コスト半減に向けたアプローチ
機種のバリエーションの展開は、バッテリーやパワーユニット、車体のモジュール化によって実現する。これにより、さまざまな地域のニーズに対応した商品をスピーディーかつ効率的に市場投入するとともに、コスト競争力を高める。
コスト低減に向けて、プラグで充電するバッテリーの採用やバッテリーセルの最適化、モジュール化による調達や生産の効率向上、専用工場の設置などに取り組む。バッテリー交換式からプラグでの充電に変更することで部品点数が少なくなり、2割程度のコスト低減が図れると試算する。残りのコストはモジュール化による調達の効率化や生産の自動化によって削減する。
バッテリー交換式の電動二輪車は充電の待ち時間をなくしたいビジネスユースでの需要が中心で、電動車の比率としては最大でも20%と見込む。そのため、プラグで充電するモデルが今後中心になると想定している。
生産に関してはまず既存のインフラを活用するが、年間400万台の販売に向けて2027年以降をめどに電動二輪車専用の生産拠点をグローバルで順次稼働させる。モジュール化によって生産ラインを従来比で40%短縮する。電動二輪車専用の生産拠点への投資額は1カ所当たり500億円で、年間生産能力は100万台を想定している。生産拠点の立地は、消費者の多いインドやASEANとなる見通しだ。熊本工場は大型モデルの生産などマザー工場としての役割を担う。
2025年にはリン酸鉄リチウムイオン電池を駆動用バッテリーとして投入する。現在は三元系のリチウムイオン電池を使用している。それぞれが得意とする出力帯やコストが異なるため、バッテリーのバリエーションを持つことでより多くの用途に対応できるとしている。中長期的には現在開発中の全固体電池の活用も視野に入れている。
店舗に行かずに購入できるオンライン販売も予定している。また、既存の販売網によるアフターサービスの提供や、電動二輪車を体感できるエクスペリエンスセンターをインドやASEANなどの主要都市に設置するなど、オンラインとオフラインの融合によって顧客接点を強化する。プラグで充電する電動二輪車向けの充電設備は販売店に設置される予定だ。
四輪車と同じく無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)を導入しコネクティビティを活用することで、電欠の不安解消など快適性の向上や、購入後の進化につなげる。収集したデータを活用した充電ステーションの情報提供など提案型ナビゲーション機能を2024年発売のモデルに搭載する。2026年発売のモデルにはテレマティクス通信ユニット(TCU)を搭載し、サービスをさらに進化させる。将来的には、電動車とエンジン車の両方から得られるデータを活用し、車両の利用状況からニーズを分析する。
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