EVトラックのバッテリー交換は横から? 下から? 異なるアプローチ:電動化(1/2 ページ)
既に走行実証に移ったバッテリー交換式トラックではキャビンと荷室の間に駆動用バッテリーが縦に搭載されたが、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」ではこれと異なる方式がみられた。
物流のカーボンニュートラルに向けて、トラックの環境技術の開発が進められている。走行ルートや距離、積載量に応じて、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)、水素エンジン車を使い分けることになりそうだ。都市間を走行する場合や積載量の多い大型車ではFCVや水素エンジン車が、都市内を走行する用途ではEVが有力視されている。
稼働率が重視されるトラックにおいて、充電で動けない時間が発生するのはトラックユーザーである物流企業にとって懸念事項だ。そのダウンタイムを削減する方法の1つとして、走行後の駆動用バッテリーを充電済みのものと取り換える交換式バッテリーの採用が検討されている。バッテリーを複数のトラックでシェアしたり、バッテリー単独で活用したりすることで、資源の有効利用や再生可能エネルギーの導入拡大にもつなげられる。
電動バイクの交換式バッテリーであれば手で持ち運べるサイズだが、トラックに搭載する駆動用バッテリーはサイズが大きく重量もあるため、自動で作業できるバッテリー交換ステーションが不可欠だ。現時点では、交換式バッテリーを搭載する位置と、それに合わせたバッテリー交換ステーションの形は各社で異なっている。
既に走行実証に移ったバッテリー交換式トラックでは、ファミリーマートやいすゞ自動車、エッチ・ケー・エス(HKS)、伊藤忠商事、JFEエンジニアリングが手掛けた事例がある。このケースでは、キャビンと荷室の間に駆動用バッテリーが縦に搭載されたが、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」(プレスデー:10月25日〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日、東京ビッグサイト)ではこれと異なる方式がみられた。
バッテリー交換に対するそれぞれの考え方
いすゞ自動車は、ジャパンモビリティショーでバッテリー交換ステーション「EVision Cycle Concept」を世界初公開した。交換式バッテリーが取り付けられているのは、従来の燃料タンクの位置だ。左右両側にバッテリーが取り付けられており、ジャパンモビリティショーの会場では片側のバッテリーを交換するデモンストレーションを行った。実際に運用する場合は、バッテリー交換ステーションを車両を挟むよう両側に設置する必要がある。
これに対し、三菱ふそうトラック・バスが出展したバッテリー交換ステーションは、下からバッテリーを取り換える。車両の両側にバッテリー交換ステーションが必要ないすゞ自動車の方式と比べて、「設備の設置面積を縮小できるのがメリット」(三菱ふそうトラック・バスの説明員)だとしている。ただ、下からバッテリーを交換するには車両をリフトアップする必要があり、いすゞ自動車の説明員は「バッテリー交換ステーションの設備としては横から交換する方がシンプルで、交換作業にかかる時間も短い」という。
交換式バッテリーを車両の両側に装着するパッケージングは、架装の状態に影響しないのがメリットの1つだとしているが、これまで歩行者巻き込み防止バーや工具箱などを取り付けていたエリアが制約を受ける可能性がある。「バッテリーの搭載位置はさまざまな選択肢がある。EVになって部品点数は少なくなったが、レイアウトはまだ課題だ」(いすゞ自動車の説明員)。
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