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ホンダが電動スクーター「EM1 e:」発表、ビジネスバイクも一般販売電動化

ホンダは原付一種の電動バイク「EM1 e:」を発表した。2023年8月24日に全国で発売する。

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 ホンダは2023年5月19日、東京都内で会見を開き、原付一種の電動バイク「EM1 e:」を発表した。同年8月24日に全国で発売する。税込みメーカー希望小売価格は、動力源として使用する交換式バッテリー「モバイルパワーパック」1個と充電器を含めて29万9200円。日本国内では年間3000台の販売を計画している。

原付一種の電動バイク「EM1 e:」を発表した(左)。モバイルパワーパック1個が駆動用バッテリーとなる(右)[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 通勤通学などに向けた原付一種のスクーターとしては割高だが、東京モーターサイクルショーなどでのヒアリングを経て、許容範囲とされる販売価格に設定した。また、購入後4年ほどでランニングコストがガソリンエンジンの原付一種を下回る予測だ。

 EM1 e:は国内で初めて一般販売する電動バイクだ。これまでホンダの電動バイクの国内展開は配送などビジネス向けで、販売方法も法人向けのリースだったが、「BENLY e:」「GYRO e:」「GYRO CANOPY e:」も全国で一般向けに販売することを決めた。これにより、今期は電動ビジネスバイクシリーズ合計で1万1000台の販売を目指す。

モバイルパワーパックの回収受け入れが販売店の条件


ビジネス電動バイクの一般販売も開始する[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 電動バイクの一般販売開始に当たって、従来の「二輪EV取扱店」と「二輪ビジネスEV取扱店」を統合して「ホンダ二輪EV取扱店」として再スタートを切る。

 ホンダ二輪EV取扱店は現在約560店が登録している。

 登録要件としては、低圧電気取扱特別教育の修了者が1拠点1人以上在籍すること、すぐに走行できるデモカーを1台常備すること、すぐに使用できる予備のバッテリーと充電器を1基常備すること、自店で納車時の取扱説明やメンテナンスを実施できること、モバイルパワーパックの回収を受け入れられることなどがある。モバイルパワーパックのリユースやリサイクルについては検討を進めている段階だ。

インホイールモーターは小型の電動バイク向き

 EM1 e:は1回の充電で53kmを走行できる(時速30km定置走行テスト値)。モバイルパワーパックの充電はコンセントにつないだ充電器を使用し、残量ゼロから満充電まで約6時間を要する。「モバイルパワーパック1個の容量という制限に加えて、出力と走行距離はトレードオフになる。近距離移動を想定して、通勤通学の往復+アルファとして50kmとした」(ホンダ 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部 電動開発部 二輪商品開発課の後藤香織氏。EM1 e:の開発責任者)

 モバイルパワーパックはシート下に搭載する。小物を収納できるラゲッジボックスをシート下に確保した他、500mlのペットボトルを置けるフロントインナーラックや、携帯電話機を充電できるUSBソケットも備えている。

 主要部品の配置を最適化することで、シンプルでスリムな車体パッケージを実現した。排気量110ccクラスと同等のホイールベースと12インチのタイヤにより、安心感のある車体挙動を実現したとしている。また、前後330mmのフラットフロアと余裕のあるシートスペースによって居住性を高め、さまざまな体格のライダーがゆとりを感じられるライディングポジションとした。

 ブレーキは前後輪に適切な割合で制動力を配分する前後輪連動ブレーキを採用した。リアブレーキをかけると前輪にも適切な割合で自動的に制動をかけて、初心者のブレーキ操作を補助する。

 後輪に採用したインホイールモーターで駆動する。モーターの最高出力は1.7kW/540rpm、最大トルクは90Nm/25rpmとなる。インホイールモーターは後輪内側に配置したコイル側を固定し、回転するホイール側にマグネットを配置した。減速機構が不要な構造により、エネルギーロスを抑えたとしている。

 インホイールモーターは低出力な小型のバイクでメリットがある。EM1 e:の他、中国で発売した「EB(Electric Bicycle)」の3車種にも、インホイールモーターを採用している。

インホイールモーターのEM1 e:(左)。サイドホイールモーターのBENLY e:(右)[クリックで拡大]

 エンジン駆動のスクーターや車体側方にモーターを配置するサイドホイールモーターの電動スクーターと比べて、スリムなボディー幅を実現した。減速機構が不要になり、構造が簡易にできるためだ。サイドホイールモーターは片側にモーター部分が突き出すため重量バランスで不利になるが、インホイールモーターは小さい車体ほどバランスを取りやすくなり、コントロールもしやすい。

 サイドホイールモーターは変速機が付いているため高い出力を得られるのがメリットで、BENLY e:に採用されている。

中国から日本や欧州へ

 EM1 e:は中国で2021年に五羊本田摩托(広州)が発売した電動バイク「U-GO」と車体を共有しており、生産は五羊本田摩托(広州)で行う。主要コンポーネントも、中国の二輪車の研究開発拠点Honda Motorcycle R&D Chinaで開発された。ホンダの品質基準の下、グローバルでの活用を視野に主要コンポーネントを開発したという。EM1 e:は中国から欧州にも輸出予定だ。GYRO e:やGYRO CANOPY e:も中国で生産している。モバイルパワーパックはインドで生産する。

 バッテリーやパワーコントロールユニットの搭載位置はEM1 e:とU-GOで異なる。アクセルポジションセンサーはフロントカバー内に、モバイルパワーパックを起動する電力を供給する12Vのバッテリーやパワーコントロールユニットはフロア下に収めている。

EM1 e:のシステム構成(左)。2つの走行モード(右)[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 モバイルパワーパックの48Vの電力は、パワーコントロールユニットを通じて三相交流に変換されてモーターを駆動する。また、ダウンレギュレーターを通じて12Vに降圧し、駆動システム以外の電装部品にも電力を供給する。

 モーターに供給する三相交流は、2つの走行モードに合わせた異なるマップによって決定し、2つの走行特性を選択できる。原付一種クラスとして十分な動力性能を発揮できる「STDモード」から、スロットル操作に対してモーターの出力を抑える「ECONモード」にスイッチで切り替えることができる。社内検証では、ECONモードはSTDモードよりも走行距離を15%伸ばすことが可能だという。

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