複数の3Dモデル)を導き出し、シミュレーションまで実行できる未来の製品設計の様子を、デモ映像を交えて紹介していました。
次世代の設計ツールに位置付けられているフルクラウドCAD環境「SOLIDWORKS Cloud」には「Design Assistant」という機能が組み込まれています。AI/MLを活用してユーザーについて学習し、ユーザーの設計作業に基づいた提案を行い、退屈で繰り返しの多い作業を自動化してくれます。
SOLIDWORKS Cloudのパラメトリック設計ツール「3D Creator」、板金設計ツール「3D SheetMetal Creator」、構造設計ツール「3D Structure Creator」などを使用するたびにAIがユーザーについて学習し、そのユーザーの設計の好みに合ったコマンド候補などを提案してくれます。ツールを使うたびに、AIはユーザーについて学習してくれるため、継続的に進化していきます。
3.シーメンスDIS/Solid Edge
Siemens Digital Industries Softwareが提供する3D CADツールの最新版「Solid Edge 2024」には、「Siemens Xcelerator」によるAI支援設計機能が提供されています。AIベースの設計支援機能により、反復/共通するタスクを自動化して設計作業を高速化してくれます。例えば、アセンブリ内の部品置き換えの際、AIアセンブリ関係認識機能が有効な選択肢を予測して提示してくれます。他にも、AI搭載のユーザーインタフェースが設計者の利用パターンを学習し、適切なコンテキストでカーソル付近に関連コマンドを表示するアシスト機能を提供します。
さらに、CAM機能である「Solid Edge CAM Pro」のAIを活用したオペレーション編集機能では、マシニングアプリケーションや学習した部品プログラミングスタイルに応じてワークフローを提案し、マシニングオペレーションの編集工程を通じてユーザーにガイドを提供してくれます(関連記事:AIによる設計支援機能で強化された3D CADソフト「Solid Edge 2024」)。
4.シーメンスDIS/NX
Solid Edgeと同じSiemens Digital Industries Softwareのハイエンド3D CAD「NX」にもAI機能が搭載されています。設計空間探索の「デザインスペースエクスプローラー」では、設計スペースの探索とジェネレーティブエンジニアリングが融合したことで、複数のオブジェクトに対して設計を自動的に最適化することが可能です。全てのパラメーター、制約、目的により、最適化の問題を適切に定義できます。また、選択予測コマンドと類似選択コマンド内で強化されたAI/MLにより、ジオメトリー的に類似するコンポーネントを短時間で識別できるとしています(関連記事:AIなどの先進技術で生産性を高めた3D CAD「NX」の最新版)。
5.PTC/Creo
PTCが提供する3D CAD「Creo」にもAIに基づくジェネレーティブデザイン機能が搭載されています。Creoのジェネレーティブデザインでは、2種類のAIを形状の最適化に使っているようです。AIを活用することで、素早く最適な形状にたどり着くことが可能だといいます(関連リンク:AIに基づくジェネレーティブデザイン|3D CAD)。
今回のまとめ
今回は、近年3D CADへの搭載が進みつつあるAI機能と各ベンダーの動向について取り上げてみました。いろいろと調べてみて、あらためて俯瞰してみると、各ベンダーで多少の違いはありますが、設計作業をアシストするものから、設計者の創造性をより高めてくれるものまで、便利なAI機能の搭載が想像以上に進んでいることがよく分かりました。
設計業務とAIの融合は、生成AIの活用も含めて、今後ますます進化、発展していくと考えられますので、引き続き注目しつつ、設計の未来を切り開く新しい可能性を探っていきたいと思います。また、3D CADだけでなく、CAEや3DプリンタなどにもAI技術が搭載されてきていますので、このあたりの動向についても今後の連載の中で取り上げていきたいですね。それではまた! (次回へ続く)
筆者プロフィール
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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